ついに絶対王者、藤井聡太八冠がタイトルを失った。
2勝2敗で迎えた叡王戦第5局。
夕方のテレビニュースでこの対戦が今日だったことを思い出した私は、急いでスマホを取り出し、久しぶりにAbemaTVの将棋中継を観戦した。

私が見始めた段階ですでに最終盤。
藤井八冠はすでに持ち時間を全て使い切り、1分将棋に突入していた。
挑戦者の伊藤匠七段も持ち時間は残り4分。
AIによる情勢判断はこの時点ではまだ伊藤七段がやや優勢といった状況だった。
お互いに時間がないため長考することもなく、どんどん駒を指し合うので見ている方は面白いが、しばらくすると藤井八冠が指した一手でAIの数値が大きく伊藤七段に傾いた。

ここから、藤井八冠の表情は曇り、指し進めるたびに情勢は不利に傾いていく。
最終盤での大逆転は藤井八冠の十八番で、これまでも何度も目にしてきた。
時間がない中で一手も間違わずに指していくことはトップ棋士でも難しく、早指しと詰め将棋が得意な藤井八冠が最終盤でこのようにどんどん不利になっていく将棋はこれまであまり見たことがなかった。
そして、午後6時半ごろ藤井八冠がついに投了、伊藤七段が初のタイトル叡王を獲得した。
藤井聡太さんは、2020年に史上最年少で初タイトルの棋聖を獲得して以来、一度もタイトルを失うことなく八冠を達成、その後もタイトル戦の連勝記録を22に伸ばしていた。
この間、伊藤匠七段とも今年の竜王戦と棋王戦で挑戦を受けたが、どちらも藤井八冠がストレート勝ちを収めており、向かうところ敵なしの「藤井一強時代」が当分続くと見られていた。
藤井さんの八冠独占はおよそ8ヶ月、254日でひとまず終わることとなった。

七冠となった藤井さんを破った伊藤匠叡王は、藤井七冠と同学年の21歳。
正確にいうと、藤井七冠よりも3ヶ月ほど年下である。
2020年に四段に昇進し、当時の最年少だった藤井七冠に代わってしばらくの間、最年少棋士であった。
ちなみに、現在の最年少棋士は2022年10月に四段昇進を果たした3歳年下の藤本渚五段。
去年、伊藤叡王と藤本五段が共に51勝を挙げ、将棋界での年間勝利数でトップに立ったのだそうだ。
私が知らぬ間に、藤井七冠のライバルが着実に成長していたというわけだ。
21歳8ヶ月で初タイトルを獲得した伊藤匠叡王、史上8番目の若さだという。
AIを駆使する新世代の棋士たちが次々と登場することで、将棋界は一層面白くなるだろう。
藤井七冠がどんなにチャーミングでもライバルがいなくては飽きてしまう。
藤井くんが勝ってもニュースじゃない、藤井くんが負けたらニュースなのだ。
そういう意味では、今日は大きなニュースが飛び込んできた一日だった。
対戦終了直後のNHKニュースが、「藤井敗れる」をトップニュースで扱わなかったのは、編集長のセンスの無さと言わざるを得ないと私は思うのだ。