アジサイが見頃を迎えた6月の井の頭公園。

新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、東京都は春から井の頭公園の施設を使用中止にしてきた。
しかし・・・

久々に池の上にスワンボートを見つけたのは、5日の朝だった。
「あれっ? ボート再開したのかな?」
気になったので、ボート乗り場まで確認に行ってみた。

すると、先月まではシャッターが閉まったままだったボート乗り場が、いつの間にかオープンしていた。

入口に貼られたお知らせを見て、6月1日からボートの営業が再開していたことを知った。

でも、営業再開があまりまだ知られていないのか、平日の金曜日には利用者はまだ少なかった。
そこで一夜明けた土曜日の朝、私もボートに乗ってみようと再びボート乗り場に行ってみた。

まず気になったのが、こちら。
値段の安い手漕ぎボートは利用中止になっていた。おそらく、2人が向き合ってボートに乗ると、距離が近く感染リスクが高いとの判断なのだろう。
選択肢は30分600円のサイクルボートか700円のスワンボートだ。

ボート乗り場に進んだ先に券売機が置かれていて、そこで希望するボートのチケットを購入する。
券売機の脇には係員が配置されていて、利用客の手を消毒し、券売機の前でも一定の間隔を取るよう促す。

チケットを購入してボート乗り場へ。
ここにも、感染防止のための注意事項が書かれていた。

遠い昔に乗ったことがあったと思うが、吉祥寺に引っ越してからは初めて井の頭ボートに乗る。
私はどうもスワンボートという乗り物が嫌いなので、あえて地味なサイクルボートを選んだ。

ボートに乗り込み、ペダルを漕ぐ。
やはり、私は手漕ぎボートがいいな・・・と思う。
あいにく空は曇っているので、水面の色も冴えない。

乗船の際に係員がチケットを洗濯バサミで止めてくれるので、そこに書かれた時間までに戻ればいい。
乗船時に言われた注意事項は、ただ一つ。
「向こうの緑色に見える水草が生えている場所には入らないでください。絡まって動けなくなるので・・・」

「そうなの? 水草の中を走りたいと思っていたのに・・・」
そうなのだ。
今、井の頭池の半分ぐらいが緑の水草に覆われている。
そのため、水面が一面緑色に染まっているのだ。

この水草の中に分入って近くから観察すること。それが私が今日ボートに乗ろうと思った動機だった。
しかし係員の一言で、私の目的はあっけなく打ち砕かれてしまったが、せっかくなので水草が生えたエリア近くまでボートを進めることにする。

近くから見ると、藻の周辺の水は驚くほど澄んでいた。
これも水草のおかげらしい。
水面から顔を出している部分には、小さな蕾のようなものがたくさんついているのがわかる。
花が咲くのだという。

この植物、名前を「ツツイトモ」という。
ボート乗り場に貼ってあったポスターによれば・・・
「糸のように細いイトモの仲間。環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に選定されており、都内ではこれほどの群生地はとても貴重です」との説明が。
これだけ池を覆っている姿を見ると、とても絶滅危惧種とは思えないが・・・。

それにしても、こんなに水草が繁茂するのはいいのだろうか?
ちょっと心配になるが、実はこれは井の頭池の水がきれいになった証なのだという。
先ほどのポスターには、こんなことも書かれていた。
「水を抜いて池底を干す「かいぼり」をしたところ、干し上げの刺激によって池底に眠っていた種子が発芽しました。泥を巻き上げて水を濁らせるコイを取りのぞいたり、池干し効果で透明度が向上して光が届くようになったことで、水草が繁茂する池になりました」

ただ、ボートに乗る人間からすると、ちょっと問題もある。
水草のおかげで池の半分が立ち入り禁止エリアになってしまい、ボートは狭い範囲をぐるぐる回るしかない。
もし思い切りボートで水面を走り回ることが目的なら、初夏から夏にかけての季節は避けたほうが良さそうだ。

ボートの営業が再開されて初めての週末ということもあって、この日は午前10時の開始時間から多くのボートが池に漕ぎ出し、まるで自動車教習所のようだった。
ちょっと漕ぐと他のボートにぶつかりそうになり、かわそうとハンドルを回すと、絡みつく水草に接近してしまう。
ゆっくりと、前進と後進を繰り返しながら、ボートの間を縫いながら漕いでいると、30分の持ち時間はあっという間に終了した。

日が照れば、一段と美しく輝く井の頭池の水草。
私が吉祥寺に引っ越した2016年ごろから、年を追って水質が改善されているように見える。

井の頭池の水質改善のために一年を通して活動してくれているのが、「かいぼり隊」と呼ばれるボランティア団体の人たちだ。
2014年に始まり、2年に一度「かいぼり」を行ってきた。

上の写真は、2018年の年始に行われた3回目の「かいぼり」の写真だ。
そういえば、今年は2020年。2年に一度なら、今年も「かいぼり」の年だったのではないかと気づいた。
でも、今年はコロナの影響であらゆるイベントが中止。その影響かどうかわからないが、井の頭池の「かいぼり」も行われなかった。

それでも「かいぼり」で水質は劇的に改善し、再生した植物は「ツツイトモ」だけではなかった。
公園内に貼られていたポスターには、たくさんの水草が紹介されていた。
現在およそ20種類の水草が井の頭公園で復活したのだという。

復活した井の頭池の「ツツイトモ」。
モネの「睡蓮」のようだと多くの人の目を楽しませる井の頭公園初夏の風物詩になりつつある。
天気のいい日に、皆様もぜひ。
ちなみに、井の頭公園では、使用中止になっていた野球場やテニスコートも今月15日から利用できるようになるそうだ。