<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 岸田総理のキーウ訪問とプーチン大統領への逮捕状 #230323

WBCの陰に隠れて全く目立たなかったが、岸田総理が極秘でウクライナを訪問、今日帰国した。

G7議長国である日本のリーダーとして広島サミット前になんとしてもキーウを訪問する必要があり、インド訪問の日程を終えたタイミングで、同行記者団にも何も告げずにチャーター機を使って隣国のポーランドに飛んだ。

ポーランド国境の駅で列車に乗り込む岸田総理の映像を捉えたのはNHKと日テレだった。

両社の記者が優秀だったのかもしれないが、この映像を見た瞬間、私は岸田さんの周辺が制御しやすいこの2社を選んでリークしたものだと感じた。

もしも岸田さんの安全を最優先に考えるならば、ウクライナ訪問を終えた後に発表するのが普通だが、今回の「電撃訪問」はまだ岸田さんが列車でキーウに向かっている最中に報道された。

このことから判断すると、岸田さんおよびその側近たちにはウクライナ訪問を大きくアピールしたい思惑があったと考えられる。

特にNHKは岸田総理が使用したチャーター機が日本を離れる映像も撮影しており、インド訪問の前から官邸とNHKが入念に話し合い、映像を撮影する日時や場所、情報解禁のタイミングで合意していたのだろう。

その証拠に、一報が伝えられた21日の昼ニュース、他局がWBCで大騒ぎしている中でNHKだけは特番体制で岸田総理のウクライナ訪問を大々的に伝えていた。

キーウに到着した岸田総理は、ゼレンスキー大統領と会談し、攻撃力を伴わない支援の継続を約束した。

さらに広島サミットへの参加を要請し、ゼレンスキー大統領もオンラインでの参加を約束した。

とはいえ、ウクライナ側にとっては岸田さんの訪問はそれほどの重要性はなく、あくまで支援国の一つとして丁重に対応したに過ぎないのだろう。

岸田総理はG7首脳としては最後の訪問者であり、軍事支援の最大の提供国であるアメリカのバイデン大統領の電撃訪問とはやはり重みが違うのだ。

岸田さんはブチャを訪問するなどお決まりのコースを一巡したが、そこにはゼレンスキー大統領は同行せず、外務次官とボディーガードが案内役だった。

ゼレンスキー大統領と握手し満面の笑みの岸田総理。

今回の訪問はウクライナのためというよりは岸田さんのためのものであることをこの写真は如実に示しているように見える。

ただ、日本の総理が戦争が続く国を訪れるのは戦後初めてとのことで、岸田さんのウクライナ訪問は日本的には大きな決断だったのだろう。

何事であれ、現地に足を運ぶことは重要である。

多少のリスクがあることは覚悟の上で、前例にとらわれずウクライナ行きを決断した岸田さんの姿勢は一応評価しておきたい。

しかし、今のゼレンスキー大統領には岸田さんのパフォーマンスに付き合っている余裕はないのではないだろうか。

岸田さんと会った直後、東部の激戦地バフムトを訪れ、兵士を激励した。

ロシア側が攻撃を集中させているドネツク州のバフムトではウクライナ軍が不利な状況に置かれていて、必死の防衛戦が続いている。

ただ春にも始まるとされていたロシア軍による総攻撃の動きは今のところ見られていない。

私の勝手な推測だが、ロシア軍にはもはや戦況を一気に打開するだけの戦略がないのではないだろうか。

一方でウクライナ側には西側諸国からの戦車が徐々に供与され始める。

ポーランドなどはソ連製の戦闘機の供与も発表していて、少しずつではあるがウクライナの戦闘能力が強化される可能性がある。

もちろんソ連製の戦闘機など今の最新兵器と比べるとガラクタのようなものかもしれないが、使い方によってはロシア軍の後方を攻めることもできるようになり、戦況に影響を与えるかもしれない。

イギリスがウクライナに供与する戦車の弾薬の中に劣化ウラン弾が含まれると報道されたのを受けて、プーチン大統領は「核を成分とする兵器を西側諸国が使い始めている」と主張、改めて核兵器の使用をチラつかせた。

これはロシア側に核兵器以外の有効な対抗策がないことを意味するのではないか、私はそう読み解いている。

1年以上に及ぶ戦闘で、ロシアが備蓄してきた武器の多くを消耗した可能性がある。

新たな兵器の生産も西側の制裁によって思い通りには進まない。

ロシアの内情はかなり切迫してきているのではないかと想像する。

軍事侵攻当初は首都キーウをはじめウクライナ全土の掌握を狙っていたものの、今ではすでに支配下に置いた東部と南部の4州の防衛で手いっぱいのようだ。

先週、プーチン大統領はクリミアとマリウポリを相次いで訪問し、占領地域の支配を既成事実化するデモンストレーションをおこなった。

ロシアによって街が復興していることをアピールするつもりだったのだろうが、映像からは抗議する市民の声が聞こえ、プーチンさんの思惑通りには進んでいないことを逆に示す結果となった。

平和な日常をいきなり破壊されたウクライナの人たちが、短期間の間に親ロシアに変わることなど所詮ありえないことなのだ。

しかしプーチンさんに抗議した勇気ある市民がその後どうなったのか、私にはそのことがとても気になる。

こうした中、少し前の話になるが、ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は17日、ウクライナの子供をロシアに拉致したとしてプーチン大統領と子供の移送を担当する大統領全権代表マリア・リボワベロワ氏の2人に逮捕状を出した。

ICCは、ヨーロッパを中心に結成された国際機関で、ロシアはもちろんアメリカさえ加盟していないため、その実効性はほとんどないと考えられているが、占領地域での非人道的な行為に国際的な関心が集まることが予想される。

これに対抗するため、ロシア連邦捜査委員会は20日、プーチン氏らに逮捕状を出したICCの裁判官ら4人の捜査を始めたと発表した。

4人の中には日本人の赤根智子裁判官も含まれている。

さらに今週、中国の習近平国家主席がモスクワを訪問し、プーチン大統領と長時間にわたる会談をおこなった。

この中で両首脳はウクライナ問題も話し合い、プーチン大統領は中国が提案した仲裁案を評価し、「中国の和平計画は、欧米とウクライナが参加する用意を示した時、ウクライナ問題の平和的解決の基礎になりうる」と述べたという。

ロシア側としては中国を仲介者として、現状を維持したまま停戦に持ち込みたいというのが本音のようだ。

このままロシア側が攻撃をエスカレートさせなければ、徐々にウクライナ側が領土を奪い返す局面に入るのではないか、そんな気がしている。

ロシア軍は支配エリアを要塞化し、攻めよりも守りに兵力を裂き、持久戦に持ち込んで国際世論の関心が薄れるのを何年もかけて待つのだろう。

一度始まった戦争を終わらせるのは簡単ではない。

一時的な政治パフォーマンスではなんの解決にも結びつかない。

戦時の総理大臣を自認する岸田総理には、ウクライナ訪問を自慢するのではなく、腹を括って問題解決に努力する姿勢が求められている。

<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシアの軍事侵攻から1年!世界は激変し、グローバリゼーションの時代は終わった #230224

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