我が家の畑には4本の桃の木がある。
おそらく伯母が趣味で植えたものだが、去年は虫たちにやられて全く実が採れなかった。
岡山は桃太郎でも知られるように、桃は昔からブドウと並ぶ岡山の特産品だった。
だが、害虫だけでなく病気にも弱く、さらには獣害にも注意しなければならないとてもデリケートな果物である。
私が参考にしている「おいしい果樹の育て方」という本には、次にように書かれていた。
人間も大好きなモモは虫たちの好物でもあり、病害虫被害の多い果樹です。薬剤をあまり使いたくないときは、害虫発生が増える前に収穫できる早生種を選ぶとよいでしょう。
引用:おいしい果樹の育て方
我が家の桃は一体なんの品種なのか、今となっては確認しようもない。
まずは放置していた桃の木に肥料を与えることから始めた。
通常ならば、桃の収穫が全て終わった9月ごろに「礼肥」を行うもののようだが、もう12月。
すでに根の活動は止まっていて意味がないのかもしれないが、とりあえず木の大きさに合わせて溝を掘り、ナタネ油粕を適当に撒いておいた。
本には3月に元肥を与えると書いてあるので、また春頃肥料を入れてみよう。
そしてちょうど今、桃の木が休眠中である冬の季節に行うのが冬季剪定だ。
桃の枝をよく見ると、すでに枝に芽ができていることがわかる。
このうち、先端の方にできるのが葉芽で、花芽は枝の全体にできる。
桃の場合、冬の間に葉芽を少し残して先端を切り返す剪定を行う必要があるという。
我が家の桃の木はずっと放置したままだったので、枝が混み合い、それが余計に病害虫被害を拡大させているとも考えられる。
だから妻は、この機会に枝の数を大幅に減らし、特に高い枝を間引いて作業しやすい環境にすることを主張した。
私も基本的には妻の意見に賛成ではあるが、実際に桃の木を前にすると、どの枝を切ればいいのか正直よくわからなかった。
まずは明らかに枯れて芽がついていない枝を全て根元から切り取る。
続いて、上向きの強い枝も根元から切った。
桃の木が高くなりすぎるのを防ぐためだ。
さらに枝が混み合っている場所は、芽のつき方などを見ながら大胆に枝を間引きした。
妻の指示で高く伸びた太い枝を何本も切った。
切り口から病気になるのを防ぐという癒合剤「トップジンM ペースト」というのも買ってきて、大きな切り口に塗っておいた。
私などは、無知なままにあまりに手荒なことをすると木が枯れてしまうんじゃないかと心配だが、こういう場合、何かと心配性な妻の方が圧倒的に大胆で、「これ切って、こっちも切って」というので私はドキマギしながらチェーンソーで太い枝を切り落としたのだ。
正直、正解が全くわからない中で勘を頼りに「えいや!」という感じである。
そして最後に、残した枝の先端部を少しだけ切る。
先端を切り返すことで樹勢を回復させる効果があるのだそうだ。
しかしまだどの枝を残せばいいのか、どこで切り返しをすればいいのか、ネットで調べてもよくわからない。
それでも妻と2人で、ああでもないこうでもないとわからない同士で知恵を出し合い、なんとか剪定を終えた。
桃の木はかなり枝の数を減らし、すっきりしたのは間違いない。
問題はこれでちゃんと花が咲くのか、そしてちゃんと実がなるのかという点である。
もう切ってしまった後であれこれ心配しても仕方がない。
腹を括って、春の訪れを楽しみに待つとしよう。
桃は私たち夫婦ももちろん、息子たちも全員が大好きな果物だった。
どうせなら、みんなが喜んでくれる美味しい桃を作れるようになりたいと思っている。
もしも上手に桃が育てられるようになったら、もっと広い畑に苗木を植えて、一から桃づくりができればいいなと夢は広がる一方である。
まずは来年、1個でもいいから食べられる桃が採れますように、神様にお祈りでもしよう。