<吉祥寺残日録>日本初の女性総理誕生へ!マスコミの予想を覆し自民党新総裁に高市早苗氏を選出 #251004

石破おろしから始まった自民党内の争いは、結党以来初めてとなる女性総裁を誕生させた。

この一連の政局を眺めつつ私が感じたのは、今は亡き安倍元総理の亡霊のしぶとさだった。

私自身は高市さんはどうも苦手だけれど、日本に女性総理が誕生することは大いに評価したいと思う。

直近の参議院選挙で参政党が大きく議席を伸ばすなど、日本の有権者が右傾化する中で、どうせいつか高市さんが総理になるのであれば、自民党が衆参で少数となっている今が望ましい。

安倍一強時代のような絶対多数の自民党を高市さんが率いるのは、どう考えても心配である。

1年前の総裁選で誕生した石破茂総理が辞任を表明したのは9月7日のことだった。

石破さんが総理に就任したのは去年10月、その頃、自公連立政権はまだ衆参で過半数を維持していた。

旧安倍派を中心とした裏金問題で支持を失った自民党は、持ち前のバランス感覚を働かせ、長年安倍さんの最大の政敵だった石破さんをあえて総裁に選び支持率の回復を狙った。

国民的な人気があるとされた石破さんは、総裁選の最中に主張していた約束を反故にして、就任直後に国会を解散するという賭けに出た。

この決断は、石破さん自身が望んだことではなく、石破さんを担ぎ上げた周囲のプレッシャーに負けたものだとも言われた。

結果は与党の惨敗、衆議院で過半数割れに追い込まれる。

賭けに負けた石破政権は初っ端から与党単独では予算案も通せない片肺飛行を余儀なくされた。

しかし、ここから石破さんは不思議な粘り腰を見せる。

「熟議の国会」を標榜し、野党それぞれと個別に交渉、各野党が求める政策を時には丸呑みして、臨時国会を乗り切った。

そして、今年の通常国会でも立憲、維新、国民の3党と個別に交渉を重ね、各々の顔を立てる形で期限内に予算を成立させ、政府提出の法案も滞りなく通していった。

それは、これまで見たことのない国会の風景だった。

私が生まれて以来、自民党がほぼ政権を独占し数の力に物を言わせて強引に政府の施策を可決するのが常であった日本の国会が、与野党が個別課題ごとに協議を重ね時間をかけて多数を形成する姿は本来あるべき議会の姿のようにも思えたのだ。

就任当初こそ官僚が作った答弁書を棒読みしていた石破さんは、時間が経つにつれて自分らしさを取り戻し、自らの言葉で答弁する姿が目立つようになり、個人的には少数与党も悪くないと思い始めたのだ。

しかも心配されていた外交でも、なんとかトランプさんとも渡り合い、関税交渉を妥結に導いた。

しかし、ネット世論は常に石破さんに厳しかった。

日本ではずっと、「ネット世論=親安倍」だったことを考えれば、その政敵である石破さんが何をやっても批判されるのも不思議ではない。

しかも最近では、既存メディアも必要以上にネット上の意見をあたかも広範な世論のように伝える傾向が強まり、ネット依存が強くない人たちにまで反石破の情報が拡散していった。

私個人は、石破さんに多くは期待していなかったものの、トランプ関税交渉など今となっては予想した以上に頑張ったと評価したい。

公約した政策を実現するスピードが遅いという問題点はあったが、目指す方向は常識的で中道的であり、全体的には好ましいと思っていたので、もう少し総理を続けて欲しかった。

しかし、石破自民党は参議院選挙でも大敗を喫し、ついに退陣を余儀なくされた。

まあ2度の国政選挙で大敗したのだから辞めるのは当然とも思うものの、安倍政治のツケが石破さんを追い詰めたというのは安倍さんの亡霊恐るべしと感じるばかりだ。

さて、そうして石破さんが辞任を表明して俄かに活気づいた自民党の時期総裁選び。

5人の候補者が名乗りをあげた。

小林鷹之元経済安全保障相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、そして小泉進次郎農相。

いずれも去年の総裁選に出馬したメンバーで、「敗者復活戦」などと揶揄された。

自民党の総裁選といえば、公選法にも縛られず文字通り「血で血を洗う」何でもありの戦いという印象が強いが、今回は少数与党という厳しい状況だからか、候補者も各陣営も表立って他候補を攻撃するようなこともなく、こぞって党内融和を訴えたため盛り上がりに欠ける総裁選となった。

そして今日午後1時から、国会議員による投票が始まった。

NHKのほかTBSとテレ東を除く民放各局も自民党総裁選の模様をライブで伝え、私は各局の報道ぶりを比較しながらテレビを見守っていた。

投票が進む会場の映像をバックに、各局の政治部記者や評論家が事前取材に基づいて結果を予想していたが、全ての局が高市、小泉による決選投票を予想し、最終的には小泉氏が有利との予想で一致していた。

高市氏は1年前の総裁選でも党員票でリードを広げ1回目の投票で石破氏を抑えてトップとなった。

その時、小泉氏は3位だったが議員票ではトップだったので、この2人が決選投票に進むことは最も順当な波乱のない予想だったとも言える。

今回台風の目となったのは林氏で、石破さんを支持したベテラン議員などが穏健な林さんを支持し選挙期間中に急激に支持を伸ばし、場合によっては高市さんを抑えて決選投票に進む可能性もあるとの報道もあった。

しかし、高市さんはメディアの予想以上に強かった。

党員票では全体の40%以上を集め、小泉、林両氏に大差をつけた。

課題とされた国会議員票も3位ながら健闘して、1回目投票で再びトップを確保した。

1回目投票で注目されたのは、小林氏、茂木氏の国会議員票がメディアの取材よりも増えていたことだ。

キーマンは唯一の派閥を率いる麻生氏だと見られている。

直前まで態度を明らかにしていなかった麻生氏は、昨夜「決選投票では党員票が一番多い議員に投票する」と発言、その一言が流れを作ったらしい。

麻生氏は、息のかかった議員に1回目投票では小林氏と茂木氏に票を回すよう指示したとされる。

2人の陣営に「貸し」を作るためであり、決選投票への布石でもあった。

そして迎えた、高市vs小泉の決選投票。

2人がそれぞれ登壇し最後の演説を行い、国会議員全員と各県連代表の投票が始まった。

この段階ではまだ、小泉氏有利との予想がテレビの大勢だった。

しかし、今回もまたメディアの予想は外れた。

まず最初に発表された高市氏の議員票は149票、1回目の投票で高市氏に加え小林氏、茂木氏に投じられた票の合計よりも多い。

事前のメディアの予想では、林氏に投じられた票は全て小泉氏に、さらに小林氏を支持する若手議員の票の一部も小泉氏に流れると見られていた。

ところが、実際には1回目で小泉氏、林氏に投票した議員の中にも2回目で高市氏に乗り換えた議員がいたということだ。

これが麻生氏の指示によるものだったのか、大差がついた党員票を見て考えを変えたのか、それはわからない。

しかし、これも自民党っぽいと言えば自民党っぽい結末である。

いずれにせよ、おおかたの予想を覆し、高市さんが女性初の自民党総裁に選出されたのである。

立憲民主党が目指す野党統一候補は実現しそうもないので、今月半ばに召集される臨時国会で高市さんが新たな総理大臣に指名されることは間違いなさそうだ。

日本で初めての女性総理。

選挙後に挨拶に立った高市さんは、「全員に馬車馬のように働いてもらう。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いていく」と党の立て直しのために全身全霊で臨むと述べた。

そして「政治とカネ」の問題で要職から外されている旧安倍派の不記載議員についても、「しっかり働いてもらう」と述べ、復権を明言したのだ。

旧安倍派は高市さんの最大の支持基盤であり、誰がどのようなポストで起用されるのか、当面の大きな注目点である

高市さんはまず、数日中に役員人事を行なってしっかり自民党内をまとめた上で、連立を組む公明党との政策すり合わせに臨むことになる。

総裁選の最中から公明党は、保守色の強い高市さんに難色を示していた。

とはいえ、安倍政権時代にも党の理念を横に置いて協力してきた経緯があるので、最終的には公明党は連立に残るだろう。

残る野党が高市自民党にどう向き合うのか?

立憲民主党はリベラルな石破さんだと違うを打ち出すのが難しかっただけに高市さんの方が戦いやすいと考えている気がするが、政権との距離は確実に遠くなった。

日本維新の会は吉村代表と個人的に仲のいい小泉氏の当選を見越して連立に前向きな発言をしていただけに、高市さんに決まり戦略の練り直しを求められるだろう。

そして国民民主党は積極財政など政策の方向性が似ているため、ガソリンの暫定税率廃止や「178万円の壁」解消でしたたかに交渉するだろうが、連立入りには慎重な姿勢だ。

高市総裁誕生を最も喜んでいるのはおそらく参政党で、やはり連立には慎重なものの保守的な政策についてはかなり心強いパートナーとなるだろう。

日本初の女性総理になることがほぼ確実な高市さん。

今月下旬には国際会議が続き、トランプ大統領の来日も調整されており、いきなり国際政治の舞台で実力が試されることになる。

トランプさんとは安倍さんの話で盛り上がりそうだが、トランプ関税の影響も懸念されていてただ仲良くなればいいというものでもない。

外交で最も懸念されるのは、中国や韓国との関係であり、靖国参拝については「適宜適切に判断する」と明言を避けた。

個人的には、高市さん本人よりも、高市総理誕生に便乗して安倍時代に我が物顔で暴言を撒き散らしていた極右インフルエンサーたちが再びネット上でのさばることである。

今回も予想を外した既存メディアへの信頼が一段と失われ、民主主義を破壊するような極端な暴論がこれ以上日本で広まらないことを願いたい。

いずれにしても、まずは保守派とされる高市さんがどのような人事を行うのか、そしてどのような政策から手をつけるのか、その手腕をじっくりと見させてもらいたいと思う。

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