🇬🇩 グレナダ/セント・ジョージズ 2024年2月11日
人口11万人ほどの小さな島国グレナダは、別名「スパイス・アイランド」と呼ばれる。

国旗にもナツメグの実がデザインされているように、ナツメグをはじめ各種香辛料が重要な輸出品となっている。

空港のショップも似たような規模の周辺国に比べて充実していて、ここでもスパイスがグレナダのお土産として幅をきかしていた。
それでもGDPの6割を占めるのは、やはり観光である。
私がトリニダード・トバゴに飛んだ日にも、ニューヨーク、マイアミ、トロントからの直行便がこの小さな空港に乗り入れていた。

そんなグレナダに来てホテルしか知らないというのもどうかと思うので、少し散歩をして20分ほど離れたレストランまでランチを食べに出かけることにした。
宿から近くて眺めが良さそうな店をGoogleマップからチョイスする。
宿の周りは緑に溢れ、広々とした敷地を持つ大きな家がゆったりと建てられている。

サボテンの花が咲き、路地の向こうに青い海が見える。
この家もそうだが、赤い瓦屋根の家が目につくのがグレナダの景観が他のカリブ海諸国と違うところだ。

不思議な形に整えられた庭木の向こう側に海が広がる。
今回の宿は緑に囲まれているが、実は2つの湾に挟まれた半島に位置していて、どっちに歩いても海が見えるのだ。
だから富裕層の邸宅や別荘にはもってこいのロケーションで、そのために大きな家ばかりなんだとようやく合点がいった。

半島の尾根に当たる部分を歩くと、遠くまでベンガラ色の屋根が続いているのがよく見えた。
まるで沖縄に来たみたいだ。
色とりどりの家が混在するカリブ海で、統一感のある赤い屋根は景観に上品さをもたらしている。

坂道を上り峠のようなところまで来ると、多数のヨットが停泊する美しい湾が眼前に広がった。
いや、これまたすごい眺めだ。
カリブ海に来て美しい海は見慣れたはずだが、それでも不意に目に飛び込んでくると、そのたびに感動のようなものに襲われてしまう。

この美しい「プリクリー湾」を取り囲むように、グレナダの中でもひときわ立派な邸宅やリゾートホテルが立ち並んでいる。
日本で言えば、沖縄や葉山みたいなところに外国人所有の豪邸が立ち並ぶイメージ、観光立国というのはそういうことかと思った。

Googleマップを頼りに歩くこと10分余り、何やら立派なゲートに導かれる。
1泊10万円はする5つ星の高級リゾート「Calabash Hotel」。
目指すレストランは、どうやらこの敷地内にあるらしい。

恐る恐る中に入ると、そこはもう別世界。
緑の芝生と椰子の木が作り出すいかにも人口的な超高級リゾートだった。
低層の建物がゆったりと並び、ハワイなどにもよくあるヴィラと呼ばれるスタイルのリゾートのようだ。

もちろん、敷地内には美しいプリクリー湾に面するプライベートビーチもある。
ただ、よくある高級リゾートなので、「なるほど、こういう感じね」というぐらいでさほど驚きはなかった。

私が目指したレストランは、このプライベートビーチに面して立っていた。
昼だけの営業となっていた理由がこの時理解できた。
リゾート客用のビーチハウスという位置づけなのだ。
ホテルゲストでなくても食事できるか聞くと大丈夫だというので、遠慮気味にビーチから離れた奥の席に座る。

メニューは豊富で、前菜からサラダ、メイン料理と並び、サンドイッチやハンバーガーなども用意されている。
値段はまず米ドル、この後に現地通貨で表記されていた。
いかにもベテランっぽい黒人女性が客の注文を聞いていく。
働くスタッフは全員黒人だった。

一方で、客は私以外全員が白人で、カリブ海ではどこに行ってもこの関係は変わらない。
植民地時代と変わらない関係のようにも見えるが、黒人スタッフはみんなプライドを持って楽しそうに客と接していて、昔と似た部分と変わった部分を両方感じた。

私はメニューの中から「フィッシュバーガー」を選んだ。
「Beer Battered Fish Barger」(30USドル)、およそ4500円である。

高級リゾートのレストランということで値段はそれなりだが、魚のフライは実にサクッと揚がっていて、ヨーグルトソースをたっぷりかけていただくと期待以上のおいしさだった。
間違いなく今回の旅行中に食べた中では一番だと思う。

こちらのバナナチップスは、お通しのようなものらしく、どの料理を注文してもついてくるらしい。
ポテトに比べるとカリッとはしておらず、ただバナナの珍しさだけであった。

とにかくフィッシュバーガーがとても美味しかったので、調子に乗ってカクテルを飲みたくなった。
さすがカリブ、ドリンクメニューにはずらりとカクテルが並んでいる。
その中から私は「バナナ・ダイキリ」を選んだ。
カクテルはほとんどが同一料金で16USドル(約2400円)だった。
これは期待したほどではなく、フィッシュバーガーで爆上がりしていたこの店の評価が私の中で少し下がった。

この高級リゾートでのランチを食べながら考えたことがある。
それは、旅に求められるワクワク感についてだ。
私が旅に求めているものとは、自分の何かに強い刺激を与えてくれること。
驚きだったり、感動だったり、気づきだったりいろいろだが、この高級リゾートにあまりワクワクしていない自分を感じていた。
まあ快適だろうが想定の範囲内、そういう感じがしたのだ。

ランチを終えて、来た道を歩いて宿に帰る。
宿に通じる道は未舗装のガタガタ道である。
でもそのアプローチには熱帯の植物が生い茂り、非日常が溢れていた。

宿代は6分の1だけれど、こっちの宿の方がはるかにワクワク感がある。
負け惜しみではなく、私はそう思った。
お金をかけなければ経験できないことはいろいろあるだろうが、大切なのは自分にとって大切な刺激が得られるかどうか。
それは必ずしもお金の多寡とは関係がない。
これからも、自分で選び、自分に合った刺激の得られる旅を計画しようとグレナダでのランチ体験で改めて思った。