今日は全国的に雨。
岡山でも未明から一日中雨が降り続いた。
こんな日は農作業の手を止めて、のんびり休みを取るのが一番だ。

とはいえ、家でただゴロゴロしているのも能がない。
せっかくなら新たな食を求めてドライブするのも悪くないと思い、妻に提案したのは岡山南東部の漁港・日生(ひなせ)に行って名物のB級グルメ「カキオコ」を食べるというプランだった。
小麦粉は頭痛に悪いと最近お好み焼きを食べることを控えている妻だが、このところ体調がいいようで、案外あっさりと乗ってきた。
家から車を走らせること1時間。
雨の平日ということもあり、日生の街は人影もまばらだった。

ネットで見つけたお目当ての店は、曲がり角ギリギリに立つちょっと危なっかしい小さな家だった。
「お好み焼き あらた」
3姉妹で営むお店はすでに60年の歴史を持ち、日生に数あるカキオコの店の中でも老舗だそうだ。

店の前には「日生カキオコ」の幟が立っていた。
カキオコとは地元特産の牡蠣を使ったお好み焼きのことだが、そのルーツについて地元のホームページでは次のように紹介されている。
カキの生産が始まった昭和40年代に、カキ漁師が売り物にならない小粒や傷もののカキを近所のお好み焼き店に持ち込んで、お好み焼きに入れて食べるようになったと言われています。カキオコは、2002年にカキ入りお好み焼きの美味しさに感動し、ボランティアでPR活動をはじめた「日生カキお好み焼き研究会」が考案した呼び名です。
引用:日生カキオコまちづくりの会【公式ホームページ】
岡山県は牡蠣の生産量全国3位で、その5割がここ日生産だ。

私が子供の頃にはカキオコなどという食べ物は聞いたことがなく、全国的なB級グルメブームに乗って10年ほど前から岡山の名物としてさまざまなメディアでも取り上げられるようになった。
地元では「カキオコ」というブランドを登録商標として管理して町おこしに利用していて、基本的には日生以外ではこの名称は使えないということらしい。
実際に、私が訪れた「あらた」の店先にも「カキオコ認定店」の看板が掲げられていた。

店内はいたって素朴な作り。中央の鉄板を囲んで椅子が7席。
そのほかに4人がけのテーブルが2つ置かれていた。
若い頃学校を抜け出して通ったお好み焼き屋もこんな感じだったので、ちょっと懐かしさも感じる。

雨の平日ということで、私たちが訪れた時には大阪から来た1組の親子がいただけ。
3姉妹の次女だという女性が気さくに私たちを招き入れてくれた。
外が冷えていただけに、鉄板の温かさが心地よい。

メニューはこれだけ。
名物の「カキオコ」は1200円、それに中華麺を加えた「カキモダン」が1400円だ。
2人とも定番の「カキオコ」を注文した後、その横に書かれた「おっぱい焼」なるものが気になり、女将さんに聞いてみた。
すると牡蠣が「海のミルク」と呼ばれることにちなみ、この店では牡蠣を焼いたものを「おっぱい焼」と呼んでいるのだと教えてくれた。
カキオコに入れる牡蠣よりもひと回り大きな牡蠣を使うというので、「おっぱい焼」も一つ注文する。

すると、先客のカキオコを作っている次女の隣で、長女のおばさんが私たちの「おっぱい焼」を作り始めた。
立派な牡蠣が輪切りにしたネギと一緒に鉄板で焼かれる。
ネギは鳥取砂丘で栽培された白ネギだそうだ。
そして牡蠣は、もちろんその日に入荷した日生の牡蠣を使う。
牡蠣のシーズンは11月から3月末までだが、4月の中頃までは入荷するという。

こちらが「おっぱい焼」(900円)。
醤油でさっと味付けされていて、日生産の牡蠣はプリプリで味が濃い。

お好みでテーブルに置かれた一味や七味、さらにはこちらのレモンペッパーをかけていただく。
鮮度の高い牡蠣は焼いても小さくなりにくいのだそうだ。
牡蠣自体の旨さを味わいたければ、カキオコよりも「おっぱい焼」が絶対オススメだと私は思う。

私たちが「おっぱい焼」を食べ始めた頃、今度は次女のおばさんが「カキオコ」を焼き始める。
おっぱい焼に比べ小ぶりとはいえ、どうして立派な牡蠣である。

溶いた小麦粉と具を一緒に混ぜて鉄板に、お好み焼きの片面が焼けたところで千切りキャベツと焼いた牡蠣を乗せる。
その牡蠣の上から溶いた小麦粉を薄くかけてひっくり返す。
最後の鉄板で割った卵の上にお好み焼きを置き片面を卵でラッピング。
両面が適度に焼き上がったらカキオコの完成だ。

カキオコと言っても、見た目はいたって普通のお好み焼きである。
ソースは甘口、刻んだネギは京都の九条ネギ、赤い紅生姜がアクセントを加える。
出来上がったカキオコは鉄板の上に置かれたままで、時間が経っても冷めることはない。

ヘラで食べやすい大きさに切り、卓上に置かれたソースとマヨネーズをお好みでかける。
どこを切っても、白い牡蠣が顔を出す。
それだけたっぷりと牡蠣が入っているということだ。
しかしソースとマヨネーズの味にかき消され、牡蠣の存在感が多少薄れてしまうのは致し方ないことなのだろう。

瀬戸内海の小さな漁師町の小さなお好み焼き屋さん。
気立てのいいおばさんとの会話を楽しみながらカキオコが出来上がるのを待つ時間はなんとものどかで楽しいものだった。
食べログ評価3.68、私の評価は3.50。
「お好み焼き あらた」
電話: 0869-72-0851(予約不可)
営業時間:10:00 - 16:00
定休日:月曜