あとひと月で、平成が終わる。
井の頭公園に咲く満開の桜とそれを見に集まった大勢の人を眺めながら、日曜の午後、私なりに平成を振り返っている。
平成は、「停滞の時代」だったという人がいる。
「日本が後退した時代」だったという人もいる。
その根拠とされるのが、世界のトップ企業の時価総額ランキングだ。確かに、平成元年、すなわち1989年ごろ、日本企業がランキング上位を占めていた。だが、その当時はバブル絶頂で日本企業の株価は水増しされていた。
当時の日本人は、増えたお金で土地を買いあさった。他に使い道を知らなかったからだ。
あの頃の日本人は「浅ましく」、「下品」だった。要するに、民度が低かったのだ。
私は、平成の31年間は日本が成熟したいい時代だったと思っている。
今の若者はおとなしくなったと嘆く人がいるが、私はある意味、日本社会が成熟し、日本人が30年前よりも大人になったのだと前向きに評価している。
自分に必要のない商品を買わなくなった。
若者が車を持たず、都心で暮らすようになったのは、時代に即した合理的な判断かもしれない。物を所有することに価値を置く時代は終わり、より自分に必要な心地よい商品を厳選して買うようになった。
「見栄」という言葉も昔ほど聞かなくなった。
無理してまで自分が必要でない物を買わなくなった。買い方もネットを駆使してより安く手に入れるようになる。新品にこだわらず、中古でもいい物、信頼できるものを見つけることができる仕組みができた。
日銀がいくら金融緩和しても、バブルのような物価高騰が起きないのは、社会がそれだけ進化したからだ。
私はといえば、先日購入した4K有機ELテレビでYouTubeを見るようになった。
最近流行りのいわゆるユーチューバーものではなく、4Kや8Kで撮影された世界各地の美しい映像をただただ環境ビデオのように流しておくのだ。
かつて訪れた懐かしい場所も登場する。バンコクやシンガポールなどは随分変わってしまった。私が訪れたのは昭和の終わり。この30年で東南アジアの国々はかなり発展した。
まだ行ったことのない国や街もいっぱい見られる。次は、あそこへ行こう、そこも行きたい、映像を見ながら旅の行き先を探すこともできる。
こうした映像を見ながら、思った。
30年前、すなわち平成の初めに比べて、世界は格段に近くなった、と・・・。
平成元年、1989年にベルリンの壁が崩壊した。その頃、社会主義諸国を旅行することは簡単なことではなかった。ビザを取るためには相手国からの招待状が必要で、ソ連や中国に観光に行く日本人はほとんどいなかった。
アフリカや中南米でも各地で戦争が続いていて、航空券も今とは比べ物にならないほど高額だった。
あれから30年、今や日本のパスポートを持っていれば、ビザなしで190カ国に行ける。この30年間の変化は、私のようなかつて「ビザ取りが趣味」だった人間からすれば信じられないことだ。
これだけ見ても、平成という時代がいかに平和な良い時代だったかがわかる。
人類の歴史は、戦争の歴史だ。だから、平成という時代は、後世の歴史教育ではあまり扱われないかもしれない。
でも、平成の時代に生きた私たちは、その平和の価値を自覚すべきだ。
そして平成はインターネットが生まれた時代をして記憶されるだろう。ひょっとすると、まだ人類がコンピューターを制御できていた「古き良き時代」として後世の人々が羨ましがるかもしれない。
私たちは、人類の歴史上、相対的にはとても恵まれた30年間を生きたのだ。
それ以上望むのは、贅沢というもの。
平成という時代に感謝し、次の時代がさらに良い時代になるようみんなで努力して行きたいと思う。
30年前、わたしは初めて中国を旅行しました。当時、百円ライターをたくさん持って行ったら、ガイドさんに喜ばれました。あれから、中国は大きく変わりました。あの後、日本は停滞を始め、中国は経済発展を遂げ、日本を追い抜くことになりました。30年で本当に時代が変化したなと思います。