1泊2日の小豆島旅行から戻り、再び朝から農作業に取り組む。
夜明けとともに、木製のレーキ一本を持ってブドウ畑へ。
畑を覆い尽くした巨大雑草をなぎ倒す作業が、先日半分までで中断していたのでその続きである。
ブドウ棚の高さを超えるセイタカアワダチソウやヒメムカシヨモギを片っ端から押し倒していく。
ブドウ棚のあちらこちらにはジョロウグモが巣を張っていて、ついでにそれらも始末して回る。
厄介なのは、ブドウ棚の高さが伯母の身長に合わせて作ってあるために、縦横に走る針金が私の顔の高さにあたり、終始中腰での作業を強いられることだ。
それでもいざ作業を始めると、何も考えることもなく、目の前の雑草を力づくでなぎ倒すのみ。
ただ黙々と単純作業を繰り返しながら、「戦争やテロって、きっとこういう心理状態なのだろうな」などと思う。
生物の命に本来優劣はないはずなのに、人間様にとって邪魔なものを「雑草」とか「害虫」と呼び、問答無用で抹殺することが許されるわけだ。
「雑草」や「害虫」とレッテルを貼ることにより、それらを抹殺する罪悪感は消えてなくなる。
花壇の花をめちゃくちゃにしたり、誰かが大切にしているペットを殺すのとは全然違い、「雑草」に対する大量虐殺は正当化され、むしろ称賛される行為となるのだ。
当たり前のようで、本当は身勝手な感じもする。
そうして多少見栄えを良くしたブドウ畑を近所の人に見てもらった。
その人はサラリーマンを辞めて本格的に家業を継いで農業に取り組もうとしている。
私がうちの畑を利用してくれる人を探しているという話をしたところ、興味を示してくれたのだ。
私は大小4カ所の畑に案内し、大まかな広さなどを伝えた。
その場では結論が出ず、弟さんとも相談して近日中に借りるかどうかの結論をもらえることになった。
もしいくつかでも耕作放棄地となっている畑を使ってくれる人が見つかれば、私の負担は確実に軽減されるのだが・・・果たしてどうだろう?
そんな試行錯誤の日々の中で、頼れる新兵器を手に入れた。
ホンダのミニ耕うん機「ピアンタ FV200」。
ネットで見つけホームセンターで衝動買いしてしまった。
段ボール箱の中から取り出すと、こんな形。
長さ78cm、高さ53cmで小型車の荷台にも載せることが可能なコンパクトなボディだ。
重量も20kgと耕耘機としては破格の軽さで、両手で持ち運ぶこともできる。
ハンドルを伸ばすと、それなりに耕耘機の形になる。
土を耕す刃の部分ローターを守る保護ケースや移動のための車輪も付いているが、実際に畑を耕す際にはこれらは取り外すことになるようだ。
そして「ピアンタ」の最大の特徴は、燃料が石油ではなくガスコンロで使用するカセットガスだということである。
耕耘機を使うたびに燃料を入れたり抜いたりという手間がなく、使う時にガスボンベを装着し終わったら外すという手軽さは家庭でお鍋をする時と同じであり、その手軽さが私のような初心者にはピッタリだと思ったのだ。
本来はメーカー推奨の「東邦金属工業」製のカセットガスを使うべきらしいのだが、私が購入したホームセンターでは取り扱いがなく、店の担当者は他のお客さんも普通のイワタニのボンベなどを使っていると教えてくれた。
しかもお店のスタッフさんが試運転に使用していたのは、イワタニよりもさらに安い「クッキングファイヤー」という廉価版で、3本セットで275円という安さに惹かれて私もそれを購入した。
カセットボンベを耕耘機のこの部分にセットするだけ。
あとは、①燃料コックレバーを「出」にして、②エンジンスイッチを「運転」に合わせて、③始動グリップを引っ張るだけでエンジンがスタートする。
そしてハンドル右手にあるスロットルレバーを握るとローターが回転して耕耘を始め、レバーを離すと回転が止まるというシンプルな作りだ。
これなら私にも扱えそうな気がした。
手始めに耕してみたのは家の入り口にあたる荒れ放題の花壇。
伯母が仏壇に供える花などを育てていたのだが、今はドクダミが支配する荒れ野と化していた。
ちなみに、写真に写っている竹の飾りは秋祭りの時に近所の人たちが立てたものだ。
まずは備中鍬で地下に張り巡らされたドクダミの根を掘り出し、地上を覆っていた植物の蔓や葉を取り除く。
そして恐る恐るスロットルレバーを握ると、「ピアンタ」が突然飛び跳ねた。
このところ岡山は晴天続きでほとんど雨が降っていないため、地面がカチコチになっているためのようだ。
それでもミニ耕耘機を侮るなかれ。
10分ほど「ピアンタ」で行ったり来たりを繰り返していると、花壇のかなり深いところまで土がほぐれて柔らかくなった。
地下に張り巡らされていたドクダミなどの根っこも粉砕され、地中に埋まっていた石もローターに当たって地表に浮き上がってくるので、簡単に見つけて花壇の外に排除することができる。
こいつは、想像していたよりもずっと有能である。
私が鍬で数日頑張っても、こうふかふかにはならなかっただろう。
妻は喜んで早速園芸用の肥料を撒いた。
再び耕耘機を動かして、肥料を土に混ぜ込んでいく。
丁寧に仕事をするのなら、土の中に大量に含まれている植物の根をふるいで濾し取ってきれいにするのだろうがそこは私も妻もいい加減なところだ。
そうしてかなりきれいになった花壇に妻はミックスシードの種を撒いた。
どんな花が咲くのか妻にもわからないという。
ドクダミなど既存の植物の種も地中にはたくさん残っているだろうし、来春この場所にどんな花が咲くのか、ちょっとした理科の実験のようで楽しみである。
初仕事を終えた「ピアンタ」のローターにはびっしりとドクダミの根っこが絡み付いていた。
エンジンが冷めるのを待って、丁寧に取り除いてやる。
ピカピカだった「ピアンタ」の車体も一回作業をしただけでかなり土埃で汚れてしまった。
それが耕耘機の宿命なのだろう。
この調子なら、草刈機と耕耘機で多少の畑仕事はできるかもしれない。
そんな希望が湧いてきたちょっと前向きな初体験だった。
東京との二拠点生活を続けるならば、道具に投資して時間を節約することも重要だろう。
ガスボンベで動くミニ耕耘機「ピアンタ」。
10万円の価値は十分あると感じた。
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