<吉祥寺残日録>影が薄くなったG7サミット!韓国とオーストラリアを加えた「G9体制」を日本が主導すべき理由 #240615

イタリアで開かれていたG7サミットが閉幕した。

私が現役のテレビ記者だった時代、G7サミットは最大の政治イベントと位置付けられる光を放っていた。

当時は先進7カ国で世界のGDPの6割以上を占め、ソ連率いる共産主義陣営に対し、自由と民主主義を謳うG7の理念は明るい未来をイメージさせた。

そんなG7に欧米以外で唯一参加する日本という名誉は、政治家だけでなく日本国民にとっても経済大国のプライドをくすぐられる瞬間でもあった。

しかし、中国やインドが台頭し世界の経済バランスが変化する中で、ロシアのウクライナ侵攻やガザでの戦闘に有効な手を打てないG7の権威は目に見えて失われつつある。

今回イタリア南部のプーリア州で開かれたサミットでは、ローマ・カトリックのトップとして初めてフランシスコ教皇がG7サミットに出席したことが話題となった。

教皇はAIの軍事利用について強い危機感を抱いていて、軍事大国の首脳たちに自制を促した。

去年の広島サミットで、核兵器保有国の首脳たちを原爆資料館に案内したのに通じる部分もあるが、見方を変えれば極右政党出身であるイタリアのメローニ首相が、信仰心のあつい自身の支持者に向けたアピールとも取れる。

メローニ首相は自身の重要政策である移民問題を今回の主要議題に据えた。

日本のメディアの中にはこれに批判的な論調も散見されたが、移民問題は環境破壊や強権政治を背景としたグローバルで重要な課題である。

だから、G7の場で移民問題が討議されること自体は私に違和感はない。

ただ、メローニ首相を含む移民に寛容でない世論がヨーロッパでも強まり、先日行われた欧州議会選挙でも移民排斥と自国優先を訴える極右政党が大きく議席を伸ばしたことを考えれば、G7で移民問題が取り上げられたことは、今後自国優先の流れが強まることを予見させた。

そんなプーリア・サミットの最大の成果といえば、ロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援でG7が合意したことだ。

G7が拠出する基金を設け、ロシア凍結資産の運用収益をその返済に充てる。

アメリカが主張していた凍結資産の元本を没収する案には国際法上の懸念があるとするEU諸国の意見に対し歩み寄った形だ。

各国とも厳しい財政状況の中でウクライナ支援に対する世論の支持が弱まる中で、なんとかウクライナを支援し続ける体裁を保つことができた。

しかし、各首脳の脳裏にはウクライナ支援に消極的なトランプ前大統領の存在があったに違いない。

ウクライナが負ければEUが直接ロシアと対峙することになる。

トランプ氏が返り咲く前に、ウクライナ支援の枠組みをしっかり作っておきたかったというのが、今回の合意の背景にある。

今回のG7サミットが冴えなかった理由として、参加した首脳たちの基盤が弱いことも大いに関係している。

日本の岸田総理は政治資金問題で支持率は最低水準にあり党内基盤もガタガタだ。

イギリスのスナク首相やフランスのマクロン大統領も、ほぼ勝ち目のない選挙を決断した。

来年のG7サミットでは参加する首脳たちの顔ぶれが大幅に入れ替わる可能性が高い。

そんな中で、存在感を増しているのが今回の主役、イタリアのメローニ首相だという。

ムッソリーニの流れを汲む政党「イタリアの同胞」を率いるメローニ氏だが、単なる極右の政治家ではないと専門家は指摘する。

イタリアの保守政界を束ね、欧州議会で一定の勢力を築いてEU内で影響力を強め、独仏主導の権力構造をじわりと変える。

それが彼女の戦略であり、彼女はイギリスのサッチャー元首相のような保守本流の指導者を目指しているというのだ。

2年前、首相に就任した当初はG7の協調を乱すことが心配されたが、実際にはロシアのウクライナ侵攻に毅然と反発、中国に対しても「一帯一路」から離脱し強硬な姿勢を貫いている。

今や欧州政界の「陰の権力者」と呼ばれるまでに成長したのだという。

もしもこの秋のアメリカ大統領選挙で、トランプ氏が返り咲くことになれば、右派的な立ち位置にあるメローニ氏がヨーロッパ側のキーマンになるに違いない。

これからは彼女の動きにも注目しよう。

もう一つ気になったのは、メローニ首相が今回G7サミットの拡大会合に招待した新興国首脳の顔ぶれだ。

日本のメディアは伝えていないので正確にはわからないが、アジアから招待されたのはインドのモディ首相だけ。

そのほかは、アフリカ(アルジェリア、チュニジア、モーリタニア、ケニア)や中東(トルコ、UAE、ヨルダン)、南米(ブラジル、アルゼンチン)の首脳たち。

去年の広島サミットとはかなり異なるメンバーであり、日本で伝えられる情報を見ているだけでは国際情勢を見誤ってしまう。

招待国は議長国が決めることになっているため、メローニ首相がいかに移民問題を主要テーマにしたかったかがわかる。

G7サミットに招待されなかったことに危機感を抱いているのが韓国である。

サミット関連の報道の中で、実は私が一番興味を持ったのは14日に配信された韓国・中央日報の記事だった。

『「カナダ外してでも韓国入れろ」…拡大する「韓国G7追加」議論』

その記事の一部を引用する。

米戦略国際問題研究所(CSIS)は12日(現地時間)に公開した報告書で「G7を韓国とオーストラリアを含んだG9に拡大するべき」と提言した。両国を追加したG9体制への拡大を提案した理由は、G7の影響力の弱まりと欧州に偏重された現体制の限界と関連がある。

G7加盟国は米国・英国・ドイツ・フランス・日本・イタリア・カナダなど7カ国だ。1975年にカナダ(1976年加入)を除くG6でスタートしたこれらの国内総生産(GDP)は全世界の60%を占めた。先進国首脳の年次会議は言葉どおり「ゲームのルール」になった。しかしG7のGDP占有率は1992年66.9%にピークを迎えた後、43.4%に減少した。1970年代に3%だった中国のGDP占有率が18%に急増したためだ。

このため中国と競っている米国は未来の経済・安全保障を左右するAI(人工知能)と最先端半導体技術を保有した韓国や台湾などアジアのパートナーが切実になったが、G7は依然と1970年代経済の中心だった欧州に集中している。欧州の強い影響で欧州委員会委員長(1977年)と欧州理事会議長(2010年)まで準会員国として参加し、現在G7の加盟国9カ国中6カ国を欧州が占めている。

CSISはこれに対して「G7でアジアを代表する国はひとつ(日本)だけで開発途上国の声も排除されている」とし「このような構造ではグローバルガバナンスを先導できない」と指摘した。

引用:中央日報

この記事を読んだ時、私はハッとした。

G7に韓国とオーストラリアを加えるべきというのは数年前からの私の考えだったからだ。

G7の枠組みはもともとフランスの提案で始まったため、メンバー国がヨーロッパに偏っている。

当時は経済力でも欧州諸国は主要なプレーヤーであり妥当なチョイスだったとも言えるが、世界経済の比重が欧州からアジアに移り、ソ連に代わって中国がアメリカに対抗するもう一つの超大国に成長した今、ヨーロッパの論理が強すぎるG7体制が影響力を失うのも無理はない。

日本は長年、「アジア唯一のG7メンバー」という言葉に誇りを持ってきた。

しかし、単独では中国の脅威に対抗できない以上、日本が模索すべき道は一緒にタッグを組む仲間を集めることである。

周辺を見回せば、その候補は韓国やオーストラリア以外にない。

幸い両国のGDPはG7諸国に次ぐ規模であり、新たなメンバーを迎えるとすると、この2カ国が最も妥当だ。

戦略上インドを取り込みたいところだろうが、インドは中国・ロシアが主導する「BRICS」のメンバーでもあり、冷戦時代から非同盟運動の盟主でもあったため難しいだろう。

日本人の間には韓国に対する無意味な敵愾心があり、G7に韓国が加入することに反対する人も多いかもしれないが、韓国が熱望するG7加入を受け入れれば文在寅時代のような反日反米路線には戻りにくくなることも期待でき、結果的には日本の国益につながるというのが私の見立てだ。

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多極化する国際情勢の中で、日本の外交もこれまでの踏襲では済まない時代を迎えようとしている。

「日本は韓国より上」という意味のないプライドを捨て、超大国中国と対等に付き合える環境を共に整えることが何よりも重要になるだろう。

尹錫悦政権が誕生した今、同じ陣営に迎える一歩を踏み出さなければ、日本以上に中国や北朝鮮の脅威を感じている韓国はまた反日的な国になってしまうかもしれない。

<吉祥寺残日録>世界の注目はゼレンスキー大統領に集中!それでも広島サミットは大成功だと私は思う #230522

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