<きちたび>アラビア半島の旅2023🕌サウジアラビア🇸🇦 世界的な配車アプリ「Uber」を初めて使ってみた

日本で「Uber」と言えば、ほとんど「Uber Eats」のことを指す。

地方ではタクシーを使って細々と配車アプリの役目も担っているのかもしれないが、東京ではアプリをダウンロードしてもほとんど使い道がない状態が続いている。

そんな「Uber」を初めて使ってみる機会がサウジアラビアで訪れた。

その時の経緯を書き残しておこうと思う。

サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の本拠地を訪ねた後、この日の宿泊先「ノボテル・ダンマン・ビジネスパーク」にチェックインした。

ノボテルはフランス発祥のホテルチェーンで、パリ特派員時代、私も何度かお世話になった。

ロビーも部屋もフランスらしいセンスの良さを感じさせるが、私の部屋はロビーに面した内側で外の景色は残念ながら見ることはできなかった。

ただ、「ビジネスパーク」という名前が示す通り、このホテルは繁華街から離れた工業エリアの中にポツンと建っていて、周辺には街はおろか食事をする店もろくにないロケーションだった。

私がこのホテルをわざわざ選んだのは、翌日乗る予定の鉄道の駅から一番近そうに見えたからだ。

チェックインを済ませてホテルを出たのは午後4時半。

この日は特に用事もないので、駅まで歩いて翌日の切符を買いがてら駅前で夕食でも食べて帰ろうという魂胆だった。

サウジアラビアに入国して以来、使用していたアラブ諸国共通のSimカードが機能せず、Googleマップが使えない状態が続いていた。

ホテルのWi-Fiを使って駅までの道順を確認し、ホテルの前を走る大通りをひたすら北に向かって歩いてみることにした。

道路脇には自動車のディーラーやガソリンスタンド、工場などが続き、実に殺風景なところだ。

歩道はあるにはあるが、ところどころ途切れていて、そもそも歩いている人など私以外誰もいない。

ダーランからダンマンに向かう幹線道路を自動車が猛スピードで駆け抜けていく。

途中1台のタクシーが私を見つけ、道端に止まって声をかけてきた。

タクシーにはすでに3人の乗客が乗っていたが、どうやら相乗りのシステムらしくもう1人乗せようという腹らしい。

私は英語で「Railway Station」と運転手に叫ぶが通じない。

スマホが生きていればGoogleマップで行き先を示すことができるのだが、機能しないので諦めて、もういいという具合に手を振るとタクシーはそのまま走り去っていった。

道路はやがて線路の上を横切る跨線橋に差しかかった。

すると歩道がなくなって狭くなり、なぜか側溝の蓋がことごとく割れている。

これはなんとも歩きにくい。

きっとオートバイか何かでここを通った奴がいるに違いない。

時差ボケや疲労もあるので、よろけてケガをしないよう気をつけながら橋を渡っていく。

跨線橋の下を2本のレールが走っていた。

この線路が、ダンマンからリヤドまで私が乗る鉄道だろう。

それにしても不必要に広い用地が鉄道のために確保されているものだ。

サウジ王室の大きな肖像が道端に立っていた。

道路は夕方の帰宅ラッシュになったのか次第に渋滞し、たくさんの車が一斉にクラクションを鳴らし始める。

サウジアラビアを含めて中東の運転マナーは甚だ悪い。

もしもタクシーに乗っていたとしても、この渋滞で身動きが取れず、イライラしたドライバーの危なっかしい運転にハラハラさせられただろう。

渋滞を横目に私は跨線橋を渡りきり、ここで道路を無理やり横断した。

どこにも信号も横断歩道もないため、本来は渡ってはいけない場所なんだと思うが、車が来ていなかったらどこでも渡っていいというのがアラブ社会での歩行者のマナーでもある。

もしも道路が空いていたら、とても危なくてこの場所を横断することなどできなかっただろうが、激しい渋滞が幸いして、車と車の隙間を通って無事に広い幹線道路を渡ることができた。

幹線道路から駅までは一直線、ダンマン駅の建物が遠くに見えてきた。

ただこの駅に通じる道路には歩道というものがないため、ガードレールを乗り越えて空き地を歩いて駅に向かう。

右側にはあまり立派ではない団地が連なっていた。

空き地から芝生を歩いて駅構内へ。

スプリンクラーをかわしながら、道なき道を適当に歩いていく。

駅前ならもう少しちゃんと整備しておいてもらいたいものだ。

こうしてホテルから30分ほど歩いて無事にダンマン駅に辿り着いた。

後で距離を測るとおよそ3キロの道のりである。

しかしこの時感じたのは、翌日の朝、全部の荷物を背負ってこの道を歩くのは結構しんどいだろうということだった。

無事に切符も買えて、さあ夕食にしようと思ったが、駅前なのに飲食店というものが見当たらない。

駅の目の前は例の団地で、商店すらないのだ。

観察していると、鉄道の本数も少ないうえ、乗客はみんな車でやってくるので、日本のように駅前が賑わうという状況が生まれず商売にならないようである。

これは困った。

ホテルから駅まで来る途中にも、1軒の飲食店も商店もなかった。

あったのはホテルの脇にあったスターバックスのみ、仕方ないホテルまで歩いて戻って今日の夕食はスタバにしようと決めた。

来た道をとぼとぼ歩いて帰っていると、跨線橋の上で追突事故を起こした車を見かけた。

相変わらず渋滞は続いていて、わずかな隙間に鼻先を突っ込もうとして前の車に衝突してしまったのだろう。

ダンマンを中心とするこの大都市圏は、ロサンゼルスのように面で広がっただだっ広い街で、自動車がなければ生活ができない。

おまけに鉄道が街を分断していて、線路を渡るには数本の幹線道路を通らなければならない構造になっているようだ。

私は再び30分歩いてホテルまで戻り、ホテルの隣にあったスターバックスで夕食を食べた。

日本でもあまりスタバは使わないので、私にとっては初めてのスタバでのディナーとなる。

どんなメニューが人気なのかも知らず、ショーケースに並んでいる中から適当にパンとケーキとカフェラテを注文してトータルで66リアル、日本円で2360円。

思ったよりも高い気がする。

これも円安が原因なのだろうか?

味の方は、この旅行中に食べた食事の中で最低だった。

翌朝6時前、チェックアウトして大通りまで出てタクシーを待とうかと思ったが、ここでちょっと閃いた。

こんな朝早くいつ来るかわからないタクシーを待つよりも、以前から一度試してみたかった「Uber」を使ってみたい、そう思ったのだ。

一旦ホテルに戻り、スマホをWi-Fiに繋いで「Uber」アプリを開く。

こういうこともあろうかと、日本でアプリをダウンロードしてクレジットカードを登録してきたが果たしてうまく乗せてくれる車を見つけることができるのだろうか?

出発地をホテル、行き先をダンマン駅と入力し検索すると、アプリが勝手に近くを走る車を探してくれる。

行き先を文字で入力するのが難しければ、地図を開いて行き先を指定することもできる。

車の種類も選ぶことができて、コンパクトカーからラグジュアリークラスまで好みの車種を選ぶと、そうした車の中から一番早く来てくれる車が選ばれる仕組みだ。

料金も予め表示されるので安心である。

サイードさんというドライバーが選ばれ、彼の車の現在位置と到着予定時刻が表示された。

4.95と乗客から高い評価を得ているドライバーのようだ。

タクシーと違い、配車された車が今どのあたりを走っているのかがわかるのでその様子を眺めているだけで退屈しない。

ドライバーも同じようにアプリのナビゲーションに従って車を走らせているので、時々曲がり角を間違ったりするのもリアルタイムでこちらから見えるのが面白い。

こうして6時9分、サイードさんの車がホテルの入り口に到着した。

ちょうど空が明るくなり、周囲の様子が見えるようになった。

礼を言って後部座席に乗り込む。

勢いよくドアを閉めると、サイードさんがちょっと怒ったように静かに閉めてというようなことをアラビア語で言った。

タクシーと違って個人の車、丁寧に扱うのがマナーのようだ。

前日とは打って変わって、早朝の道路は全く混雑していなかった。

幹線道路を直進し、跨線橋を越え、私が横断した場所を通り越してだいぶ進んでから次の交差点でUターンして駅への道を曲がる。

タクシーと違って、道を間違えても、故意に遠回りしても料金は同じ。

支払いはクレジットカードで自動的に行われるため、目的地に到着したらお礼を言って降りるだけでいい。

ホテルから駅までは時間にして10分、料金は9.85リアル(約352円)。

チップも渡せる仕掛けがあって、私はドアを強く閉めてしまったためお詫びを兼ねて5リアルをチップとして足した。

予想以上にスムーズに早く駅に到着したので、構内にあるカフェで朝食を食べながら待つことに。

フルーツサラダとカラメル・マキアートを注文したら、この店のコーヒーもまたスターバックスだった。

厳格なイスラム教の国というサウジアラビアのイメージは、行く先々で出会うスタバによって、すっかり変わってしまった気がする。

そしてサウジアラビアで初めて体験した「Uber」、このミスマッチがなんとも面白いと感じるとともに、公共交通機関が発達していない社会で配車アプリが人気となった理由がわかった気がした。

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