岡山での農作業を終えて、吉祥寺に戻ってきた。
ブドウ作りも今年で3年目。
最初の頃のドキドキ感はなくなったが、それでも畑仕事をしていると未知の出来事にいろいろとぶつかり飽きることはない。
今年の大きな変化といえば、妻が私以上に岡山での田舎暮らしに前のめりになってきたことだ。
吉祥寺ではあれほど悩まされていた頭痛が、岡山では嘘のように一度も起きなかった。
夜もよく眠れているらしい。

愛用の剪定バサミを手に薮を切り拓いたり、畑に生えた雑草をむしっている妻は、驚くほど楽しそうだ。
そして今年見事に咲いたミモザの枝を切ってきて、ドライフラワーづくりなどを楽しんでいる。
もともと私以上に土いじりが好きだったものの、こんなに広い農地はとても管理できないと、当初はネガティブなことばかり言っていたのが嘘のように、今では「ずっと岡山で暮らしたい」と口にするほど田舎暮らしにハマってしまったようである。

確かに、田舎には東京では味わえない楽しみがある。
2ヶ月ほど留守にしていても、裏の畑では1月に蒔いたコカブやラディッシュが育っている。
すでに一番美味しい時期は過ぎているとはいえ、十分食べられる。

去年の秋にタネから育てたキャベツは、結球しないまま花を咲かせようとしていた。
こいつが食べられるのかどうかは不明だが、スーパーでは決してお目にかかれないありのままのキャベツがそこにある。

レタスも冬を生き延びて、外側の葉はしおれてきているものの、内側はまだ食べられそうだ。
プロが育てた均一な野菜と違って、我が家の畑ではそれぞれの野菜が食べ物ではなく、生き物として育っている。
畑の風景も去年とは違い、岡山の家に戻ったらすぐに畑の様子をひと回りチェックしたくなる。

広い畑では、春の草に囲まれて九条ネギが立派に育っていた。
量が少ないので、摘んでしまえばすぐに食べ尽くす量だが、無理に増やすつもりはない。
いつかの気まぐれで植えた作物が忘れた頃に収穫できる、これが私が名付けた「のんびり村」の農法なのだ。

そんな気まぐれに、今月新たな仲間が増えた。
まずはレモン。
たまたまホームセンターで苗木を見つけ、衝動的に購入した。
「リスボンレモン」という日本で最もポピュラーな品種のようで、1518円とそこそこ高い。

もう1本、「マンザニロ」というオリーブの苗木も買ってきた。
小豆島で買ったオリーブの苗木がまだ生きているので、その近くに植えることにする。
オリーブは2本以上ないと実をつけない習性を持つ。
マンザニロはスペイン原産で、大きな果実が特徴だという。
お墓の近くの小さな畑は時々強烈な西風が吹くのでちょっと心配ではあるが、成長して実をつけてくれれば、オリーブの塩漬けでも作ってみよう。

そして今回植えた苗木の中で、一番期待値が高いのが梅だ。
もともと畑に梅の木を植えたくてホームセンターに行ったのだが、品切れで買えず、代わりに梨やレモン、オリーブの苗木を買うことになった。
何度かホームセンターに行くたびに苗木のコーナーをチェックして、ようやく2種類の苗木をゲットした。
こちらの小さな白い花をつけている苗木は「青軸」という品種で987円。
青軸は花も実も楽しめるというお得な品種だそうで、梅干しにも梅酒にも向いているらしい。

もう1本は「小梅 竜峡」。
こちらは花も枝もないツルッとした苗木で、値段は同じく987円だった。
竜峡は、カリカリ梅の原料となる小梅で、花粉が多いため受粉樹として優れているという。
梅もオリーブ同様、1本では実をつけない品種が多いため、この組み合わせでホームセンターで売られていたのだろう。
実際に実が収穫できるのは3〜4年先の話ではあるが、耕作放棄地だった畑が少しずつ果樹園へと変貌する様を眺めるのは、なんともいえず楽しいものである。

そして今日、最後の仕事として、春植えのジャガイモを植えてきた。
品種は「キタアカリ」。
これまで何回か作ってきたジャガイモだ。
最初は参考書を片手にマニュアル通りに植え付けを行っていたが、今やほとんど我流になってきた。
今年の畑はかなり水分の多い粘土質の土壌なので、うまく育ってくれるかちょっと心配している。
だから、畝を高めにして周りにスコップで溝を掘り、少しでも水捌けをよくしようと工夫してみた。

私がジャガイモの植え付けをしている間に、妻がタマネギとニンニクの畝の草むしりと追肥をやってくれた。
私が力仕事を担当し、妻が面倒な細々とした作業をやってくれる。
二人の役割分担もはっきりしてきて、3年目の「のんびり村」、まずは順調なスタートを切ったようだ。