🇯🇵 秋田県/秋田市 2025年1月7日~8日
念願だった「乳頭温泉 鶴の湯」への旅でおよそ40年ぶりに足を踏み入れた秋田県。
そこでは、私の知らない未知の味が待ち構えていた。
秋田空港から乳頭温泉に向かう途中、新幹線への乗り換えのために立ち寄った秋田駅でランチをいただく。
選んだお店は、秋田駅から歩いてすぐの蕎麦店「弥助そば 秋田総本店」。
文政元年(1818年)創業の老舗だけあって、雑居ビルの1階にあるのになかなかの佇まいである。
暖簾をくぐると、福助人形が迎えてくれた。
壁には「西馬音内そばの系譜」と書かれた系図が貼られている。
「西馬音内」は秋田県南部、現在の雄勝郡羽後町にある地名で、「にしもない」と読むらしい。
この町は古くから盆踊りとそばが有名で、西馬音内そばの特徴はフノリをつなぎに使い冬でも冷たいツユをかける「冷がけ」が一般的なことだ。
そして歴史ある西馬音内そばの本家と言われるのが、ここ「弥助そば」ということらしい。
店では秋田名物の稲庭うどんも出しているけれど、そんな歴史を知れば、迷いなく店の名物「冷がけ蕎麦」をいただく以外ないだろう。
こちらが最もオーソドックスな「創業文政元年 元祖冷がけそば」(780円)。
冷たいツユがかかった蕎麦に、天かす、漬物がセットになったシンプルなものだ。
なぜか、そば湯が付いていて、店員さんに聞くと蕎麦を食べ終わった後、お好みでそば湯を足して温かくしてツユを飲むのだという。
どんぶりの縁にたっぷりの山葵が置いてあるものの、食べてみると普通の冷がけ蕎麦である。
今では珍しくもない食べ方ではあるが、当時としては画期的だったのだろう。
それにしてもなぜ、雪国の秋田で冷がけが受けたのか・・・ちょっとした謎である。
蕎麦よりも個人的な興味を引いたのが、お品書きにある謎の郷土料理の数々だった。
まずは、こちらの「とんぶり」(460円)。
「とんぶり」とは、一年草であるホウキギの実を加熱加工したものだという。
直径1〜2ミリ程度の緑色の粒で、無味無臭。
それが器に盛られウズラの卵と一緒に卓上に置かれた。
「これって、どうやって食べるの?」と思ったが、好みで醤油などをかけていただくらしい。
食べてみると、なるほど数の子のようなプチプチとした食感が面白い。
もう一つ、注文したのはこちらの「ぼだっこ」(560円)。
「ぼだっこ」とは、秋田の方言で塩っ辛く漬け込んだ鮭のことだそうだ。
運ばれてきた時には思わず「小さい」と思ったが、一口味わうと、とても量が食べられないほどに塩辛い。
若い頃、塩辛い塩鮭が大好きだった私だが、「ぼだっこ」の塩辛さは常識を遥かに超えている。
これはとても単体では食べられないので、思わず日本酒を注文する。
秋田の銘酒「千歳盛 上撰」の小徳利(500円)。
「常温」「人肌燗」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「とびきり燗」と好みの温度で提供してくれるのが嬉しい。
「ぼだっこ」を少し齧りながら、お猪口を傾ける。
やはり、こうじゃなければ「ぼだっこ」はとても食べられたものじゃない。
とはいえ、「秋田に来たぞ」と実感できる興味深いランチだった。
鶴の湯で1泊した帰り、秋田空港で2時間以上待ち時間があったため、空港内にあるお店で遅めのランチを食べた。
選んだお店は「稲庭本舗明治佐助商店」。
秋田名物の稲庭饂飩はまだ食べていなかったので、ここで1回本場の味を食べて帰ろうと思った。
店内は空港内であることを忘れさせてくれるような民芸調の作り。
時間もたっぷりあるし、落ち着いて飲食を楽しめそうなお店である。
私が注文したのは、「男鹿産ぎばさ稲庭つけ麺」(1600円)。
単純に「ぎばさ」という聞き慣れない名前に惹かれて頼んでみた。
「ぎばさ」とは、秋田の海辺に生えている「アカモク」という海藻のことだそうで、ネバネバした食感が特徴だ。
こちらの温かい出汁つゆにたっぷりの「ぎばさ」が入っていて、これに冷たい稲庭うどんを浸していただく。
食べた印象はもずくのような食感。
大体想像通りで特別の感想はなかったけれど、知らない郷土料理はやはり一度は食べてみたいものである。
ついでに、こちらも気になった名物「秋田茶飯」(350円)も注文した。
「秋田茶飯」とは、秋田醤油と隠し味に秋田味噌を使った昔ながらの茶飯だそうで、ご飯の上にこれまた秋田名物の「いぶりがっこ」が添えてある。
こんなに日本全国均一化が進む世の中で、秋田には私が知らない食べ物がたくさん存在することにある意味衝撃を受ける。
この店にもいろいろ郷土料理が揃っていて、私の興味をそそる。
どれも美味しそうだが、その中から奮発して「寿司はたはた」(900円)を注文してみることにした。
「はたはた」も秋田を代表する魚。
さて、どんなお寿司がいただけるのか?
ところが、運ばれてきたのは、小皿にちょこっと盛られた数匹のはたはた。
寿司というので、もう少し酢飯があるのかと思っていたが、はたはたにわずかに米粒がまぶしてある程度、正直「これが寿司か?」と思った。
「寿司はたはた」または「はたはた寿司」は、秋田近海で獲れるはたはたを用いたなれずしのようなもので、秋田では「ハレの日」にいただく縁起物とされる。
毎年12月頃に漬ける自家製の寿司はたはたはまさに秋田を代表する郷土の味ということらしい。
これも日本酒が欲しいところだが、この後羽田経由で岡山まで飛んで、自動車を運転しなければならないので、ここがグッと我慢する。
食事を済ませて、空港内のお土産コーナーをぶらぶらする。
お店の前には秋田犬のオブジェ。
何から何まで秋田尽くしだなと思いながら歩いていると、珍しいお土産に目が止まった。
秋田駅で最初に食べた「とんぶり」だ。
真空パックになっていて値段は288円、格安である。
「これはいい」と思って、岡山のご近所さんへのお土産に買い求める。
岡山に着いた翌日、早速近隣に配ったところ、誰一人として「とんぶり」を知らず、「これはどうやって食べるんですか?」と聞かれた。
その後、ご近所の人に会うたびに「珍しいものをいただいて」と感謝されたが、誰も「美味しかったです」とは言わなかった。
「弥助そば 秋田総本店」
電話:018-801-1212
営業時間:月-土11:00-14:30/17:00-22:30
日曜11:00 - 21:30
定休日:無休
https://noble-creation.com/yasukesoba/
「稲庭本舗明治佐助商店」
電話:018-853-5066
営業時間:08:00 - 19:45
定休日:無休
