昨日も朝からオリンピック三昧だった。
4連休が終わりテレビの視聴率が公表されたが、あの賛否両論が渦巻いた東京オリンピックの開会式の視聴率はなんと56.4%。
57年前の東京オリンピック開会式の61.2%に迫る驚異的な数字を叩き出した。
オリンピックに好意的な人はもちろん、オリンピック中止を求めていた反対派の人たちもとりあえず開会式は見てみようということだったのかもしれない。
そのほか、男子サッカーの南アフリカ戦が25.1%、メキシコ戦が18.7%、柔道は初日の土曜日が24.2%で、阿部兄妹の日曜日が21.6%、さらに女子ソフトボールのカナダ戦は昼間にもかかわらず16.5%など、テレビ離れが囁かれる昨今としては目を見張るような高視聴率をマークしている。
民放の場合、オリンピック放送枠はすべて電通の「買い切り」で視聴率が高くてもテレビ局が儲かるわけではないのだが、若い人もテレビを見る機会が増えるということは放送局にとって好ましいことなのだろう。
東京オリンピック4日目、この日も日本選手の快進撃が続いた。
最大のサプライズといえば卓球。
今大会から始まった新種目「男女混合ダブルス」で、日本の水谷隼・伊藤美誠のペアが、中国の許昕(キョキン)・劉詩雯(リュウシブン)の最強ペアに勝利し、日本卓球史上初の金メダルを獲得したのだ。
試合は、中国ペアに2ゲームを連取される苦しい立ち上がりだった。
しかし、3ゲーム目を接戦の末ものにしたことで流れが変わり、日本が逆に3ゲームを奪って逆転する。
しかし、中国の壁はそう簡単には破ることはできず、続く第6ゲームは中国が取り、試合は最終第7ゲームにもつれ込んだ。
だが、表情を見る限り、水谷と伊藤の方がリラックスしているように見えた。
そして最終ゲームは日本ペアが立て続けに得点を重ね、9−2と勝利まであと2ポイントに迫った。
9−2というのは奇遇にも、準々決勝のドイツ戦で水谷・伊藤組が絶体絶命のピンチに立たされた時の点差とまったく同じだった。
ドイツ戦でこの点差をひっくり返した日本ペアは、決勝では中国に追い上げられたが見事勝ち切った。
2人は同じ静岡県磐田市の出身。
伊藤が幼い頃、水谷の父親が開いていた卓球教室に入ったのをきっかけに卓球少女となったという年が離れた幼なじみなのだ。
お互いの性格を知り尽くし、明るく勝気な伊藤を水谷がうまく励ましながら戦うことで、悲願の打倒中国を果たし、ついに世界の頂点に立った。
卓球というスポーツは本当に見ていてハラハラする。
昨夜この試合が行われている裏では、八村塁が出場する男子バスケットボールの初戦や男子バレーボール、そして連覇がかかった体操男子団体の試合が行われていて、卓球がやばくなると思わず他のチャンネルに逃げるようにしながら、それでも日本卓球界の悲願である金メダルの瞬間はしっかりと見届けた。
ちなみに、卓球の裏で行われていた体操男子団体では、日本の連覇はならなかった。
それでも4人全員がオリンピック初出場という若き日本代表チームは、19歳のエース橋本大輝を中心にミスの少ない体操を続け、優勝したロシアオリンピック委員会に僅差の2位となり、見事に銀メダルを獲得した。
今大会の団体戦は、日本・中国・ロシアの3カ国が最後の最後まで大接戦を演じ、5種目終わって3位だった日本は、最後の鉄棒で中国を逆転、ロシアの最後の演技次第では金メダルというところまで追い上げた。
東京オリンピック直前に突如現れた新世代のエース橋本は、最後の鉄棒でも完璧な演技を見せ、内村のいない日本代表に新たな希望をもたらした。
こちらも連覇を期待された73キロ級の大野翔平選手は、怖いほどの迫力で一本勝ちを重ね、決勝では少してこずったが危なげなく金メダルを獲得した。
この男には、殺気を感じる。
もしも夜の街で目があったならば、思わず身震いして見つからないように身を隠すだろう。
本来、柔道というのは必殺の格闘技なのだということを大野の柔道は感じさせる。
一方、あまり注目されなかった女子57キロ級の芳田司選手は、準決勝でこれまで負けたことのないコソボの選手に敗れて銅メダル。
それでもここまで日本柔道は男女の全階級でメダルを獲得している。
もう一つ、地味に銅メダルを獲得したのがアーチェリーの男子団体。
たまたまチャンネルを回していたら、3位決定戦を生中継していた。
終始相手のオランダにリードを許し、なんとか追いついて最後の矢に勝敗の行方がかかった。
アーチェリーは10点満点だが、日本の最後の選手が10点を外した段階で日本の負け、メダルの夢が絶たれる。
しかも、相手はすでに10点を取っているので、同じ10点でも相手よりもさらに内側に当てなければならない。
そして、ほぼ不可能と思われた的の中心に見事に矢が刺さったのだ。
地味なアーチェリーの銅メダルにさえ、奇跡的なドラマが隠されていた。
ということで、大会4日目も日本中を感動させるドラマが目白押しだったのだが、個人的に最も熱くなったのはこの少女の金メダルだった。
スケートボード女子ストリートで優勝した西矢椛(もみじ)選手。
まだ13歳の中学生で、あの岩崎恭子さんが持つ日本人最年少金メダリストの記録を塗り替えたのだ。
13歳とはいえ、その演技は20代のお姉さんたちと比べてもまったく引けを取らない。
まだ愛らしい笑顔を見せながら大胆な技を決める姿は本当に格好良かった。
前日、男子ストリートで優勝した堀米選手同様、椛ちゃんも後半のベストトリックで高得点を連発し、一気にトップに浮上して優勝をさらった。
2位に入ったブラジルのライッサ・レアウ選手も同じ13歳。
13歳のアスリートが金メダル、銀メダルを獲得するなどオリンピック史上初めてのことだろう。
それほど、今回の東京大会から採用された新種目には今時の若者たちを惹きつける魅力があり、野球やソフトボールにとって変わり、こうしたスケートボードやeスポーツと呼ばれるゲームなどが21世紀のスポーツとなるのかもしれない。
この女子ストリートでは、16歳の高校生・中山楓奈選手も3位に入り、銅メダルを獲得した。
西矢と中山、というか、椛ちゃんと楓奈ちゃんが巻き起こした旋風は、スポーツ界の未来を大きく変えそうな予感がする。
私たちが子供の頃に見ていた「スポ根もの」とは無縁の世界、遊びと仕事の垣根すらはっきりしない世界で、新世代のトップアスリートたちは「10億円稼ぎたい」などと気楽におっしゃる。
スポーツの未来は彼らが作っていく。
それは私が生きた時代とはまったく違う価値観の世界なのだろう。
個人的にはちょっと楽しみである。
<吉祥寺残日録>【東京五輪3日目】金メダルラッシュ!競泳大橋とスケボー堀米、そして柔道の阿部兄妹も史上初の快挙 #210726
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