コロナ禍のステイホーム期間に始めた「トイレの歳時記」。
我が家のトイレにかかっている歳時記カレンダーによれば、今日1月15日は七十二候の「雉始雊(ちはじめてなく)」であると書いてあった。

「雉始雊=ちはじめてなく」。
「雄のキジが、雌を求めて鳴く頃」という説明も・・・。
ネットで調べてみると、「きじはじめてなく」と普通に読む方が一般的らしい。
「キジ」という鳥は、今一つ馴染みがないが、実は日本の「国鳥」である。
北海道と対馬以外の日本列島に広く分布していたそうで、桃太郎にも登場するなど昔の日本人には馴染み深い鳥だったのかもしれない。
「そういえば、井の頭自然文化園にキジのつがいがいたはずだ」
そんなことを思い出して、この機に「キジ」という鳥をしげしげと見てみようと思った。

しかし、コロナ時代にはすべてがうまくいかないものだ。
自然文化園は閉まっていた。

年末年始クローズになっているのは知っていたが、先週末の三連休までだと思っていた。
ところが、緊急事態宣言が出されたことを受けて、来月8日まで臨時休園となったようだ。
残念だが諦めるほかない。

「確か昔、自然文化園のキジを撮影したことがあったはずだ」
と思い出して私の写真ライブラリーを探してみると、やはりあった。
去年の7月20日に撮影したものだ。
左側の派手な方がオス、そして右手の地味な方がメスである。

なぜキジを撮影したかと言えば、この羽根の美しさにちょっと感動したからだった。
首の周りの紺色、胸のあたりの緑、翼の先端のグレー、そして背中の部分は独特の文様がある。
よく見ると、実に美しい鳥だ。
和服や焼物の世界には、「雉文」という言葉もあるそうで、日本人の美意識にも大きな影響を与えたのだろう。

早春の発情期になると、オスの目の周りにある赤い部分が大きくなって、メスを求めて「ケーンケーン」と鳴くのだという。
それがまさに今頃であり、七十二候にも採用された季節の音なのだ。
後学のために一度聞いてみたかったが、今年はどうやら難しそうだ。

ちなみに、キジが鳴くと地震が来るという言い伝えがあるそうだ。
実際に、「雉 地震」で検索してみると、いくつもの体験談が出てくる。
たとえば、10年前の東日本大震災。
この時も揺れる直前、キジが鳴いたと書いている人がいる。
大地震が起きた日(2011.3.11)の午後2時半過ぎに、私は千葉県市原市の牛久の南に南北に開けた谷津にいた。地震が起こる前に谷津に出る農家の家並みを歩いていると、近くからキジの「ケーン ケーン」と鳴き声がけたたましく聞こえた。こんな所にもキジがいるのかと思いながら谷津に出た。そのときに揺れを感じた。それからは揺れが大きくなり、キジの鳴いた方向を記録として写真を撮ったが、後で見ると写真は大きくぶれていた。揺れがおさまり、谷津を歩き出し、アカガエルの卵塊が田んぼの水たまりにあるのを見つけて、写真を撮るため3m下の田んぼに降りようとしたとき、またキジが鳴いた。その後すぐに大きな揺れにおそわれた。揺れがおさまるまで動けずじっとしていた。
引用:「地震(東北関東大震災)とキジ」

しかしキジが国鳥に選ばれた理由は、もちろん地震予知ではない。
日本固有種の美しい留鳥で、民話や童謡でもなじみがあり、オスは勇敢でメスは母性愛の象徴であることなどから、1947年に日本鳥学会がキジを国鳥に選んだという。
見た目が地味なメスはとても母性愛が強いらしく、実際に森が火事になっても卵を守り抜いた母鳥の例も報告されているそうだ。
そう言えば、昔の1万円札には裏面にキジが印刷されていた。
しかし、これほど美しくて、国鳥にも選ばれているのに、どうしてキジって今一つ馴染みがないのだろう?

馴染みがないということで言えば、自然文化園前にこんなポスターが貼ってあった。
『ウィズコロナ東京かるた』
なんだ? これは?
見たことも聞いたこともない。
調べてみると、去年12月、東京都が新型コロナウイルスの感染予防策を改めて徹底するために作成したという。
当時の小池都知事は、「ステイホーム」を口にせず、こんなカルタを作っていたのだ。

たとえば、キジの「き」で言えば・・・
『気がつけば 働き方改革 できました』
う〜む、かるたという発想も微妙だが、それ以上に出来が悪い。
これでは啓蒙どころか、誰にも相手にされないだろう。
どこかの広告代理店に騙されたのかもしれないが、どうせ作るなら、なるほどと思わせる気の利いたコンテンツにして欲しいものだ。

さて、東京都の新規感染者数が先ほど発表され、今日は2001人。
検査数は1万7000というので、先週より少し減ってきた?
年始からの我慢が少し効果を発揮してきたなら嬉しいが、評価するにはいかにも微妙な数字だ。
明日の数字を注目することにしよう。
とはいえ、私は個人的に、コロナよりも首都直下地震の方を恐れている。
「雉始雊=きじはじめてなく」。
キジがメスを求めて鳴くのはいいが、地震の前触れとしてキジの「ケーンケーン」という声を聞くのだけはしばらくの間、勘弁してもらいたいものである。
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