岡山から吉祥寺に戻ってまだ数日しか経っていないが、今週、東京ではいろんなことが起きた。

19日の水曜日には、南岸低気圧の影響で東京都心でも本格的な雪が降った。
この冬、何度か雪の予報が出ていたもののほとんどは空振りだってけれど、あまり大騒ぎしていなかった今回は事前の予報を覆す勢いの雪だった。
これだけコンピューターが発達しても、まだまだ春の天気予報は難しいと見える。

そんな雪の東京で注目を集めたのが、大谷翔平率いるロサンゼルス・ドジャースのMLB開幕戦。
ドジャースには昨年からチームに加わった山本由伸に加えて、今年から佐々木朗希が新戦力として加入した。
対戦相手は、今永昇太と鈴木誠也がいるシカゴ・カブスだ。
本国アメリカでは、フットボールやバスケットに比べて人気が低迷していると言われるMLB。
異常なほどに盛り上がる大谷人気に目をつけた野球界が、アジアでのビジネス拡大を狙って東京での開幕戦を企画したと言われる。

18日の日本時間午後7時から始まった開幕戦では、カブス今永、ドジャース山本が先発。
メジャーリーグの開幕戦で日本人投手2人が先発するのは、もちろん史上初めてのことである。
1回表、いきなり大谷との対決に臨んだ今永は、いつも通りの落ち着いた投球で昨年のMVP大谷翔平を内野ゴロに打ち取った。
その後も安定した投球を続けた今永は、4つの四球を許しながらもドジャース打線を4回までノーヒットに抑え、無失点で降板する。
まだシーズンが始まったばかりで、メジャーらしい厳しい球数制限が守られていた。

一方の山本由伸。
どちらかと言えばおとなしい彼が珍しく初回から闘志を表に表し、150キロ台後半のストレートをビシビシと投げ込む。
得意のスプリットも低めに決まり、日本人投手同士の息詰まる投手戦となった。
山本は2回に長打を許して先制を許すも、その後は立ち直り、結局5回1失点で勝ち投手となる。

そして、主役の大谷翔平は今永には抑えられたものの、5回リリーフ投手からチーム初のヒットを放つと、それまで沈黙していたドジャース打線がつながりあっという間に3点を取って逆転した。
東京シリーズでは、大谷に続くベッツ、フリーマンが共に体調不良で欠場しただけに、大谷の存在が一段と大きく頼もしく感じられる。
アメリカに渡って8年目。
大谷翔平は名実ともにメジャーリーグの人気を背負う象徴的な選手になったのだ。

第2戦には、今シーズンからドジャース入りした佐々木朗希が先発した。
彼にとってこの試合が記念すべきメジャーデビューとなる。
初回は鈴木誠也から三振を奪うなど、160キロの速球を中心に三者凡退で抑え上々の立ち上がりを見せる。
しかし2回、3回と変化球の制球が乱れ、3回までに5つの四死球を与えて押し出しで1点を献上。
佐々木にとっては、少しほろ苦いデビュー戦となった。

それでも試合は、大谷が第1号のホームランを放つなど、ドジャースの強力打線が力を発揮してカブスに6−3で快勝。
東京での開幕シリーズはドジャースの連勝で幕と閉じた。
大谷翔平と同じ指名打者で開幕戦に臨んだカブス鈴木は残念ながら2試合連続ノーヒットで、いいところなく終わった。
去年のワールドチャンピオンであるドジャースは課題だったリリーフ陣も強化してますます強力になっていて、目標とする連覇も夢ではない。
でも個人的には、強くなりすぎて試合が面白くないと、ちょっと贅沢な不満を感じた。

そんなドジャースの熱狂が去った東京で昨日20日に行われたのが、北米で開催されるワールドカップをかけたサッカーのアジア最終予選だ。
ここまで6戦負けなしの日本代表は、この日のバーレーン戦に勝利すれば史上最速でW杯出場が決まる大事な一戦。
埼玉スタジアムを埋め尽くす大勢のサポーターの前で勝って決めたい日本代表だったが、相手のバーレーンが予想以上に素晴らしいプレーを見せ、なかなかシュートチャンスも掴めないまま0−0で前半を終えた。
重苦しい雰囲気の中、久保建英の巧みなパスを受けた途中交代の鎌田大地が中央を突破し待望のゴールを決めたのが後半21分。
全選手がヨーロッパのチームで鍛えられ個の力をつけた今の日本代表らしい美しいシュートだった。

そして試合を決定づける2点目のゴールを奪ったのは久保建英。
ショートコーナーから折り返したボールを、パスを打つと見せかけて角度のないところからゴール左隅に突き刺した。
スペインリーグで活躍する久保のまさに芸術的な精度の高いシュートだった。
日本代表の試合では毎回期待されながらなかなか本来の実力を示せなかった久保だが、この日は1ゴール1アシストの活躍に留まらず、攻守に渡って素晴らしいプレーを見せ、タレント揃いの今の日本代表でようやく彼がチームの中心になりつつあることを強く印象づけた。

試合後大きな歓声に包まれたスタジアムで、ワールドカップ2大会連続で監督を務めることになる森保監督は選手たちから水を浴びせられ手荒な祝福を受けた。
昨夜の勝利で、最終予選を6勝1分とした日本代表。
何度もアジアの壁に苦しんだ過去がまるで嘘のように、アジアでは頭一つ抜きん出た存在になったようだ。
かつて何度も苦杯を舐めさせられたオーストラリアやサウジアラビアにも大きな差をつけ、世界の強豪国に先駆けて世界最速でのワールドカップ出場を決めた。
遠藤航キャプテンが就任時に掲げた「ワールドカップ優勝」という夢のような目標も、今ではすっかりチームに浸透し、ワールドカップ出場を決めた選手たちに一様に「ほっとした」としながらも「目指すのはここではない」と、すでにその視線は世界の強豪との戦いに向けられている。
若者は、厳しい環境で揉まれれば揉まれるほど成長するということをつくづく感じさせられた。

外国で揉まれる若者ということでいえば、大相撲にもいる。
戦火を逃れ、日本で力士の道を歩む2人のウクライナ力士たちだ。
今場所、揃って幕内に上がった獅子と安青錦。
今ではロシアに占領されたザポリージャ出身の獅子は12日目、幕内最年少20歳の安青錦はなんと11日目に勝ち越しを決め、快進撃を続けている。

大相撲界でも、大の里や尊富士ら将来日本人横綱が期待される若手が育って連日満員御礼が続く。
高安贔屓の私としては、今場所はなんとか高安に優勝してもらいたいけれど、大の里や尊富士の成長も大いに楽しみだし、さらに今場所新十両で早々と優勝を決めた草野という新星にも注目だ。
でも個人的には、戦争で苦しむ故郷を離れて必死に土俵で這いあがろうとしている2人の力士。
獅子と安青錦に特別な想いを込めて熱烈な声援を送りたいと思っている。
自国第一主義がはびこり世界中が良くない方向に進みつつある今の時代だけれど、国境を超えてキラキラと輝く若者たちの姿を見ていると、嫌なニュースをしばし忘れて未来への希望が湧いてくるようだ。
ネット上に蔓延するヘイトをぶっ飛ばして、自由で寛容な未来が実現することを祈りたい。