<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 軍事侵攻から2年!ロシア有利に傾く状況の中で試される民主主義陣営の胆力 #240225

圧倒的な強者に対して挑むことは容易ではないが、見るものを熱くさせる。

昨夜の世界卓球、女子団体の決勝戦はまさにそういう試合だった。

無敵の中国は、世界ランキングの1位から3位をズラリと揃え盤石の構え。

それに対して日本は、パリオリンピックの代表に決まった早田ひな、平野美宇、張本美和の3人で挑んだ。

かつては全く歯が立たなかった中国だが、3人とも過去に中国のトップ選手に勝利した経験を持つ。

第1試合、15歳の張本美和が世界No.1の孫穎莎にストレート負けを喫するも、次に登場したエース早田が東京五輪の金メダリスト陳夢に勝利、続く平野はなんと世界No.2王芸迪に対し3−0のストレート勝ちし、あと1勝で悲願の優勝に手が届く状況となった。

エース対決となった第4試合。

早田は孫穎莎の前に力及ばずストレート負け、勝負の行方は15歳、この大会が世界デビューとなる張本に託された。

立ち上がり、張本のスマッシュが面白いように決まり陳夢を圧倒する。

「これは、行ける!」と多くの人が思ったが、ベテランの陳夢は徐々に挽回し第2ゲームを逆転の奪う。

ここからは経験の差が出て次第に中国ペースに。

若い張本の表情に余裕が失われていった。

結果は1−3、惜しくも打倒中国はならなかったものの、これまでの最も中国に肉薄した試合だった。

若い日本には勢いがあったが、中国には数々の修羅場を経験してきた圧倒的な経験値があった。

絶対的な強者を倒すのには、勢いだけではなく、時間をかけて地力をつけることが必要ということだろう。

絶対王者中国に挑む日本女子の戦いは、まさに軍事大国ロシアに抵抗するウクライナの姿にも重なる。

24日でロシアの軍事侵攻から2年が経った。

今月27日は、2014年に起きたロシア軍のクリミア侵攻から10年にもあたる。

大きな節目のタイミングだ。

ウクライナの首都キーウの独立広場には、戦死した兵士たちの数だけウクライナの国旗が飾られるのだが、この2年の間で地面が見えないほどに旗で埋め尽くされてしまった。

ウクライナ軍は今、深刻な兵員不足と武器の不足に苦しんでいる。

侵攻2年を前にキーウを訪れたアメリカ議会民主党のシューマー院内総務らの議員グループに対して、ゼレンスキー大統領は「もしこのままアメリカからの援助がなければ、ウクライナは負けるだろう」と述べたと伝えられる。

正直な思いだっただろう。

最大の支援国であるアメリカでは、議会共和党の反対でウクライナへの軍事支援パッケージがストップしている。

ヨーロッパ諸国は引き続き支援を約束しているものの、アメリカの援助なしでは前線に十分な兵器が送れない。

古今東西、戦争の勝敗を分けたものが武器の優劣と量だったことを考えれば、どんなにウクライナ兵の士気が高くても勝利は望めない。

今、残念ながら、そんな冷徹な事実が現実となろうとしている。

ウクライナ軍は今月17日、東部の要衝アウディーイウカから部隊を撤退させると発表した。

アウディーイウカは2014年東部ドンバス地方で戦闘が勃発して以来、ウクライナ軍の拠点として地下トンネルを張り巡らせるなどして要塞化されていた。

強力なロシア軍の前進を阻むため大きな役割を果たしてきた町だ。

ここがロシア側に渡ったことで、今後一層ウクライナ側は不利な状況に立たされるだろう。

一連の戦争が終わった時、ひょっとするとこの町からの撤退が戦争の分岐点になるかもしれないとも思うが、西側メディアの報道は明らかに減っていて、パレスチナの陰に隠れてウクライナ報道は侵攻2年の節目でも目立っていない。

西側メディアがウクライナについて報道しなくなる中で、ロシアの通信社「スプートニク」は軍事作戦開始から2年を前にプーチン大統領に対して戦況を報告するショイグ国防相の写真をトップニュースで伝えている。

記事のタイトルは「アブデーフカ解放作戦は最小限の損失で遂行された=ショイグ露国防相」。

アブデーフカとは、ロシア語でアウディーイウカのことをさす。

ショイグ国防相は「9年かけてつくられた地下にトンネル網が張り巡らされたアブデーフカの要塞化された地域でウクライナ軍の抵抗を打破したことは、成果である」「アブデーフカ解放作戦は国防省の教本に掲載される見込み」とプーチン大統領に報告したとされる。

これに対してプーチン氏は「アブデーフカをめぐる状況はロシア軍の成果であり、その成果をさらに飛躍させる必要がある」と述べたという。

この2人の会談では、東部だけでなく南部でもウクライナ側が反転攻勢で確保したドニエプル川東岸の拠点クリンキーもロシア軍が奪還したとが報告があったとAFPが伝えている。

いずれにせよ、膠着状態にあった戦線が次第にロシア有利に転換しつつあることがこのところのニュースから伝わってくる。

ウクライナを支援してきたG7は、侵攻2年に合わせて今年の議長国イタリアのメローニ首相らがキーウに入り、「必要な限り支援を行う」と改めてウクライナを支えるとの共同声明を発表した。

しかし、安いウクライナ産農産物が流入することに反発するポーランドの農民が国境で抗議活動を行うなど、足元では確実に支援疲れと無関心が広がっている。

そしてそうした世論の変化に伴って、西側諸国からウクライナに流れる支援も確実に減っているのだ。

財源不足に苦しむEU諸国は、差し押さえたロシアの資産から生まれる利子をウクライナ支援に充てることで合意した。

ただ、米英が主張する資産没収には依然慎重な姿勢だ。

地理的にロシアに近い国々と離れた国との間での温度差も表面化し始めていて、ウクライナ支援にいつまで予算を使うのか、多くの国が舵取りに苦しんでいる。

今年予定される欧州議会の選挙では、ウクライナ支援に消極的な極右勢力が議席を伸ばすことが確実視されている。

果たしてウクライナが負けた時、世界に何が起きるのか?

真剣にそうした問いに向き合う時期に来ているように感じる。

日本経済新聞が侵攻2年を前に配信した記事を引用しておきたい。

見出しは『ウクライナ支援疲れの代償 断念なら「天文学的負担」』である。

「ウクライナの戦線維持を支援することは、米国にとってはるかに有利でコストもかからない」。米戦争研究所は2023年12月、ロシアが勝利した場合に平和を維持する費用は「天文学的になる」と指摘した。

ウクライナが敗北すれば新たに1千キロメートルを超える欧州連合(EU)各国の国境近くにロシア軍が迫ることになる。ロシア軍の西進に対応するために、米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍は東欧での部隊増強が迫られる。ステルス戦闘機を新たに多数、配備する必要も出てくる。

最新鋭F35の1機当たりの調達コストは7千万ドル(約100億円)を超え、年間700万ドル超の運用・維持費用がかかるとされる。NATO加盟国は今後10年間で600機を配備する計画だが、機体の製造やパイロットの養成には長い時間がかかる。

G7の軍事関係者の間では、ウクライナの敗北シナリオで割を食うのは日本や台湾だとする見方も出ている。台湾周辺における中国の軍事的脅威を抑止するためのアジアでの米軍戦闘機の配備が遅れたり、主力兵器の配備数が絞られたりする可能性があるためだ。

トランプ前米大統領が11月の大統領選で勝利すれば、さらに先行きは混迷する。前大統領はNATO加盟国に対して軍事費を増額するよう圧力をかける。

前大統領が返り咲けば、ウクライナに領土割譲の妥協を強いるとみられる。「力による現状変更」の容認につながり、アジアにおける中国軍の勢力拡張を勢いづかせる可能性が高い。

戦後の国際秩序を支えてきた米国不在となれば、自衛のため各国が軍事を拡大させる公算が大きい。NATOは14日、24年に加盟31カ国のうち18カ国が国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やす目標を達成すると明らかにした。

今後は冷戦期の平均とされるGDP比3.5%までの増加が必要になるとの見方も広がる。その場合、例えばドイツの国防費は22年比で倍増し、1000億ドルを大きく超えることになる。これは同年の日本の防衛費の3倍の水準だ。

欧州外交評議会のグレッセル上級政策フェローは「安保コストとしては現時点でウクライナを強力に支援した方が長期的に安くすむのは明白だ」と指摘する。

引用:日本経済新聞

ウクライナが完全にロシアの影響下に入れば、今度は直接NATOがロシアと向き合うことになる。

ロシアは今月、ソ連兵の記念碑を破壊した容疑でバルト三国エストニアのカヤ・カラス首相らを指名手配したと発表した。

バルト三国ではウクライナ侵攻後、旧ソ連が立てた記念碑を撤去する動きが続いていてこれを牽制する明らかな脅しだ。

中立政策を貫いてきた北欧諸国でもロシアへの警戒感が急速に高まっていて、難航していたスウェーデンのNATO加盟もようやくここに来てトルコやハンガリーが合意して実現することになりそうだ。

ウクライナでの戦争の先に待っているのは、ロシアとNATO諸国の間での緊張関係。

それは間接的に台湾情勢を中心とした東アジアにも及ぶことを私たち日本人も覚悟しておかなければならない。

軍事支援が滞り戦況が不利になる中で、ウクライナ国内でもさまざまな軋みが表面化してきた。

ゼレンスキー大統領は今月8日、軍事侵攻以来ウクライナ軍の指揮をとってきたザルジニー総司令官の解任を発表した。

国民的英雄だったザルジニー氏の交代は前線の兵士たちの士気にも影響が出ると見られている。

兵員不足を解消するため、ウクライナ国内では徴兵年齢の引き下げも取り沙汰され、若者たちの徴兵逃れの動きも報道されている。

2年間戦場から戻らない兵士たちの妻からは「夫を家に帰して」との訴えも公然と上がっている。

こうした反戦的な世論を煽るようなロシアによる情報戦も激しさを増しているという記事も目にした。

同じく日本経済新聞に掲載されていた「ニセ情報より怖い洗脳戦 中ロ、相手の世論を巧みに操作」という記事を引用させてもらう。

真っ赤なウソを使った情報攻撃だけではない。実はもっと巧妙で、恐ろしい工作が水面下で仕掛けられている。ほとんどが事実の公開情報を使い、大衆の心理を操る手法である。

ウクライナへの侵略を続けるロシアも、武力攻撃に加えてすさまじい情報戦を浴びせている。大量の偽情報をばらまくだけでなく、ウソを含まない公開情報を武器にした作戦も多い。

長年、ロシアによる情報工作への対策に携わってきたリュボフィ・ツィブリスカヤ・ウクライナ政府顧問は、悪質な事例の一つとして徴兵逃れを促すロシアの工作を挙げる。

この通りにやれば、合法的にウクライナの徴兵を逃れ、生き延びることができる――。ロシアはこんな触れ込みで、極めて詳細なマニュアルを作成し、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などで流し続けているという。使われているのは本物の公開情報だ。

同顧問によれば、ウクライナへの打撃は大きい。同国の若者には徴兵を忌避する動きもあり、兵員不足が深刻になっている。ロシアはそこにつけ込み、ウクライナの戦意を奪おうとしている。

このほか、戦死したウクライナ兵の遺族らによるSNSの会話グループなどに、ロシア工作員が正体を偽って加わり、遺族の怒りをあおる例もある。「ウクライナ政府・軍は遺族への対応がひどい」といった批判を繰り返し、抗議デモをたきつける手口だ。

ツィブリスカヤ顧問は「厳しい戦争が続けば、ウクライナ国民の間にも疲れや不満がたまる。ロシアはそうした感情をあおり、ウクライナの結束を崩す情報戦を強めている」と警戒する。

引用:日本経済新聞

野党指導者ナワリヌイ氏を死に追いやり、反対世論を弾圧して封じ込めたプーチン政権。

それに対して民主的な社会であればあるほど、巧妙な情報戦には脆い面がある。

戦場に行きたくない若者がいるのは当然であり、親しい家族が戦場から無事に戻ってくることを何より願うのは人として当然のことだ。

誰も責めることができないことだが、戦争ではそれが弱みとなり、敵に利用されるのである。

当初西側諸国が期待したロシア経済の破綻もプーチン政権の内側からの崩壊も起こりそうにない。

むしろ戦時体制を口実に国内を引き締め、プーチン大統領の権力基盤はより強固になったように見える。

ウクライナの人たちにとって戦争の勝利、早期終結はますます遠のきつつあり、戦況の悪化は停戦交渉の条件をより厳しいものにするだろう。

果たしてウクライナの人たちはどこまで持ち堪えることができるのか?

まさに、民主主義陣営の胆力が試されている。

民主的な国家が専制主義国家に敗北することの意味を、私たちは想像力を膨らませて真剣に考える必要に迫られているのだ。

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