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<吉祥寺残日録>記念すべき100回目の「夏の甲子園」で朝鮮学校をルーツとする京都国際高校が優勝して思ったこと #240823

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私は今日、ほぼ20日ぶりに岡山から吉祥寺に戻ってきた。

ほとんど雨が降らず連日猛暑日だった岡山に比べると、都心でも洪水が発生するほどのゲリラ豪雨に見舞われていた東京は幾分涼しく感じられる。

移動の途中、私はラジオで高校野球を聴いていた。

昔に比べてテレビで高校野球中継を見ることも少なくなってしまったが、今日の決勝戦はとても気になっていた。

なぜなら100回の記念大会を迎えた夏の高校野球史上初めて、韓国語の校歌を持つ高校が決勝に進出していたからだ。

京都国際高校。

最近甲子園でもよくその名を聞く野球の強豪校ではあるが、その前身が1947年に開校した在日朝鮮人のための民族学校「京都朝鮮中学」だったことは、今大会での快進撃で初めて知った。

京都府知事の認可を得て、2004年に「一条校」、いわゆる普通の学校として「京都国際中学高等学校」を開校した。

つまり、日本人の子供たちも受け入れるようになり、朝鮮語、英語、日本語のトリリンガルを目ざす語学教育を強化して「真の国際人育成」を教育目標とする中高一貫校になったのだそうだ。

京都の朝鮮学校といえば、映画の「パッチギ!」を思い出すが、この映画のモデルとなったのは今も「京都朝鮮中高級学校」として京都市左京区にある別の学校らしい。

面白いのは、京都国際高校は韓国からも正式な学校として認可を受けているため、卒業生は日本だけでなく韓国の卒業資格も得られることだ。

だから中には韓国の大学に進学する生徒もいるという。

そんな京都国際高校の知名度が上がったのは、2021年のセンバツに初出場したのがきっかけだ。

この年の夏には甲子園でベスト4まで勝ち進み、以来春2回、夏3回とすっかり甲子園の常連校の仲間入りをした。

しかし調べてみると、全校生徒の数はわずか160人ほどだが男子生徒の大半が野球部員というかなり特殊な学校のようだ。

卒業生は5年連続でプロ野球からスカウトされていて、野球を目的に入学してくる生徒も多いのだろう。

語学と高校野球を柱に据えた学校作りの結果、今では生徒の9割が日本人になっていると聞くと、教育の現場では日韓の壁が予想以上に低くなっていることに驚く。

ただし、京都国際高校が勝つたびに甲子園に流れる校歌は今も韓国語の歌詞のまま、勝ち進むに従って韓国語の校歌が大きな話題となっていった。

その校歌がこれである。

甲子園に韓国語の校歌が流れるのも、京都国際高校が初めてだろうが、その歌詞の中に日韓で物議を呼んだ「東海」という言葉が出てくるため、さまざまな立場の人たちから注目された。

「東海」とは韓国語で日本海を意味し、日本列島と朝鮮半島に挟まれたこの海の国際的呼称をめぐって日韓政府が対立してきた経緯がある。

NHKは高校野球中継の慣例に従って、京都国際高校の校歌も字幕付きで放送したのだが、日本海を意味する「東海」をあえて一般的な「東の海」と表記し、わざわざ『日本語訳は学校から提出されたものです』とのテロップまで入れた。

つまり物議を醸す「東海」を避けて「東の海」としたのは学校側の判断だと言い訳をしたのだ。

これは明らかに日本国内の嫌韓派からの抗議、および反日的な韓国人からの抗議を意識したものだったのだろう。

実際、そうした批判や抗議はNHKにもネット上でも見られたようだ。

そして、東東京代表の関東一高との決勝戦。

両エースの投げ合いで、9回を終わって0−0、稀に見る投手戦となった。

決勝戦が延長戦に突入したのは、あの“ハンカチ王子”斎藤佑樹の早実と“マー君”田中将大の駒大苫小牧以来18年ぶり、しかも高校野球に延長タイブレークが導入されて初めての決勝である。

結果は10回表、京都国際が2点を先制したのに対し、その裏のノーアウト満塁のピンチを1点で凌ぎ、京都国際が辛くも逃げ切って試合終了。

京都に平安高校以来68年ぶりの優勝をもたらした。

高校野球の歴史に残る素晴らしい決勝戦だった。

京都国際の優勝は韓国でも速報として大々的に報道され、野球好きの尹錫悦大統領も祝福のメッセージをSNSで発信した。

「劣悪な環境でなし遂げた奇跡のような快挙は、在日同胞たちに自負心と勇気を抱かせた」

「野球を通じ韓日両国がもっと親しくなれたらと思う」

本当にその通りだと私も思う。

日本国内のネットの反応も心配したほど悪いものではなかった。

「韓国語の校歌は聞きたくない」という声もあるが、「いい試合だった」「選手たちを祝福したい」という好意的な意見が大勢を占めていたように思う。

尹錫悦大統領就任以来、日韓関係が改善に向かっていることが影響していると思われる。

決勝戦を前にして保守系の新聞「朝鮮日報」は、京都国際の活躍に絡めてこんな記事を掲載した。

見出しは『「トンヘパダ(東海)~」 夏の甲子園ベスト4進出決めた京都国際高校 NHKで韓国語の校歌が流れても日本では何の騒ぎにもならなかった』。

記事の一部を引用させてもらおう。

校歌に出てくる「東海」は韓国を基準とした東海を意味する。この海の公式の日本名は「日本海」だ。日本の公共放送が自国の領海を他国の基準に従って歌う場面を放映したというわけだ。しかし、これに対して日本社会で非難の声が巻き起こったとか、NHKに抗議が殺到したとかいう話は聞いていない。

京都国際高校の善戦をきっかけにNHKで繰り返し流れる「東海」という単語と、これに対する日本人の無関心な態度を目にしつつ、日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」(8月15日)に韓国で起こった出来事を振り返ることになった。同じく公営放送であるKBSはこの日、イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を放映して激しい抗議を受けた。オペラの第1幕に出てくる日本の伝統的な婚礼シーンに日本の国歌『君が代』が流れるという理由でだ。「光復節になぜ『君が代』を流すんだ」という視聴者からの非難が殺到すると、KBSは「制作スタッフのミス」だとして慌てて謝罪した。

ヨーロッパの巨匠の代表的オペラで『君が代』が少しだけ流れるからと言って、私たち韓国人がそこまで敏感に反応しなければならないのかは、一度考えてみるべき問題ではないかと思う。韓国の経済水準は既に日本に追いついており、何よりも文化的には日本を追い抜いたと世界で評価されているという事実を考えれば、なおさらだ。

植民地支配の「被害者」である韓国と「加害者」である日本を同列に論じるのは違うとは思うが、この「蝶々夫人」の話に限らず、光復節の日に韓国プロ野球で日本人投手を投げさせることに批判が殺到したりと、韓国では左翼陣営による反日意識はいまだに根強い。

しかし、そんな革新系を代表する「ハンギョレ新聞」も『奇跡のような優勝』と京都国際高校の快挙を速報で伝えたという。

日本人が偏狭なナショナリズムを捨てれば、韓国側も少しずつ鎧を脱いで、共に喜び合うことができるのだ。

硬い守りで初の栄冠を手にした京都国際高校の活躍が、日韓関係をさらに前進させる糸口になってくれればと、優勝決定の瞬間をラジオで聴きながら私は願った。

京都国際で学んだ生徒たちが日韓関係にどんな意見を持っているのかも興味がある。

日本の学校ももう少し多様性が認められれば、いろんな日本人が出てきて社会が面白くなるだろう。

京都国際の優勝は、高校野球の枠を超えて、いろんなことを考えさせてくれた。

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