2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
そろそろ花粉症が気になる季節なので、前回に続き、冬でも緑の葉を残す常緑針葉樹を取り上げる。
花粉症の犯人として「スギ」とともに名指しされる「ヒノキ」。
でも、「スギ」と「ヒノキ」の違いはわかっても、「ヒノキ」と「サワラ」を見分けるのは至難の技だ。
「ヒノキ(檜)」

スラっと伸びた幹、これが「ヒノキ」だ。
樹高は20〜30メートルで、高いものだと50メートルになるという。
この季節、樹皮が帯状にはがれるので私でも識別できる目印となる。

井の頭公園の「ヒノキ」はあまり目立つところに名札が見つからず、探すのに結構苦労した。
『大昔の人々がこの木をこすり合わせて火をつけたことから火の木と呼ばれます』
なるほど。

同じ常緑針葉樹の「スギ」とは違って平べったい三角形状に葉を広げる。
これで「スギ」との区別ができるようになった。
本当にど素人だ。

よく見ると、葉っぱに混じって茶色いサッカーボールのようなものがいくつもついている。
これがヒノキの雌花で、花粉を出す雄花は枝先にあった目立たないのだそうだ。

いったん見分けがつくようになると、井の頭池の東の端にも「ヒノキ」らしき樹木を見つけた。
遊歩道の脇にスラっと数本立っていた。

この樹木には「グリーンアドベンチャー」の30番が振られていたのだが、あいにく答えの部分を誰かが持ち去っていてめくっても正解がわからない。
『最も利用される有用材で、加工しやすく耐久性が強く、光沢や芳香があることから、社殿などの建築や仏像に使われるほか、樹皮は屋根に用いられ、檜皮葺とよばれる』
これは間違いない、ヒノキだ。
「檜皮葺」は「ひわだぶき」と読むそうだ。
『燃えやすく、火をつける時に使われたことから名づけられた。万葉名ひ』
この最後の「万葉名ひ」というのが気になって調べてみた。
「万葉名」というのは万葉集に登場する植物の名前らしく、ヒノキの万葉名は一文字で「ひ」というらしい。
一文字だけの植物は珍しく、私がチェックしたサイトではエノキの「え」ぐらいしかなかった。
「ひ」の木だから「ヒノキ」、「え」の木だから「エノキ」なのだろう。

ひょっとするとと思い出して確認しに行ったのは、井の頭公園と井の頭自然文化園の間を通る吉祥寺通り沿いの街路樹。
一角に立ち並んでいるのは、間違いなく「ヒノキ」だと睨んだ。

樹皮が激しく剥がれていて、以前から気になっていたからだ。
帯状にめくれた樹皮、これは間違いないだろう。

歩道橋に上がると、階段の左右にヒノキがそびえ立ち、なかなかの壮観だ。
歩道橋の上からは間近で葉を観察することができる。

これがヒノキの葉。
造形的にとても美しい。
ヒノキの葉っぱを観察するなら、歩道橋は最高のロケーションだろう。
「ヒノキ」 分類:ヒノキ科ヒノキ属 特徴:常緑針葉樹・高木 花が咲く時期:3月 実がなる時期:10〜11月
井の頭公園の「ヒノキ」はここ!

「サワラ(椹)」

「サワラ」という樹木の名前は正直知らなかった。
公園内の名札には『ヒノキに似た木ですが、葉の先はとがり、裏面の気孔線の幅が広く、果実は少し小型です』と書かれていた。

これが「サワラ」。
ヒノキに似たスラっとした樹木である。
「ヒノキ」が中国や台湾にも分布するのに対し、「サワラ」は日本の固有種だという。

葉の先が尖っていると言われても、ほとんどヒノキと区別がつかない。
多少、葉の密度がヒノキに比べて薄いような気がする。

確かに、実はヒノキに比べて小さいようだ。

樹皮も、ヒノキほど帯状のはがれが見られず、普通っぽい。
建材としてはヒノキに比べて柔らかく、劣っている。
サワラの語源も『ヒノキよりも「さわらか(軽軟)」である』(ウィキペディア)ことから来ているのだという。
何となく見分けられるようになったと思ったので、自然文化園分園のゲート前にある一本の木でテストをしてみることにした。

果たしてこの立派な樹木はヒノキかサワラか?
葉の茂り方や樹皮の感じから、私は「ヒノキ」と判定して、樹皮に貼られている番号をチェックして公園案内所のスタッフに確認することにした。
スタッフの人が調べてくれた結果は、「サワラ」。
「ヒノキとサワラって、よくわからないのよね。葉っぱの裏側を見るといいらしいけど」と慰めてくれた。

ヒノキとサワラ、やっぱりよくわからない。
「サワラ」 分類:ヒノキ科ヒノキ属 特徴:常緑針葉樹・高木 花が咲く時期:4月 実がなる時期:10月
井の頭公園の「サワラ」はここ!

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