深圳旅行の計画を立てていて、絶対に見たいと思ったものがある。個人的には、今回の旅行のハイライトと言っても間違いなかった。
それは、「深圳ライトショー」。
こんな写真がネットにアップされていたのだ。
これ、すごくないですか?
30棟とも40棟とも言われる高層ビルをスクリーンに見立て、ビル外壁に取り付けられたLEDが連動して一斉に光り物語を映し出す壮大なライトショー。中国以外、いや深圳以外では絶対に見られない驚異のLEDライトショーだという。
これはぜひ、見たいと思った。
ネット情報によると、このライトショーは9月末から始まり、12月31日までやっているという。私が深圳に入るのは29日、深圳で2泊する。できれば2回見たいと思っていた。
29日の夕方、華強北駅近くのホテルにチェックインした私は、ライトダウンを2枚重ねし、三脚をリュックに放り込んでそそくさと地下鉄に乗り込んだ。
目指す駅は「市民中心」。
地上に上がると、思わず期待に胸が高鳴った。この歳になると、なかなかないことだ。
「40周年」というオブジェの向こう側には高層ビルが林立している。
ひときわ高いビルは「平安国際金融中心」。地上115階建、中国で2番目、世界でも4番目の高さを誇る。
周囲のビルも60階建ぐらいあるが、小さく見えてしまう。
振り向くと広場の向こうに、黄色とオレンジの足を持つ巨大な翼のような建造物が立っている。
これが駅名にもなっている「市民中心」。深圳市の公共施設のようだ。
階段を上がると、市民中心の巨大さに圧倒される。
中国の建物はどれもでかいが、こいつは本当に巨大建造物としか言いようがない。
そして、ここで再び振り向くと・・・
ここはまさにベストポジションだった。
50−60階建の高層ビルが左右に別れて文字通り林のように立っている。写真では写りきらないが、私の左右、すなわち市民中心の左右にも同じくらいの高さの高層ビルが並んでいる。
ここは世界でも有数の超高層ビル地帯なのだ。そして、このビル群が一斉に連動して映像を映し出すと考えるだけで、商売柄か鳥肌が立つ思いだ。
ネットの情報ではライトショーは一晩に2回、19時と20時にあるという。私が市民中心についたのは19時半。場所どりをして三脚を立てバッチリ防寒をして、20時のショー開始を待つ。
すると、一人の中国人が通りすがりに手を振りながら「XXX メイヨー」と声をかけてきた。
おじさんが何を言っているのかはわからないが、中国語で「メイヨー 没有」というのは「ない」という意味だということは知っていた。嫌な予感がする。
それでも、そのまま20時を待つ。私以外にも大勢がビルの方を向いて待っていた。
突然、市民広場に設置されていた6基のLEDビジョンに「通知」という文字が映し出された。中国語だけなので、正確なことはわからないが、漢字から意味を想像することはできる。
「2019年の元旦から春節までの期間、市民広場で新年の大型イベントがあり、市民の安全を確保し活動を順調に行うため、2018年12月28日の晩から中心区の「灯光表演」をしばらく停止し、春節後に再び再開する」
そんな意味だろうと理解した。
何ということだ。28日といえば昨日だ。28日まであったのか、28日から中止になったのかはわからないが、どうやらおじさんが言った通り、もうライトショーは見られないと考えた方が良さそうだ。
20時になったが、何も起こらない。それでもまだ、諦めきれずその場を去りがたい。
未練がましく、平安国際金融中心の超高層ビルに映し出される文字を撮影した。
どうやら「寒冷注意報が発令されているので、防寒対策をして火気の取り扱いに注意せよ」というような意味の注意書きのようだ。
どうやらこの日から深圳には寒波がやってきてらしい。最低気温は7度まで下がった。数日前までは25度前後で推移していたらしいから、深圳の人たちにとっては異常寒波なのだ。
何から何まで、本当にツイテいない。
10分ほど粘ってみたが、ショーは始まる気配すらない。少しずつ諦めた人々が立ち去っていく。
私も未練がましく、何度も周囲を見回しながら地下鉄駅へ戻った。
本当に、がっかりだった。
翌30日の夕方。無駄だとは思いながら、一応確認のため市民中心に行ってみることにした。
本当に、諦めきれない。
市民中心駅に着いたのは、午後6時45分ごろだった。
午後7時になっても、何も始まらなければ諦めてどこかで夕食を食べようと決めていた。
人が少ない通路を抜けて、地上に上がる。
すると・・・
何とビルが光っているではないか。
慌ててビデオを回す。三脚など立てている時間はない。
右側のビルも、左側のビルも連動して青く光っている。
写真も撮っておこうと思ったが、よほど慌てていたのだろう。
ボケボケだ。
まだ7時になっていない。何で、今やってるんだ?
縞模様に彩られる高層ビル群。
これはやはり、すごかった。
この模様、半導体チップの配線のようにも見える。
さすが、中国のシリコンバレーだ。
正面のビルだけではない。
市民広場を取り囲む、左右の高層ビルも連動して青く光っている。
青い光に取り囲まれた不思議な感覚。
やった! とにかく念願の「深圳ライトショー」を見ることができたのだ。
撮影を始めて2分足らず。突然、ライトショーは終わった。
興奮していた私は、一瞬何が起きたのか理解できなかった。
いきなり水をぶっかけられたような衝撃。キョトンとして、あたりを見渡す。
「あれは一体、何だったんだ?」
地下鉄駅の出口で必死に撮影していた私は、市民中心のベストポジションに移動してみた。
集まっていた人たちが、思い思いに立ち去っている。
今日は、時間が早まったのか?
それとも、お正月イベントの予行演習だったのか?
中国語のわからない私には、今でも理解できていない。
そして、広場周囲に設置されているLEDビジョンには前日同様の「通知」が映し出されていた。
言葉が理解できない外国人は「情報弱者」であるということを、久しぶりに痛感する。
それでも、ちょっとだけ深圳のライトショーの圧倒的な光景を目撃できたので、今回はこれで満足しよう。また、機会があれば見にきたいと思う。
規制が厳しい日本では、絶対に見ることのできない圧巻のパフォーマンスであった。