つい最近知ったのだが、「東京三大煮込み」と呼ばれるお店があるらしい。
北千住の『大はし』、月島の『岸田屋』、そして森下の『山利喜』。
いずれも下町にある老舗の居酒屋である。
東京ビッグサイトで開かれた展示会の帰り、そのうちの1軒にちょっと寄りたいと思った。
ビッグサイトから一番近いのは月島である。
展示場から東京駅に向かう都営バスが途中「勝鬨橋」を通ることを知り、このバスで月島に向かった。
お目当てのお店は、月島のシンボル「もんじゃストリート」のど真ん中にあった。
お店の名前は「岸田屋」。
創業は明治時代の1900年だそうだ。
開店の30分前には行かないと行列でお店に入れないという書き込みを見て、セミナーを途中で抜け出して月島に来たのだが店の前には誰もいない。
あれっと思って店の中を覗くと、すでに店内は満席だった。
ネットに午後5時開店という情報があったので4時半に来たのだが、どうやら開店時間が違っていたようだ。
店の入口には「営業時間 16時すぎ〜21時」と書いてある。
それにしても、店内は満席で外には誰も並んでいないというお店も珍しい。
仕方ないので、誰かが出て来るまで店の前に置かれた椅子に座って待つことにする。
待つこと15分、思いのほか早く最初の客が店から出てきた。
待っていたのは私だけだったので、すぐに店の中に入れてもらえた。
コの字形のカウンターの隅っこに通される。
さすが下町の老舗、店の雰囲気は素晴らしい。
漫画「美味しんぼ」の1巻にも登場したというのも頷ける風情である。
とりあえず、ビールを注文する。
生か瓶かと問われ、生と答えるとこのジョッキが目の前に置かれた。
ビールの値段を確認すると、生ビールは大が950円、中が700円、小の値段は読み取れない。
とにかく壁に貼られたメニューしかないので、私の席からはよく見えないのだ。
ちなみに瓶ビールは750円らしい。
もちろんお目当ての煮込みも注文する。
壁に貼られたメニューには「牛にこみ」(600円)と書かれていた。
「ネギはどうします?」と聞かれ「お願いします」と答えたら、こんな感じの煮込みが運ばれてきた。
「ネギ」は別料金で80円かかるみたいで、客の中にはネギを頼まない人もいて、その人のもとに運ばれた煮込みを観察するとネギなしの方が見た目ワイルドな印象だった。
これが「東京三大煮込み」の一つか・・・。
量はさほど多くはないが、実にさまざまな部位が入っている。
特徴は汁がどろっとしていること。
ただ、期待したほど味に強烈な個性はなく、どちらかと言えば味付けがぼんやりしているという印象を受けた。
ネギに汁を絡ませ、好みで七味をかけていただく。
これまでいろんな居酒屋でもつ煮込みを食べたが、やはり好みは人によって違うのだろう。
少なくとも、私がもしも東京三大煮込みを選ぶとすると、残念ながら「岸田屋」さんは入らないと思った。
生ビールをあっという間に飲み干し、「チューハイ」(500円)に切り替える。
これは失敗。
甘さが煮込みの味に合わないと思う。
もう一杯、ビールの方が良かった。
煮込みを食べ終わり、せっかくなのでもう一品食べてみることにする。
魚の煮付けがいくつもあったので、この中から選ぶことにした。
最初はイワシかなとも思ったが、「子持ちカレイ」という昔懐かしい響きに惹かれ「子持ちカレイ煮付」(700円)を選ぶ。
名物の「牛にこみ」に比べると、「子持ちカレイ煮付」は迫力がある。
何と言っても、カレイの卵が想像よりも大きい。
切り身の半分以上を卵が占めているように見える。
子供の頃、子持ちカレイの煮付けがよく食卓にのぼったが、その卵はこれほど大きくはなかった。
食べるとしっかりと卵が詰まっている。
ただ味付けはこれまたいささかボヤッとしていて、感動するほどの味ではない。
どうやらこの店の味付けは私の好みには合わないようだ。
それでも多くの人がこの店の味を高く評価し、来客が絶えないのだから私の好みがマイナーだということなのだろう。
店の奥には「岸田屋」と彫られた年季の入った看板が飾られていた。
1900年に創業した当時はお汁粉屋だったそうで、居酒屋に鞍替えしたのは戦後になってから、1966年のことだそうだ。
煮込みの味は期待したほどではなかったが、店の雰囲気は一見の価値がある。
午後5時を過ぎると、ポツポツと客が回転し始めるので、それぐらいの時間に来た方が待たずにすみそうだと観察の結果そう思った。
ちなみに、行列を捌くためにお店の滞在時間は最大1時間半に制限されている。
食べログ評価3.72、私の評価は3.50。
「岸田屋」 電話:03-3531-1974(予約不可) 営業時間:16:00すぎ〜21:00 定休日:日曜・月曜・祝日
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