三連休の最終日、午後から小田原に行ってきた。
小田原城で開かれているイベントを見るためだ。

こだま号に乗って小田原に着いたのは、午後5時ごろ。
予想に反して、イベントのポスターなどはどこにも貼っていなかった。
「あれっ? 意外に盛り上がっていないなあ」
と思いながら、歩いてお城へと向かう。

お城に到着しても、お祭り感があまり感じられない。

お城の中に入ると、キッチンカーが集まったエリアなどもあり、多少の賑わいはあった。

私が見に行ったイベントは、「1ミニット・プロジェクションマッピング in 小田原城」。
アジア最大級の国際大会で、毎年1回、日本の各地で開かれている。関東で開催されるのは、今回が初めてだ。

入場料は、有料席が1000円。
無料エリアも用意されている良心的なイベントだ。

石段を上がって、イベント会場となる本丸エリアへ・・・

私が会場に着いたのは、開演の1時間ほど前だったが、すでに場所どりをしている人たちがいた。
パイプの仕切りの内側の椅子席が有料、仕切りの外側は無料なので、シートを敷いて無料席に陣取る人たちだ。
ここからでもお城がよく見える。

周囲の配置などを一通り見て回った後、私も有料エリアに入った。
死角となる大きな木があるため、有料席はちょっといびつな形で設定されている。

大型プロジェクターが3箇所に設置されている。
これらを組み合わせて、天守閣全体に映像を投影するのだ。

お城の壁面に格子模様が浮かび上がる。
これは作品ではなく、映像をお城に正確に投影するための位置合わせだ。

この日は、台風17号が日本海を通過していて、強い南風が吹いていた。
湿った風が箱根山に当たって雲を次々に発生させている。

お城の上空を覆う不気味な雲。
東京など関東全体としては晴れているのだが、小田原周辺だけは雨が降るかもしれないという予報で、上下の雨合羽も用意してイベントに臨んだ。
でも、イベントの演出効果としては、最高だ。

午後6時半。
空はすっかり暗くなり、天守閣には、イベントのタイトルが映し出される。
いつの間にか、有料席も人でいっぱいになった。
いよいよイベントの始まりだ。

まず最初は、地元、小田原北條太鼓のオープニングアクト。
会場のライトが消されると、天守閣は闇に沈む。
そして・・・

プロジェクションマッピングの国際大会が始まった。
第8回目を迎えた今年の大会には、過去最多となる43カ国と地域から177組のエントリーがあり、その中から厳選された20のファイナリスト作品が披露される。

ファイナルに残ったのは、インドネシア、マレーシア、チェコ、ロシア、ドイツ、チリ、カナダ、ベルギー、メキシコ、コロンビア、タイ、ルーマニア、コスタリカ、日本、スペイン、インド、中国、セルビア、ウクライナ。

実に、多彩だ。
「1ミニット」と題するだけに、作品の長さは1分から1分59秒まで。
その短い時間に凝縮された多彩さこそが、この大会の魅力で、私がどうしても見たいと思った理由だ。

日本のプロジェクションマッピングというと、だいたいワンパターンで似たものが多いが、やはり国が違うと感性が違う。
見たことのないような表現が見られる。
音楽の使い方も重要だ。

たとえば、このルーマニアの作品などはとても斬新で、途中から動画を撮ってみた。
こちらだ。
この大会では毎回テーマを決めて作品を募集していて、今年のテーマは「夢」。
この作品を作ったルーマニア人の作家は、かなり怖い夢を見るようだ。
世界の人々が、「夢」という言葉からイメージするものの多様さが面白い。

大会の事務局は日本人のグループが担っていて、小田原城の正確なデータを世界のクリエーターに公開して作品を募る。
だからほとんどのクリエーターたちは、一度も実物の小田原城を見ることなく作品を作っているのだ。

だから、外国人が抱く日本のイメージが映像に現れた作品も多い。
侍や龍、ブレードランナーのような混沌とした街のイメージもある。
上のスペインの作品には、「令和」と書かれたノボリが登場して笑ってしまった。

そうかと思うと、このメキシコの作品は、先住民族の伝統的な織物の図柄でお城を彩り、自国の色に染め上げた。
日本人にはなかなか発想できない色彩だろう。
そうした中で、クオリティーの高い作品が終盤に並んでいた。
まずは、インド。

とても、幻想的な作品だ。
動画はこちら。
続いては、中国。

とてもリアルで高精細な映像が特徴だ。
こらも途中から動画に切り替えた。
続いては、ルーマニアとセルビアのチームの作品。
最初から動画で撮影した。
そして、今年のグランプリに輝いたのは、ウクライナの作品だった。
こちらも、最初から動画で撮影した。
どの作品が好きかは、人によって違うだろうが、一口にプロジェクションマッピングと言っても多様な表現方法があることを目にすることができたのは収穫だった。

イベントの最後は、中国とフランスの2人の招待作家による作品が上映された。
いずれも繊細で素敵な作品で、日本に比べて作品のバリエーションが多いという印象を持った。

日本ではこうしたイベントにお金を投じるスポンサーがいない。中国や東欧諸国など意外な国がいい作品を作っているのを見て、作品を発表する場の多さが作家を育てるということを思った。
来年の東京五輪は、一つの転機になるだろうか?