<ご当地グルメ>神戸・新長田「お好み焼 青森」の「すじそばめし」

神戸で震災遺構を巡ってみようと思い立ち、目的地の一つに選んだのが長田区だった。

ハイカラなイメージの神戸だが、西部の長田区は庶民の町、阪神淡路大震災ではたくさんの木造家屋が焼け一面焼け野原になってしまった。

そんな長田区発祥のB級グルメが「そばめし」。

せっかくなら、本場の「そばめし」を食べてみたいと思った。

震災遺構めぐりの途中訪れたのは、「そばめし」を最初にメニューに載せたお好み焼き屋「青森」。

新長田の駅から10分足らず歩いた路地裏に佇む地味なお店である。

とはいえ、「そばめし」の聖地として知られる有名店なので、開店前に行って少し待つことにした。

私の前には女性客が一人だけ、店が開く11時半が近づくと近づくと次第に私の後ろに列が伸びていく。

開店と同時に席は瞬く間に埋まった。

鉄板を囲むようにカウンター席が9つ、壁際にテーブルがあって、奥に順番を待つ人たちのスペースがある。

まあ、昔ながらのお好み焼きのお店という感じだ。

私はカウンターの一番奥に陣取った。

ここなら、そばめしを作る過程をつぶさに観察することができるだろう。

このお店の創業は1957年。

私とほぼ同じ時代を生きてきた年季が入った店内は、どこか懐かしさを感じる居心地の良さがあった。

壁に掲げられたメニューを見る。

大半はお好み焼きのようだが、実にバラエティー豊かだ。

さて、お目当てのそばめしは?

「すじそばめし」「チャンポンすじそばめし」

にわか勉強で知った「ぼっかけ」の文字がないので聞いてみると、「すじそばめし」がそれだという。

お店は、親子かなあと思われるお母さんと息子で営まれている。

「青森」という店名は創業者の苗字で、その後も家族経営を続けて今は三代目だという。

お母さんはお好み焼きを焼き、息子の方がそばめしを作り始めた。

息子が取り出した鍋の中に入っていたのが「ぼっかけ」だと思われる。

「ぼっかけ」とは、牛スジとコンニャクを甘辛く煮込んだもので、ご飯やうどんにぶっかけて食べるこの界隈の家庭料理だったそうだが、これがそばめしと相性がいいと聞く。

鉄板の上に、焼きそばの麺とご飯が用意された。

そばめしの始まりは、今の店主のおばあさんが焼きそばを作っていた時に、お客さんから自分の弁当の冷や飯を一緒に炒めて欲しいと頼まれたことだったという。

こうして長田の街で生まれたローカルフードが一気に知られるようになったのは、阪神淡路大震災。

「青森」も被災したが数ヶ月で営業を再開し、長田復興のシンボルとして全国に知られるようになった。

そばめしという名前は知っていたが、食べるのは初めてである。

その作り方はいたって簡単で、2枚のヘラを使ってそばを細かく刻みながら冷飯と一緒に炒めていく。

ただ、その手さばきは見事なもので、それ自体が一種のエンターテインメントになっている。

あの「ぼっかけ」やキャベツを加えて素早く均一に混ぜ合わせる。

そこにまずウスターソース、続いてとんかつソースをかけてさらに炒める。

油を一切使わないのがこの店のこだわりだ。

常連さんらしき客が勝手に冷蔵庫からビールを持っていくのを見て、私も「ビールいいですか」と断ったうえで、瓶ビールを飲みながらそばめしができるのを待った。

そばめしとビール、どう考えても相性が悪いはずがない。

入店から10分ほどで私のそばめしができあがった。

お好みで追加するソースは甘口か辛口かを選び、青のりと味の素と一緒に目の前に置かれた。

希望すれば皿やスプーンを使えるが、常連さんはそんなものは使わず鉄板から直接小さなヘラを使って食べる。

私も一応、岡山のお好み焼き屋ではそういう食べ方をしていた経験者なので、地元の食べ方に挑戦する。

甘口ソースの方が一般的だというので、私も甘口ソースを追加でかけて、青のりと味の素も少しずつかけてみる。

妻が嫌いなので、味の素を使うのはずいぶん久しぶりだ。

これで、私のそばめし完成である。

小さなヘラですくって口に運ぶ。

お好み焼きと違って、上手に食べないと端からポロポロとこぼれてしまう。

何度か失敗して、自己流で真ん中からではなく半分づつ口に入れるようになった。

まあ、そんなことはどうでもいい。

問題は味。

これが想像していたよりも遥かに上、めちゃくちゃ美味かったのである。

やはりビールとの相性もバッチリで、そばめしは私の中では久々の大ヒットとなった。

高級な料理よりも私にはB級グルメの方が口に合うようである。

焼きそばと冷や飯を一緒に炒めれば自分でも簡単に作れそうだし、冷凍食品でも売られているようだが、わざわざ神戸の長田まで来て発祥のお店で食べることに価値がある。

そして、私が食べ終わって店を出た正午になっても、まだ一巡目が作り終わっておらず、開店と同時に入店できた客でも順番で作るので30分以上待たなければならないようだ。

だから少し早めに行って開店を待つのが正解だと思う。

それだけの価値がある美味しくて百点満点の「そばめし」ランチであった。

食べログ評価3.67、私の評価は5.00。

「お好み焼 青森」
電話:078-611-1701(予約不可)
営業時間:11:30-14:30/17:00-21:00
定休日:火曜

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