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<吉祥寺残日録>日本被団協のノーベル平和賞受賞と石破総理が提唱する「アジア版NATO」 #241011

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今年のノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が選ばれた。

日本の平和賞受賞は佐藤栄作元総理以来、50年ぶりだという。

広島・長崎の被爆者の全国組織として1956年に設立されて以来、具体的な被爆体験を通して原爆被害の実相を世界に発信し、核兵器廃絶を訴え続けた関係者の努力がようやく認められたことは素直に喜び祝福したいと思う。

しかし、これによって地球上から核兵器がなくなることも、ましてや戦争がなくなることはないだろう。

そもそもノーベル平和賞の選考は、ノルウェー議会が任命した5人の選考委員によって選考委員によって決定されるもので、日本人からすれば、どうして佐藤栄作氏が選ばれて被爆者団体がこれまで受賞していなかったのかの方が不思議なほどだ。

つまり、北欧ノルウェーの人たちにも知られる存在でなければ候補にはならないということだろう。

核兵器廃絶を求める運動としては、2007年にスタートしたばかりの「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」が68年の歴史を持つ日本被団協に先んじてノーベル平和賞を受賞したのも、そうした理由によると理解している。

どうせならもっと早く、多くの被爆者の皆さんが存命中にその活動にスポットライトが当たっていればと、若干受賞が遅すぎたという感想も抱く。

なぜ今年、半世紀以上活動を続ける日本被団協にノーベル賞が授与されることになったのか?

本当の理由はわからないが、今年から選考委員が交代したことも関係しているかもしれない。

ロシアが核兵器で威嚇したり、イスラエルによるイランの核施設への攻撃や北朝鮮の核開発が世界的な懸念材料になる中で、新たな選考委員会が核兵器の問題にスポットライトを当てようと考えたのかもしれない。

しかし個人的には、オバマ大統領の広島訪問や去年の広島サミットにより、被爆地・広島、長崎が国際ニュースのテーマとなり、ノルウェーにも情報が伝わったことも大きかったのではないかと想像している。

そういう意味では、外相、首相としてその実現に努力した広島を地盤とする岸田前総理の功績かもしれない。

ただ、そんな岸田さんでも、国連総会で採択され2021年に発効した「核兵器禁止条約」への批准には消極的だった。

すでに73カ国が批准し、日本国民の7割が条約批准に賛成しているにもかかわらず、日本政府が批准に後ろ向きなのはアメリカとの関係、すなわち「核の傘」を手放したくないという現実的な選択である。

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「核兵器なき世界」にはもちろん賛成である。

しかし、ことさら核兵器と通常兵器を区別して、核兵器の廃絶だけを目指す運動には、私はずっと違和感を覚えてきた。

いくつもの戦争を取材してきた私は、核兵器を使わない戦争も十分に悲惨であり、洗練されない武器を使用した白兵戦の恐ろしさを知っているからだ。

確かに核兵器の威力はもちろん通常兵器とは比べ物にならず、本格的な核戦争が起きれば全人類が絶滅するかもしれない。

しかし、その恐怖が全面戦争を抑止している面も否定できない。

もしもロシアが世界を破滅させられるだけの核兵器を持っていなかったら、NATOはウクライナに派兵していたかもしれないと私は考えている。

好むと好まざるとに関係なく、今の世界には「核抑止力」は厳然と存在するのだ。

地域紛争は各地で発生しても、核保有国同士が直接戦火を交えることはしない、それが現在のルールなのである。

それによって、世界を二分した冷戦時代にも数千万人が死ぬような世界大戦は起きず、戦後80年、日本も一度も戦争をすることなく平和を享受してきた。

最強の兵器を手にした者がそれを手放すことは、より強力な武器を手に入れない限り絶対にあり得ないというのが人類の歴史なのである。

そんな国際秩序に一石を投じ、小さな波紋を広げているのが石破新総理が提唱する「アジア版NATO」である。

石破さんが自民党総裁に選出されて以来、メディアが一斉にこの構想を批判している。

「非現実的」「日米関係を危うくする」「中国を刺激する」「憲法に抵触する」「そもそも実現するはずがない」

まさに袋叩きの状態で、バカにして笑い飛ばすような伝え方も目立つ。

しかし私は、中長期的な安全保障戦略として検討し、各国とも慎重に意見交換する価値があると考えている。

アメリカがどんどん自国第一主義に傾いていく中で、日米同盟だけに頼る現在の安保政策に持続可能性はあるのか、そういうことも踏まえて水面下で時間をかけて調整するテーマだと思うのだ。

石破さん自身、まだ自民党内でもコンセンサスを得られていないとして「アジア版NATO」については封印して、最初の外遊となったASEAN首脳会議でも一切触れなかったが、小野寺政調会長に新たな組織を立ち上げて自民党内でアジアの安全保障について議論を始めるよう指示をしている。

外交デビューとなったラオスでは、中国の李強首相とも会談した。

石破さんの「アジア版NATO」構想が中国に対抗するためのものというのは承知の上で、中国はここまでのところ田中角栄の流れを汲む石破総理を歓迎する姿勢をとっているという。

安倍元総理の政敵だっただけに、日本の路線変更を期待しているのだろう。

夢想だと笑われるかもしれないが、個人的には、アジア太平洋地域にも多国間の安全保障の枠組みが誕生し、その後ヨーロッパのNATOとも連携して、自由と民主主義を尊重する国々による強力な安全保障体制が構築されることを望んでいる。

日本国内には他国の戦争に巻き込まれることを心配する声があるが、地政学的に見てアジアで最も戦争のリスクが高い国の一つが日本だということを自覚しなければならない。

最大のリスクはアメリカが伝統的な自国第一の方針に回帰すること、たとえトランプさんが大統領にならなくても、決してあり得ないことではない。

その時日本人はどのように振る舞うのか、いくつかのオプションは用意しておいた方がいいだろう。

石破新総理は総裁選の時の主張に反して、就任からわずか9日目での解散に踏み切った。

いわゆる裏金議員12人を公認しないうえ、それ以外の裏金議員も比例との重複立候補を認めない決定をしたため、自民党は議席を大幅に減らす可能性が高い。

自民党内では旧安倍派を中心に倒閣の動きも表面化していて、石破さんがこの窮地を乗り切れるかどうか予断を許さないが、個人的には石破さんがどんな政治を行なうのか、独自色が出せるのかもう少し見てみたいと思っている。

安倍シンパのメディアからの集中砲火を浴びる中、石破さんに好意的なメディアはほとんど存在しない。

こういう状況を見ていると、私の天邪鬼な心が目を覚ますのだ。

石破さんにはなんとか総選挙を乗り切ってもらって、新たな政治を見せてもらいたいものである。

<吉祥寺残日録>防衛力強化を決断した岸田総理のG7歴訪!世界の軍事ブロック化が急速に進んでいく #230114

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