20日に投票が行われた参議院選挙。
衆議院で過半数を割り少数与党に転落した自民・公明の与党連合は、勝敗ラインを非改選の議席を含めて過半数とハードルを思いっきり下げて負けられない戦いに臨んだ。
しかし、結果は・・・
自民も公明も改選前の議席を大きく減らし、絶対防衛ラインの過半数を割り込むこととなった。
自民党を含む与党が衆参共に過半数を下回るのは、1955年の自民党結党以来初めてのことだそうだ。
与党が失った議席をごっそり奪い、大躍進を遂げたのが国民民主党と参政党。
両政党ともSNSや動画をフル活用して40代以下の圧倒的な支持を受けた。
東京都知事選の石丸旋風で注目されたSNSを駆使した新しい時代の選挙は、兵庫県知事選や東京都議会戦を経て、ついに国政選挙でも大きなうねりとなった。
これまで選挙に行ったことのない政治に無関心だった若者たちが、偶然目にした動画をきっかけに大勢投票所に足を運び、投票率は3年前の参院選挙に比べて6.46ポイント上昇し58.51%を記録した。
今回の選挙は、自民党支配が続いてきた戦後の日本政治の大きな転換点になるかもしれない。
「現役世代の手取りを増やす!」というキャッチフレーズで若い世代の支持を集めた国民民主党。
SNSでの発信に長けた玉木代表の明るいキャラクターに加え、「103万円の壁」と言われる所得税が課される年収の壁引き上げを訴え現役世代の支持を集めた。
これまで人口の多い高齢者層に向けた政策が多かった自民党政治に対する不満が、多くの有権者を国民民主党支持に向けさせた。
国民民主党は去年の衆議院選挙でも議席を4倍に増やしたのに続き、今回の参議院選挙でも改選前の4議席から4倍以上となる17議席を獲得した。
しかし今回の参院選で国民民主党を上回る注目を集めたのが参政党だった。
コロナ禍の2020年に結党された参政党は、当初「反ワクチン」や陰謀論を主張する怪しげな極右政党と見なされていたが、前回2022年の参院選で初めて議席を獲得。
去年の衆院選でも3議席を獲得して俄かに注目されるようになった。
選挙ごとにキャッチフレーズを変えてきた参政党が今回の参院選で訴えたのが「日本人ファースト」。
世界中を覆い始めたトランプ的な政党がついに日本でも誕生したのだ。
しかし、この「日本人ファースト」はたちまちネット上で大きな世論となり、選挙戦が始まると賛否両論渦巻いて国民民主党を凌ぐほどの台風の目となる。
選挙前には消費税減税か給付か、物価高対策をめぐる議論が主要な争点とみなされていたが、選挙戦が進むにつれて外国人問題がネット上の最大のテーマとなり、各党とも外国人問題に対する政策を打ち出す展開となった。
特に危機感を抱いたのが自民党。
参政党が保守的な自民党支持層を急速に取り込んでいるとの認識が広まり、石破首相をはじめ自民党執行部の口から参政党の名がたびたび語られるようになったのだ。
そして終わってみれば、参政党は事前の予想通り大躍進を遂げ、3年前の14倍となる14議席を獲得。
比例では立憲民主党、国民民主党と同じ7議席を確保したほか、選挙区選挙でも7人を当選させ、無風状態だった地方でも既存政党の議席を奪っていった。
参政党の強みは巧みなネット戦略に加え、全国に熱心な地方組織を築いていること。
外国人労働者やインバウンド客の増加で地方でも外国人の姿を多く目にするようになり漠然とした不安を抱く日本人の心に参政党の「日本人ファースト」が刺さった形だ。
しかし、その支持者には外国人排除を主張する排外主義者も多く、参政党が発表した独自の憲法草案は個人の人権を軽視するような専制国家的な色彩が強い。
ついに日本でもトランプ的な陰謀論と分断の波が押し寄せてきたかと、個人的には危機感を抱きながら参政党の躍進を見つめている。
自公の大敗から一夜明け、テレビでは自民党が負けた理由や今後の政局についてさまざまな解説が飛び交っている。
物価高、米騒動、裏金問題、相次ぐ失言などなど。
でも私に言わせると、死せる安倍晋三が政敵だった石破茂を追い詰め、自民党を崩壊に導こうとしているように見える。
それはどういうことか?
まず第一に、有権者の怒りを買った物価高から。
その原因は、アベノミクスの名の下に長期間継続された世界的にも異例な大規模金融緩和にあると私は考える。
「デフレからの脱却」を目指し2年間の期限付きで始めたこの劇薬はなかなか効果が現れず、やめたくてもやめることができないまま日銀の黒田総裁が退任するまでずるずると継続された。
景気対策の名目で政府はどんどん赤字国債を発行し、そのほとんどを日銀が買い取るという不健全な政策。
その結果、発行済みの国債の半分以上を日銀が保有するという異常な状況となる。
この間に円の価値は大きく下落し、日本は「安い国」となって多くのインバウンド客を呼び込む反面、輸入物価が高騰し構造的なインフレ要因となった。
つまり、日本人を苦しめている物価高は安倍元総理が残した負の遺産なのだ。
自民大敗の要因となった2つ目は、旧安倍派の裏金問題に端を発した派閥の解消である。
安倍元総理が始めたわけではないけれど、岸田政権下で発覚したパーティー券収入の不記載問題、「政治とカネ」の問題が自民党の最大派閥を揺るがせ、結果として麻生派を除く全ての派閥が解散した。
良くも悪くも派閥は自民党が誇る選挙マシーン。
執行部の命令がなくても派閥単位で秘書団が候補者の支援に動いていたのだが、派閥解消によりそうした従来型の選挙ができなかった。
さらに安倍元総理銃撃事件をきっかけに統一教会の選挙応援も得られなくなり、自民党の伝統的な選挙戦術に狂いが生じたのも安倍晋三の呪いかもしれない。
そして私が考える自民党を追い込む最大の「安倍晋三の呪い」は、安倍元総理を神のように崇める保守的な安倍支持者たちの存在だ。
政党のネット戦略をいち早く始めたのは安倍政権下の自民党だった。
ネットを利用して愛国心を煽るような保守的な発信を続ける中で、安倍元総理を盲目的に支持するコアな支持者たちが育成され、彼らが新たな自民党支持層を形成した。
彼らにとって安倍元総理の政敵だった石破茂は明確な「敵」であり、リベラルな石破総理が率いる自民党を支持する選択肢などはなからなかったのである。
石破自民党を見限った安倍支持者たちは、国民民主党や日本保守党、そして参政党に逃げた。
その数は自民党を窮地に陥れる規模であり、石破政権下での歴史的な連敗を演出したのだ。
それだけ安倍元総理の影響力が強かったという証拠ではあるが、保守派の後継者を自認する高市早苗氏が石破総理に代わって自民党総裁に選出された場合、果たして安倍支持者たちは自民党に戻るのだろうか?
衆参で大敗を喫し、退陣やむなしと思われた石破総理だが、今日の午後開いた記者会見で続投の意向を表明した。
自民党内では「続投は認めない」と石破おろしの声が渦巻き、野党もこぞって石破自民党と組むことはありえないと連立の可能性を否定する中、常識的には石破政権は早々に行き詰まることも予想される。
とはいえ、野党第一党の立憲民主党も伸び悩み野党を一つにまとめる力もなさそうなので、自公が少数与党のままのらりくらり政権を維持する可能性もある。
極端な政策を主張する左右のポピュリスト政党が人気を集め、たくさんの政党が乱立する新たな政治状況。
ネット時代には私が信奉する「中道」は生き残ることはできないのだろうか?
日本の政治が経験したことのない暗中模索の時代が始まる。
