2021年のテーマとして掲げた「井の頭公園の植物」観察。
葉っぱが落ちる冬は、樹皮や樹形など普段気にならない特徴が目につく季節だ。
そこで1月の最後は、この季節に公園を歩いていて気がついた「枝先に特徴がある樹木」を2つ・・・。
「コブシ(辛夷)」

変化に乏しい1月の公園で、私が一番気になった樹木がこれ。
井の頭池の畔にポツリポツリと植えられていて、枝先にたくさんの蕾をつけている。
「コブシ=辛夷」だった。

中でも、池の西側にあるコブシは、かなり大きく育っていて、長い枝をのびのびと伸ばしている。
その白い樹皮も特徴的で、私でも見分けられるほど他の樹木とは明らかに違う。

グリーンアドベンチャーの案内板によれば、特徴はこうだ。
『早春を告げる花として、葉より早く小枝の先に6枚の花弁の白い花を咲かせる』
確かに、コブシの白い大きな花は、毎年桜より先に公園を彩るので、花の季節には私でもはっきりとコブシを認識できるが、これまでその蕾に注目したことはなかった。

逆光で撮影すると、蕾を覆う白い毛がよく見える。
猫柳のような可愛らしい蕾だが、この蕾を乾燥したものは漢方薬の「辛夷(しんい)」として使われてきた。
鼻炎の緩和や鎮痛剤としての効能があるという。

コブシの樹皮は、とてもきめが細かく白い。
木質は硬くて加工しにくいため、あまり建材向きではないそうだ。

コブシは樹高8〜25mというので、井の頭弁財天を望む池の畔に立つコブシの木はかなりの巨木と言っていいだろう。
花が咲いたらまた、このブログで紹介するとしよう。
「コブシ」 分類:モクレン科モクレン属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:3〜4月 実がなる時期:9〜10月
井の頭公園の「コブシ」はここ!

「ハゼノキ(櫨の木)」

マンションをバックに遊歩道の上に迫り出したこの樹木。
背もさほど高くなく、色も普通で地味な木なのだが、私の目に止まったの理由はこれだ。

枝の先端がなぜか全部、上に向かって反り上がっている。
そしてよく見ると、枝の先っぽに小さな蕾がついているようだ。

名札には「ハゼノキ」と書かれていた。
ウルシ科の植物で、こんな特徴があるらしい。
『暖地の山野に多い有用植物。果実から木蝋をとりました。秋に紅葉します』
英語名は「Wax Tree」、やはりこの樹木はロウの材料として珍重された。
日本には室町から江戸時代に琉球から蝋づくりの材料として伝わり、関東以西で盛んに栽培され、それが野生化したという。

樹皮は網の目状で至って地味だが、材木の芯の部分は鮮やかな黄色だという。
その黄色い色素は、工芸品としてではなく、染物にも利用され、天皇が儀式の際に着る「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」にも用いられる。
確かに、「黄櫨染」の櫨は「ハゼ」という字なのだ。

単に、枝先が上を向いていることで興味を持ったが、調べてみると天皇にもつながる日本文化にとって重要な樹木だということがわかった。
人は見かけではわからないというが、樹木も見た目が地味でもいろんな役割を担っているのだ。
蝋の原料となる実は9〜10月ごろにつくというので、覚えていればまたこのブログで紹介したいと思う。
「ハゼノキ」 分類:ウルシ科ウルシ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:5〜6月 実がなる時期:9〜11月
井の頭公園の「ハゼノキ」はここ!

11件のコメント 追加