電気自動車テスラの創業者イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」社がまた快挙を成し遂げた。
民間企業が行う初めての有人宇宙飛行に成功したのだ。
「スペースX」の新型宇宙船「クルードラゴン」は、米東部時間30日午後3時22分(日本時間31日午前4時22分)、南部フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースX社の大型ロケット「ファルコン9」で打ち上げられた。
NASAの米国人飛行士2人が搭乗し、宇宙船を予定通りの軌道に投入することに成功した。
クルードラゴンは、全長8.1メートル、直径4メートルのカプセル型で最大7人が搭乗できる。
退役したスペースシャトルやロシアのソユーズと違って、クルードラゴンには21世紀の最先端のテクノロジーが詰め込まれている。
BBCの記事には、こんな記述を見つけた。
クルードラゴンは自動的にISSまでの航路を決められる完全自動型だが、乗組員はあらゆる事態を想定し、宇宙船が手動の場合どのように動くのかを正確に把握する必要がある。
この宇宙船には操縦桿(かん)がなく、すべての操作はタッチパネルで行われる。
出典:BBC
操縦桿がないというのは、ちょっと驚きだが、完全無人でプログラム飛行するドローンを思い起こせば当たり前とも言える。
不確定要素の多い一般道路よりも宇宙空間での自動運転は、技術的にはずっと簡単なのだろう。
そして19時間の飛行の後、クルードラゴンは地上400キロを周回する国際宇宙ステーションとドッキングした。
宇宙ステーションに乗り移った2人の宇宙飛行士は、クルードラゴンはスペースシャトルに比べてずっとスムーズで揺れが少なかったと語った。
彼らの宇宙滞在期間はまだ明らかになっていないが、無事地球に帰還した時点で今回の実験が成功したことになっている。
宇宙飛行士たちが着る宇宙服もずいぶんスマートになった。
ロシア製のソユーズだと、今も昔ながらのレトロな宇宙服だが、この辺りも民間参入を象徴しているように感じる。
スペースX社では、2023年には大型宇宙船「スターシップ」に一般の利用客を乗せた宇宙旅行を計画している。今回の宇宙服を見ると、宇宙がよりカジュアルでファッショナブルなものになった印象を受ける。
打ち上げが成功し、全身で喜びを表すイーロン・マスク氏。
彼は南アフリカ出身で、徴兵され黒人弾圧に加担することに意味はないとして母親の母国であるカナダに移住。その後アメリカに留学して、そこで起業する。
「アメリカは、すごいことを可能にする国だ」
マスク氏のように、才能と野心を持った若者が世界中から集まってくるのが、アメリカの底力である。
「スペースX」について以前このブログで書いたのは、2018年2月のことだった。
この時は、世界最大のロケットの打ち上げに成功したということで、私はにわかにイーロン・マスクという男に注目した。
打ち上げ費用は、従来の3分の1。これこそ、民間の力だった。
マスク氏は、電子決済のPayPal、電気自動車のテスラに続き、宇宙産業でも一躍注目の人となった。テスラについては「倒産の危機」と何度か囁かれたが、中国政府にも食い込んで今や世界有数の億万長者だ。
しかも彼が行なっているのは、GAFAのようなデジタルに特化したビジネスではなく、ものづくりという目に見える世界で次々に革新をもたらせているのがすごい。
宇宙分野でも、単なる宇宙ビジネスではなく、地球以外の惑星に人類が住むことを目標としている。とにかく夢がどデカイのだ。
打ち上げには、トランプ大統領も駆けつけ、「わが国は宇宙への大胆かつ輝かしい復帰を果たした」と強調した。
アメリカにとって、自国のロケットを使った有人宇宙飛行は実に9年ぶりのことである。
トランプさんは「米国の大志の新たな時代が、いま始まった」と宣言し、今後の月面着陸や有人火星探査への意欲を表明した。
マスク氏は一時トランプ大統領のもとで戦略立案を担う諮問会議のメンバーにも選ばれたが、トランプさんがパリ協定から離脱したことで辞任した。マスク氏は太陽光発電にも取り組んでいて、政府を利用しつつも決して絡め取られない綱渡りの達人でもあるのだ。
新型コロナで10万人以上の国民が死亡しても、怯まず前進し続けるのがいかにもアメリカらしい。
今回のミッションが全て成功すれば、8月にも行われる予定の実用飛行第1号では、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんがクルードラゴンに乗り込むことになっている。
日本のメディアも、新型コロナ感染者が増えた減ったと毎日同じように騒ぐだけでなく、こうした歴史を変えそうな夢のあるビッグプロジェクトについてもっともっと報道してもらいたい。
私たちも、しっかりと在宅を続けながらも、頭の中までストップしていては、世界に取り残されてしまうのだから・・・。
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吉祥寺@ブログ
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