日本株の上昇が止まらない。
バブル期の最高値を更新したばかりの日経平均は、4日の終値で、ついに史上初めて4万円の大台を突破した。

果たしてこの株高の要因は何なのか?
今朝の日本経済新聞の分析記事を引用しておきたい。
日経平均株価が4日、史上初めて4万円の大台に乗せた。今年の上昇率は20%と世界のなかで突出する。各国と比べて通貨安や低金利、脱デフレなど好条件がそろう。企業収益見通しの改善度合いが欧米に比べて高く、海外マネーの流入につながっている。
4日の東京株式市場で日経平均は続伸し史上最高値を更新した。終値は前週末比198円41銭(0.5%)高の4万0109円23銭。今年の上昇率は20%と、米ダウ工業株30種平均(4%)などを上回る。20カ国・地域(G20)のなかでトルコ(22%)に次ぐ2位だ。
引用:日本経済新聞

海外投資家の買いは1月から再加速し、今年2.6兆円を買い越した。「世界の投資家はまだ日本株の持ち高は少ない」(SMBC日興証券の吉岡秀二専務執行役員)と一段の流入観測が強い。海外勢が注目するのが、欧米に比べて高い企業業績の改善度だ。

東証株価指数(TOPIX)を構成する企業の2024年の1株当たり純利益の市場予想は、22年末から4%程切り上がった。円安や企業の値上げによる収益改善を確認し予想引き上げが進む。
対照的に欧米主要企業の予想1株利益は同期間に4〜5%低下している。米国は巨大テック企業を除くと、金利負担などが重荷で業績が伸び悩み気味だ。欧州や中国は景気の減速が厳しい。

新型コロナウイルス禍以降のインフレは世界にとっては逆風だった。日本には脱デフレを後押しするプラスの側面がある。コスト転嫁に尻込みしていた企業が値上げに動き、海外投資家に前向きな変化と捉えられている。
物価上昇によって23年の名目GDP(国内総生産)は591兆円と1年間で6%増え、節目の600兆円が迫る。日経平均は過去、名目GDPとの連動性が高かった。

今年は当初、円安の追い風がやむとみられていた。ところが米国の利下げ転換には時間がかかっている。日銀はマイナス金利解除後も緩和的な政策を続けると明示し、日本株への強気論が再び強まった。
米大手運用会社ブラックロック調査部門のジャン・ボアバン氏は「円安が企業の海外収益を押し上げるうえ、物価上昇で値上げしやすくなった」となお日本株に強気だ。ドル建て日経平均は21年の高値をまだ8%下回り、ドルでは買い時との声もある。
もっとも、円高に反転すれば日本株の優位性は揺らぐ。みずほ証券の試算では、10%の円高は日本企業全体の営業利益を2兆円押し下げる。小林俊介チーフエコノミストは「1ドル=130円では来期の増益が怪しくなってくる」と指摘する。
引用:日本経済新聞
要するに、株価急上昇の要因は海外マネーの流入で、その背景には日本企業の業績改善が欧米企業に比べて優れているということらしい。
株価のチャートは名目GDPのグラフと一致していて、1980年代と違って今回の株高は決してバブルではないという見立てなのだろう。
実際に日本社会を見回しても、バブルの時のような浮ついた雰囲気は一切ない。
この30年の間に、アメリカの株価が13倍になったことを考えれば、日本の株価がようやく最高値を更新したとはいえ、この差は異常と言えば異常だ。

日経新聞の記事では詳しく触れられていなかったが、日本株を押し上げている要因の一つに世界的な半導体関連株への資金の流入がある。
アメリカ株が長く史上最高値を更新し続けているのも、「OpenAI」や「NVIDIA」などAIや半導体分野に世界中からマネーが集中していることが理由だ。
日本は、最先端の半導体技術では遅れをとっているものの、半導体製造装置や素材分野で世界的なシェアを持つ日本企業があり、このところの日本株の急上昇においてもそうした半導体関連の企業に海外の投資マネーが集まっているらしい。
先日テレビで「半導体ウォーズ 台湾と国際秩序のゆくえ」というフランスのドキュメンタリー番組を見た。
コロナ禍を経て、半導体が石油に代わる最重要戦略物資と見做されるようになり、米中を中心に世界中で半導体をめぐるかつてない競争が起きているという内容だった。
主役は、台湾の半導体受託メーカー「TSMC」。
1987年、自らは設計部門を持たない世界初の半導体専業ファウンドリ(受託製造企業)としてモリス・チャンによって創業された「TSMC」は、アップルをはじめ世界中のIT企業が設計した半導体の生産を請け負い、世界最大の半導体メーカーに成長した。
特に最先端の半導体製造の分野では、日本はもちろんアメリカや中国にもその技術を持つ企業はなく、もしも台湾有事が発生して「TSMC」からの半導体供給がストップすれば、たちまちスマホから自動車まで生産がストップし世界経済が麻痺してしまうという危機感が世界中に広まった。
現にコロナ禍の2021年、世界的な半導体不足のため自動車メーカーが製造ラインを止めざるを得ない事態が発生、各国政府も経済安全保障の観点から自国内に半導体工場を建設するために巨額の補助金を用意して「TSMC」を誘致する大競争が発生した。
アメリカは2020年、アリゾナ州フェニックスに「TSMC」の工場を誘致することを発表、まだその工場が建設中の2022年にはバイデン大統領やアップルのティム・クックCEOも出席して「TSMC」の第二工場建設も発表された。
当初2024年の製造開始を計画していたが、労組との交渉が難航して来年から「TSMC」がアメリカでの製造を開始する予定だ。
アメリカは国内で半導体を製造する企業を支援する法律を作り、「TSMC」を含む対象企業に520億ドル(約8兆円)の巨額投資を決定している。
一方、日本も「TSMC」の誘致に成功した。
熊本に完成した日本初となる「TSMC」の工場、先月24日には開所式が開かれテレビニュースでも大きく報道された。
この誘致をめぐっては日本政府は1兆2000億円あまりを出資して、ソニーやトヨタも出資して文字通り国をあげた歓迎ぶりだ。
すでに熊本には第二工場の建設も発表されていて、現地では一気に地価も高騰しているという。
まさに半導体を制するものが世界を制するという時代。
こうした世界的な競争が、投資マネーを半導体関連銘柄に引き寄せているのだ。

4万円はまだまだ通過点という強気の声も聞かれる中、当面注目されるのは日銀の動きだ。
日経新聞の記事も指摘している通り、物価と賃金の好循環が実現したと判断すればいよいよゼロ金利解除も現実のものとなりそうである。
日本の金利が上がり、インフレが落ち着いてきたアメリカの金利が下がれば、日本の株高を支えてきた円安が修正される可能性が高い。
その時、市場がどのように反応するのか?
一時的にマイナス要因となるのは避けられないだろうが、日本経済回復のサインとしてポジティブに受け止める可能性もある。
ほとんどの日本人にはあまり関係のない今回の株高だが、景気は気から、気分が盛り上がって実体経済にもプラスになればいいのだけれど、バブル崩壊の経験で受けた傷跡はそう簡単に癒えそうにはない。