<吉祥寺残日録>「歴史館大学」で吉祥寺の歴史を学ぶ #201024

地元のことをもっと知りたい。

そう思っていた時にたまたま見つけたのが、「歴史館大学」のチラシだった。

「歴史館大学」と言っても、普通の大学ではない。

武蔵野市の施設である「武蔵野ふるさと歴史館」のスタッフが講師となり、武蔵野の歴史・文化について学べる無料講座のことだ。

用意されている講座は、①考古学実習、②近世武蔵野地域学、③歴史公文書で見る武蔵野の近現代、④民俗学事始、⑤東国の中世の5つ。

いずれも月に1回、全6回の連続講座である。

希望者が多い場合には抽選となるため、私は考古学と中世の2つの講座を申し込み、考古学実習への参加が認められた。

会場となる「武蔵野ふるさと歴史館」まで自転車で出向いた。

考古学実習の講座は、この施設の2階会議室で午後3時から始まった。

会場に入ると、いきなり様々な資料が配られる。

  • 武蔵野市埋蔵文化財 調査報告集11
  • 考古学への情熱〜井の頭池遺跡群発掘史、はじまりは御殿山から〜
  • 埋蔵文化財保護の手引き
  • 武蔵野市史 資料編

そして、本日のテキスト「第1回考古学実習」のコピーも・・・。

思ったよりも本格的な講座だ。

講師を務めるのは、「武蔵野ふるさと歴史館」の設立当時から文化財指導員を務める紺野京さん。

埋蔵文化財とは何かという基礎の基礎から、武蔵野市、特に井の頭公園周辺で進められている遺跡調査の話まで私が期待した通りの内容を丁寧に説明してくれた。

生徒は10名ほどで、意外にもお爺さんはほとんどおらず大半が女性だったのにちょっと驚いた。

井の頭公園の一帯は水源があったせいで旧石器時代から人が暮らしていて、東京都指定史跡「井の頭池遺跡群」となっている。

遺跡群の中がいくつかのエリアに分けられていて、「井の頭池遺跡群A」、「井の頭池遺跡群B」、「井の頭池遺跡群C」、「御殿山遺跡第1地区」、御殿山遺跡第2地区」、「吉祥寺南町一丁目遺跡」、「吉祥寺南町三丁目遺跡」、「井の頭水門」、「丸山A」、「丸山B」といった具合だ。

遺跡からは、縄文人の住居跡や多数の土器や石器などが発掘されている。

この講座でしっかり学べば、太古の昔、井の頭公園周辺がどんな様子だったのかを知ることができそうだ。

しかし、人工密集地での考古学調査は簡単ではない。

指定されたエリア内で工事を行う時には着工日の60日前までに届出をしなければならないと文化財保護法で決められていて、そのタイミングで素早く地下を掘って調査を行うのだという。

上の写真は、井の頭公園に隣接する吉祥寺の有名焼き鳥店「いせや公園店」建て替え工事に合わせて実施された調査の様子だ。

重機で表面の土を取り除いた後、人間の手でスコップを使って少しずつ地層を掘り下げていく。

この辺りだと大体、1メートル掘るごとに1万年遡る計算で、1メートルも掘れば縄文時代の地層が出てくるらしい。

赤土の部分はいわゆる「関東ローム層」で、主に富士山の噴火に伴う火山灰の地層、黒い部分は植物の堆積が多かった時代ということになるそうだ。

案外身近なところに縄文人の痕跡が残っているものだ。

こんな話を聞いてワクワクしてくるのも、私が爺さんになった証拠だろう。

さらに、この講座のすごいのは、実際に発掘された石器や土器に直接触れられることだ。

石でできた鏃(やじり)。

実物はとても小さなもので、薄くて、刃の部分はギザギザしている。

石を使ってこんな細かな細工をするのはさぞ大変だっただろう。

こちらは大きめで、石斧やハンマー。

これも直に触ることができるが、確かに持ちやすい。

道具として扱いやすいように持ち手の部分などが加工されているだめだという。

ただ単に、河原に転がっていた石を適当に拾ってきて使っていたわけではないのだ。

さらには、土器も何個か出してくれて、これも自由に触っていいという。

土器もその形状や文様から時代が特定できるといい、「型式学的研究」というその分野はかなりマニアックな発展をしているそうだ。

私はあまり細部には興味がないし、細かい作業は苦手なので、もう少しざっくりしたことを知りたいと思いながら話を聞いていた。

次回は来月21日。

國學院大学博物館で開かれている企画展をみんなで見にいくという。

なんだか私も、考古学にハマりそうな予感がしてきた。

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