本当なら今日からミャンマーに旅行に行く予定だった。
しかし新型コロナウィルスの騒ぎで、各国とも出入国を厳しくチェックするようになり、旅行先での思わぬトラブルも考えるためキャンセルすることにした。
その代わりにということで、横浜に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも見に行ってみようと思い、妻と一緒に井の頭線に乗った。
このクルーズ船では、新型コロナウィルスの集団感染が起き、これまでに64人の感染者が確認され、今なお3700人の乗員乗客が船内に隔離されて連日テレビが大々的に報道している今最も注目されている船である。
ところがである。車内でスマホを触っていると、「ダイヤモンド・プリンセス」が生活に必要な水を処理するため一時的に横浜を出港し外海に出たと知った。今日横浜に行っても、肝心のクルーズ船を拝むことはできないのだ。
急遽、予定を変更し、渋谷に新しくできたランドマーク「渋谷スクランブルスクエア」の屋上デッキに行ってみようと思い、迷路のような渋谷駅をさまよってエレベーターを探し出すと、屋上に上がるためには1人2000円もかかるという。妻は途端にビルの上に上がる意欲を失い、代わりに目の前に止まっていた都バスに乗ってみることになった。
渋谷発新橋行きの「渋88」ルートのバスだ。青山、六本木、神谷町、虎ノ門といった旬なスポットを巡って都バスは新橋へ。あちらこちらで再開発が行われていて、意外に面白いバス旅だった。都バスの1日乗り放題チケットは500円のようなので、また機会があれば東京都心を1日中バスでぐるぐる回るのも面白いかなと思ったりした。
新橋からJRのガード沿いに有楽町方面に向かう。
空は快晴。寒さは感じない。
目的地は、妻が以前から一度行きたいと言っていた交通会館の屋上にあるレストランだ。
「東京会館 銀座スカイラウンジ」。
創業55年。昭和40年にオープンした都内に唯一残る回転展望レストランだ。
交通会館のエレベーターに乗って最上階の14階で降りると、そこはスカイラウンジ専用の入り口となっていた。
昭和の高級レストランらしく料理のサンプルが飾られていた。
店の名物は、「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」のようだ。
そして、15階の展望レストランへは、階段を歩いて登らなければならない。
このあたり、オープン当時のままなのだろう。
昭和の雰囲気そのままのお店だが、展望レストランは綺麗にリフォームされていた。
ドーナツ状の回転部分は360度ガラス張りで、想像していた以上に開放感があり、気持ちがいい。
すごくゆっくりと回転していて、80分で一周するらしい。
私たちが案内された時、席からは銀座4丁目方面が見えていた。
コース料理が基本のお店のようだが、お昼には少しカジュアルな「ランチセットメニュー」も用意されていたので、それを注文することにした。
私はハンバーグ、妻はシーフードカレーを頼んだのだが、いずれにもスープとサラダがセットになっている。
スープは、昔懐かしいコーンスープ。
濃厚でとろっとしていて、甘みの強い昭和の味がするコーンスープである。
これは、美味い。
きっと子供の頃に食べたことがある味だったからだろう。久々に美味しいと思えるコーンスープに出会えた。
サラダもとても美味しい。
チーズ味がしっかりしたドレッシングがすごく私の舌にはぴったりとくるのだ。
今風のレストランでは感じたことのない満足感が広がってくる。
「ハンバーグ 温野菜添え」(2600円)。
数量限定で、ライスかパンを選べる。
ソースも、「きのこクリームソース」か「ボルドレーズソース」から選ぶ。
私は、王道のボルドレーズソースを選んだ。
本当にごく普通のハンバーグなのだが、見た目が美しく、味もとても私好みだ。
何だろう?
ハンバーグはいろんな店で食べるが、これほど満足度の高いハンバーグには滅多にお目にかかれない。
付け合わせは、色のついたマッシュポテトの上に、じゃがいもと芽キャベツ。
見た目も上品で可愛らしい。
ハンバーグにナイフを入れると、肉汁がじわっとあふれ出してくる。
人間が昭和なので、やはり昭和の味が美味しく感じるのだろうか?
一方、妻が注文した「シーフードカレー&ライス」(2500円)。
こちらも昭和のお約束、カレーが銀の器に入って登場した。
エビやイカ、ホタテなどシーフードがたっぷり入っていて、ごはんにかけるとカレーが余るほど量もたっぷりだ。
カレーの味は、酸味と甘みが強く、とてもフルーティーだ。
かと言って、甘すぎるわけでもなく、妻も私もとても美味しいと感じた。
福神漬けと小ぶりならっきょうが付いているのも嬉しくて、全部食べてしまった。
そうして食事をしている間に、窓の外には東京駅。
新幹線や様々な電車がひっきりなしに駅から滑り出ていく。
さらに回ると、目の前には「東京国際フォーラム」。
その向こうには丸の内のオフィス街が広がっている。
嬉しいことに、テーブルには塩胡椒と砂糖壺が置かれている。
別に使う必要もないのに、少し残ったライスに塩をふって食べてみた。
子供の頃、卓上に置かれた塩をごはんにかけてよく食べたものだ。
今時、テーブルに塩を置いてくれる店はほとんどなくなってしまった。
食後の飲み物は、コーヒーか紅茶がセットになっている。
私も妻も、コーヒーを頼んだ。
砂糖壺の中には、フランス風の角砂糖。
フランス人を真似て、角砂糖を2つ入れた甘いコーヒーを飲む。
美味い。
別料金でデザートも注文できるようだが、この甘いコーヒーで十分だ。
コーヒーが運ばれてくる頃には、有楽町駅が正面に見えてきた。
ビッグカメラの向こう側には、皇居の緑も見える。
東京駅も有楽町駅もバッチリ眺められ、行き交うたくさんの電車が見られるので鉄道ファンにはたまらないスポットなのだろう。
コーヒーをゆっくり飲みながら、再び銀座方面が見えてきたところで店を出た。
さすがに年代物なので、回転スピードが一定でなく、もともとここに来たがっていた妻は「船酔いしそう」と不満げだったが、私はとても気に入った。
値段は少し高いが、東京唯一の回転レストランというアトラクションを考えると全然文句はない。ぜひ同年代の友人を連れて、再訪したいと思った。
食べログ評価3.64、私の評価は4.20。
「東京会館 銀座スカイラウンジ」 電話:050-5594-1382 営業時間:11:00~22:00 定休日:無休 https://www.kaikan.co.jp/branch/skylounge/

