昨日、ゴーンさんの弁護士が15時から会見するというので、見てみたいと思ってテレビをザッピングした。
日テレ、TBS、フジの3局が生の情報番組を放送中。どこかが中継するかなと思って待っていると、フジが会見を生中継していた。ところが不思議なことに弁護士が話を始める前に中継を終え、次の話題に移ってしまった。
「えっ、どういうこと?」
テレビの生番組を担当していた私から見て、フジのスタッフが何をしたいのか理解できなかった。ゴーンさんの事件を取り上げるなら、この会見は絶対に生中継すべきだろう。逆に肝心の部分を中継しないなら、この話題に触れるべきではない。
ゴーンさんの話題を打ち切ってフジが伝え始めたのは、ZOZOの前沢社長の話題だった。前沢氏がツイッターで発表した「総額1億円のお年玉企画」、つまり前沢氏のフォロワーになり、リツイートした人100人に100万円をあげるという企画の当選者が決まったという話題だ。TBSも日テレもやはり前沢氏の話題を延々と伝えていた。
剛力彩芽と交際したり、宇宙旅行に名乗りをあげたり、最近何かと話題を振りまく前沢氏は確かに時代の寵児かもしれない。そして、個人的にはあまり好きではないが、前沢氏自体はものすごいアイデアマンだと思う。
だから、この話題を取り上げることも理解できないわけではないが、私が番組担当者だったらあえて無視しただろうと思う。少なくとも、ひと昔のテレビにはそうした意地のようなものがあった。
なぜか?
この企画は、前沢氏が話題作りのために仕掛けた意図的なものだからだ。それは作為であり、ニュースではない。前沢氏の蒔いた餌にすべてのテレビ番組が飛びつき、長い時間を使ってZOZOの宣伝をしている。これはCM価格に換算するとすごい金額になる。おそらく1億円をはるかに超えた広告効果があったのだろう。
そんな魂胆が見え透いているものに飛びつくのは、今のテレビマンに意地というか、自主的な放送基準がなくなってしまっているように思えてならない。
確かに、視聴者の関心事に応えることは、昔からテレビ番組制作者に求められることだ。
そのために常にアンテナを張り巡らせ、他局とは違う面白いネタを探そうと努力してきた。しかし今は、ネットで話題になっているネタを安易にテレビで取り上げる傾向がある。現場に足を運ばず、パソコンに向き合ってネタ探しをする。それはテレビマンの怠慢ではないのか?
一般人が撮影した決定的瞬間やおもしろ映像などなど、インターネットができるまでは発見できなかった貴重な映像もある。それはテレビで扱う価値があるだろう。ただ、最初からネットでバズらせるための意図的な企てになんの抵抗もなく乗っかるのは、テレビマンとしてのプライドがなさすぎる気がする。
だから今のテレビは面白くないのだ。視聴者はすでにネットで知っている。すでに知っているネタをテレビがだらだらと後追いしていたのでは、メディアとしての価値はないだろう。そんなことをしていると、テレビはネットが使えない高齢者向けサービスに成り下がってしまう。
ゴーンさんの事件を取り上げないのは別に構わない。どのネタを取り上げるかは、まさに番組担当者の裁量である。ただ、ZOZOの金バラマキ企画を延々と放送する神経は理解できない。あまりに安易な番組を見るたび私は腹が立つ。テレビは本来もっと面白いメディアだ。決してオワコンではない。でもこんな番組作りをしていたら、いずれオワコンになってしまうだろう。
世の中には、いろんなニュースがある。それを掘り起こしてくるのが、テレビマンの仕事であり、腕であり、意地である。
安易にネットに頼るな。
ちなみに、ゴーンさんの弁護士の会見は、NHKも中途半端なところで終わり、結局Yahoo!の動画ニュースで見た。Yahoo!ニュースと言っても、実際はTBSと日テレはYahoo!向けに配信しているニュース番組だった。
検察や日産が一方的にリークしているニュースを見ているだけではこの事件は理解できない。初めてゴーン氏側の主張を聞くことができて、この会見はとても面白かった。個人的には、ゴーンさんの言い分の方が腑に落ちる気がするのだが・・・。
ZOZOとテレビ。
昨日の出来事は、ネット社会の中で、テレビがどのような役割を担うのかという課題を改めて強く意識させた。
テレビマンは、プライドを持って、もっと面白い番組を作りたいものである。
確かにテレビの質は落ちていますね。