雨の渋谷で一本の映画を観た。
「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」
戦後の沖縄で活躍した一人の政治家を描いたドキュメンタリー映画だ。私の知り合いが監督をしたというので、時間を見つけて見に行った。

場所は、渋谷のラブホテル街の中にある「ユーロスペース」。1982年に渋谷の桜丘町でオープンしたミニシアターで、2006年にこの円山町に移った。
名前は知っていたが、訪れるのは昨日が初めてだった。予想外に新しい建物。一般の商業映画と違い、聞きなれないタイトルの映画のポスターが並んでいる。
ポツリポツリとお客さんが建物に入っていく。エレベーターで3階に上がると、そこが映画館になっている。


細長いロビースペースには、平日の昼間にもかかわらず結構お客さんが待っていた。
同時上映されているのは、アメリカ在住の日本人女性監督が捕鯨問題を描いた「おクジラさま ふたつの正義の物語」という名のドキュメンタリー映画だった。
私の隣の女性二人が会話している声が耳に入って来た。初対面らしき二人。共にこの映画館は初めてのようで、ラブホテル街にあるそのロケーションに驚いたと話していた。一人は「おクジラさま」、もう一人は「カメジロー」を観に来たと言う。
そして、政治の問題や環境問題について意見を交換している。客層は総じて、60歳代インテリ層で、安倍政権に批判的なリベラルな人たちが多いようだ。映画の内容から言って、そういう人たちが集まることは想像通りではある。

そして、映画が始まった。92席の小さなホールは、ほぼ満席だった。
この映画は、戦後アメリカ統治下に置かれた沖縄で大衆の心を掴み、「基地のない沖縄」と「本土復帰」のために戦った瀬長亀次郎という人物を描いた作品だ。
「不屈」という言葉を彼はよく使った。沖縄県民の戦いが「不屈」だとして彼はこの言葉を好んで使ったが、沖縄の人々は彼こそが「不屈」の精神の体現者として彼の演説に熱狂した。
亀次郎は、一時期、那覇市長に当選するが、アメリカ当局の裏工作によって被選挙権を失う。
沖縄が念願の本土復帰を果たすと、亀次郎は国会議員に選ばれた。今度は時の佐藤総理に噛み付いた。沖縄を「基地の島」として米軍に差し出した日本政府の姿勢に抗議し続けた。
そして、戦後70年が過ぎても、沖縄の状況に大きな変化はない。
多くの日本人は、そのことを知っている。知っていて、見ないふりをしている。
北朝鮮や中国の脅威を意識させられる情勢の中で、沖縄のアメリカ軍の存在は力強い「味方」と感じている。沖縄の人には同情しつつも、「仕方がない」としてあえて考えない。
そうして日本人は70年間生きて来た。
この映画を製作したTBSの佐古監督は、「筑紫哲也NEWS23」のサブキャスターとして度々沖縄を取材し伝えた人だ。筑紫さんが亡くなった後も、継続して沖縄問題に取り組んで来た。
そんな一人の放送人の思いが、亀次郎という一人の政治家の姿を借りて私たちに問いを投げかける。
「なぜ沖縄だけが犠牲にならなければならないのか?」
淡々んとした映画だが、本土にくらす日本人が知るべき現実がこの映画の中にはある。