この冬最強の寒波が日本列島を覆い、井の頭公園の池にもうっすらと氷が張っているように見える。
珍しいのでカメラを取り出し写真を撮った。
12月、日に日に寒くなるのは当たり前だが、テレビの報道・情報番組では長々とお天気のネタをやることが多くなった。私が編集長やプロデューサーをやっていた頃は、こんなことはなかった。冬が寒いのは当たり前だ。
「人が犬を噛んだらニュースだが、犬が人を噛んでもニュースではない」と教えられたものだ。
しかし、視聴者の高齢化が進んで、お天気は安定して視聴率が取れるネタになったのだ。
年齢によって人の関心というものは変わる。子育ても終わり会社も定年になると人の関心事は天気と健康に集中するようだ。生臭い事件のニュースは敬遠され、受験やいじめといった教育問題も昔のように見てもらえなくなる。
視聴者の年齢構成によって、テレビで扱うテーマも大きく影響を受けるのだ。
海外のニュースも同様だ。北朝鮮問題やトランプさんネタ、韓国の少女像の話や中国の脅威といった話だけは頻繁に扱われるが、バランスが悪い。海外ネタは昔からバランスが悪いのだが、私が昔取材していたような海外のネタは今ではまったく放送されない気がする。
一方で、「日本は素晴らしい」的な番組が最近異様に増えている。それが視聴率を取るからだ。訪日外国人が増え、彼らの目を通して日本の良さを再認識する、それ自体は素晴らしいことだが、あまりにそんな番組が増えていることには違和感も感じる。やはりバランスが悪いのだ。
日本のテレビだけを見ていては、世界のことはわからない、そんな時代だ。
だから私は、還暦を前にできるだけ旅に出ることにした。以前に比べ時間に余裕ができたことが一番の理由だが、世界各地に自ら足を運ぶことで見えて来るもの、肌で感じるものを個人的なブログとして書き残すことに余生を使おうと決めたからでもある。
その最初が今年5月に訪れた南京だった。ここから「きちたび」というシリーズを始めた。
そして今日12月13日は、南京事件のきっかけとなった南京陥落から80年目に当たる。この街で日本軍は何をしたのか? 「大虐殺紀念館」の展示内容については3回に分けてブログに書いた。
南京事件については未だに日中間で大きく見解が別れたままだ。歴史として客観視できる状況にない。私もいくつかの本を読んでみたが、事件直後のきちんとした調査がなされないまま政治的イデオロギー的な論争の中に置かれたままだ。
ただ実際に南京を訪れてみると、日本人に対する悪意を感じることもなく、逆に現代中国に溢れるエネルギーを強く感じた。超高層ビル全体を使ったイルミネーションに圧倒され、自国の歴史に触れようとする脅威的な数の観光客に驚かされた。
習近平氏が盤石な権力基盤を築いた中国。そんな中国からは日々興味深い情報が次々に伝わって来る。最近私が気になった情報は、アニメに関する記事だった。
「ORICON NEWS」に掲載された『アニメ業界、“日中”逆転のタイムリミット 日本人アニメーター“海外流出”危機も』という記事を引用させていただく。
『昨今、残業代の未払いや、過重労働による過労死などの問題が相次ぎ、悪質な“ブラック企業”への問題意識が高まるなか、アニメーターの“ワーキングプア化”がアニメ業界の関係者によってつまびらかになった。そうした厳しい環境下で、古くから日本のアニメ制作会社は作画作業の多くを韓国や中国に発注することで苦境を乗り切ってきた。しかし、「今後は中国と日本の立場が変わる可能性も」と語るのは、ガンダムの生みの親・富野由悠季著『映像の原則』(キネマ旬報ムック)など、日本書籍の翻訳に数多く携わっている台湾人翻訳家・林子傑氏。日本アニメへの造詣が深く、中国のアニメーター事情を知る林氏に、日中のアニメ制作会社が繰り広げる“人材確保”の舞台裏を聞いた。
「中国はここ数年、IP(知的財産)概念に対する認識の芽生え、および製造業の不振により、中国国内の資金は娯楽産業に流れ始めている」と林氏は説明する。しかし、このブームが俳優やアイドルのギャラを高騰させてしまったため、中小以下の企業はアニメ制作に視野を向けはじめたとのこと。それは、アニメに投資することで“自前のIP”を獲得し、大手と対抗するというのが目的であるという。
現状、中国のアニメ制作会社を大きく分けると、国産アニメを作る会社と、日本アニメの下請け会社の2つのモデルとなるのだが、今どちらも転換期に入ってきているようだ。「今まで国産アニメを作ってきた会社は、ネット配信時代のニーズに応えるべく、日本アニメのスタイルや更新ペースを参考にしだした。一方、日本アニメの下請け会社は、国内向けのアニメを制作する方が、日本アニメの下請けよりも収益が出ることに気づいた」と林氏は指摘する。なぜなら、昨今は中国国内のアニメ制作だけで需要があり、かつ制作資金も高いためだ。こうした流れの下、ここ5年ほどで今まで人件費の上昇に喘いでいた制作会社は苦境を乗り越えつつある。
それに連動して、中国国内のアニメーターに対する待遇も今までにないほど高まっている。林氏によれば「中国ではアニメの質に対する要求のレベルが日本ほどではないこともあり、“仕事量”と“収入面”で余裕が出来ています。実際、大手のアニメ会社に務める優秀な原画マンだと、不動産が高騰するなか短期間で自宅を購入できるほど待遇が改善されているそうです。そしてその中には、日本でアニメ制作を勉強し、かなりの技術を身につけたものの、日本ではカツカツの生活をしていた中国人アニメーターもいます」とのこと。彼らほど日中アニメーターの“待遇差”を実感した者もいないだろう。
また、中国ではアニメーターの人材不足が深刻なため引き抜きが乱発。優秀な人材を引き抜かれないよう、中小規模の制作会社も大手と同等以上の給料を出しているようだ。「そういう状況だから、日本でアニメ制作を学んだ中国人アニメーターは、日本に留まるよりも、帰国するほうが生活面で遥かに安定するというジレンマがあります」と林氏。
高給が約束されるだけでなく、日本にいるよりも役職面でも上にいける中国のアニメ制作会社。中国人アニメーターが日本のアニメ制作から離れていくように、優秀な日本人アニメーターの“海外流出”は時間の問題かもしれない。実際、ベテランクラスで中国の制作会社に移ったアニメーターもいるようだ。言語的な意思疎通の課題はあるものの、中国に行けばトップアニメーターとして礼遇、重用されるという現実があれば、その決断を止めることは難しい。
人気アニメ『けものフレンズ』のプロデューサーを務めた福原慶匡氏は5日、Twitterにて「中国のアニメ産業は始まったばかりではあるが、生産で3年、技術で5~10年で追い抜かれるだろうなと確信。言い方難しいけど中国に組んで”頂ける”のは後数年かなと思います。それ以降は日本と共同事業するメリットが中国にない」と投稿。日中の制作現場の現状を見た時、現状を憂う声は高まっている。
“ブラック労働”の代表格とされる日本のアニメ業界に比べ、高収入・好待遇で人材確保を進める中国のアニメ業界。果たして、中国という“黒船”に日本のアニメ業界は持ちこたえられるのだろうか…。今年の7月、弊社の取材にて現役のアニメ監督・入江泰浩氏はアニメ業界の過酷な内情を明かし、『日本のアニメ業界は10年もたない』と警鐘を鳴らした。いまだその抜本的な解決策が見つからぬまま、期限は刻々と迫りつつある。』
ついにアニメもかと危機感を募らせる人も多いかもしれない。しかし、実際にモノを作っている現場にノウハウが蓄積されていくのだ。コスト削減を追い求め、中国に工場を頼った日本の当然の帰結ということになる。
中国の経済発展に日本が果たした役割は極めて大きい。日本のノウハウが様々な分野で中国に移転した。しかし、ただ移転しただけではない。中国はその巨大市場を武器に、日本や欧米諸国の先に行くような未来型の産業育成を国を挙げてやっている。
電気自動車や量子コンピューターなどなど。基礎研究にも莫大な予算を投じていて、近い将来、中国人が多くのノーベル賞を獲得する時代が来ると考えられている。
そしてドローンやフィンテックの分野ではすでに中国が世界の最先端を進んでいる。シリコンバレーと対抗できるのは今や中国しかないだろう。
そんな中国とどう付き合っていくのか?
日本にとって大きなテーマである。来年も中国各地に行ってみたいと思っている。

