<吉祥寺残日録>武漢都市封鎖解除 #200408

緊急事態宣言から一夜明け、行きつけの理髪店に散髪に行く。

東京都は理髪店も営業自粛の対象としようとして、政府が待ったをかけた。

今も調整が続いているという。

理髪店のマスターも営業を続けるべきかどうか激しく迷っていた。コロナ危機が始まってから、お客さんも散髪の間隔を開けるようなっていて、それだけで売り上げはかなり落ちているという。

安倍総理が発表した給付金についてももらえるのかどうか、どうすればもらえるのかよくわからず、税理士と相談するつもりだと話していた。

客商売なので、店を閉めると常連さんに迷惑をかけるし、再開した時にこれまでのように来てくれるかも心配で、とりあえず営業を続けるしかないかと考えているようだ。

多くの人を悩ますコロナ危機、今日も東京では144人の感染者が見つかった。

新型コロナウィルスの震源地である中国武漢の都市封鎖が今日の午前0時に解除された。

高層ビルが一斉にイルミネーションを輝かせ、2ヶ月半ぶりの封鎖解除を祝った。中国では全土でお祭りムードだそうだ。

武漢が突然「封鎖」されたのは1月23日のことだった。

1000万都市がある日突然封鎖され、町からの出入りが完全にストップするという異常事態は、新型コロナウィルスの恐怖を中国政府の強権を世界に強く印象付けた。

たまたま武漢を訪れていた人たちも町から出ることを許されず、無許可で武漢を抜け出した市民は見つかると袋叩きの目にあったものだ。

あの頃、日本人も、欧米の人たちも中国からの映像を面白がって見ていた。

もう遠い昔の話のような気がする。

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それから2ヶ月半、武漢の人たちは自宅に閉じ込められた状態が続いた。買い物のための外出も許されない徹底した隔離政策が敷かれた。

封鎖が解除されるのを待ちかねたように、この日武漢からは6万人の人たちが脱出した。中には、防護服姿の人もいて、いかに武漢の人たちにとって新型コロナウィルスが強烈な存在だったかが伺われる。

その一方で、中国の観光地では多くの群衆が密集している映像が配信された。それでなくても世界一の人口を抱える中国。ちょっと気を緩めると第二波の感染拡大も懸念されている。

そして東京では今日から緊急事態宣言に基づいた外出自粛要請期間が始まった。

確かに、繁華街からは人がかなり減ったようだ。しかし、通勤電車はさほどではなく、総理が求めた「7−8割人との接触を減らす」目標とはまだ隔たりがある。

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中国政府は初動では事態を隠蔽しようとしたが、一度ウィルスとの闘いを宣言すると、都市を封鎖し、外出を禁止し、団体客の海外旅行を禁止し、専用病院を10日で立ち上げ、地下鉄や団地などあらゆる場所で体温チェックを行い、店で買い物する際にも氏名や連絡先を記入することを義務付けるなど、ありとあらゆる対策を実施した。

中でもQRコードを活用して一人一人の行動を登録し、感染の危険性がある場所には行っていないことを証明するアプリを開発するなどITを活用した対策は画期的だった。

しかも、感染が広がっていた湖北省だけでなく、中国全土で徹底した外出禁止の措置をとった。今の日本よりも感染者数が少ない段階で全土封鎖を行ったのだ。

それによって中国では世界に先駆けてピークアウトを迎えた。

こうした中国式の都市封鎖は、当初「中国以外ではできない強硬手段」と呼ばれたが、その後、ヨーロッパでもアメリカでも「ロックダウン」が最も有効な感染対策をして世界のスタンダードとなり、インドなどの途上国でも全土封鎖措置が取られている。

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こうした中、日本政府は中国の教訓を意図的に無視しようとしている風に見える。

確かに、日本の法体系は中国とは全く違う。中国共産党のようなトップの意志を末端まで徹底させるような実行部隊もいない。マイナンバーすらいまだに普及せず、国民全員のビッグデータを政府が持って監視している社会とは違う。

とはいえ、参考にできる対策はたくさんあるだろう。

例えば、「ソーシャルディスタンシング」。

中国では当初から人との距離を2m離すという対策を徹底していて、日本のテレビでも中国の宅配ピザを面白がってネタにしていたのに、日本で言われ出したのはつい最近のことだ。

軽症者をホテルで隔離することも中国では当初から行われていた。日本でもクルーズ船対策の頃から真似しても良かったが、これも採用されたのは今週のことだ。

街中での体温チェックも日本ではほとんど行われていない。

中国ではアリババやテンセントを使い、ITを使ったコロナ対策が素早く立ち上がった。オンライン授業もとっくに行われている。それに対して日本では、最近になってようやくLINEを使ったアンケートやテレビ会議が始まった程度で、一部の地方自治体と比べても政府の取り組みが鈍い。

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あくまで日本独自のスタイルにこだわりたいのかもしれないが、中国式、韓国式、台湾式を真似する国はあっても、日本方式の対策を真似ようという国は現れない。

それもそのはず、日本式は理解不能なのだ。

海外からは日本は検査が少なく実態がよくわからないと見られている。それでも日本政府は「ギリギリ持ちこたえている」としているため、むしろ「日本の謎」として数字に疑いの目が向けられると同時に、何が感染を抑えているのかと興味の対象となっている。

昨日の緊急事態宣言についても、安倍総理の会見は70%の国民がテレビで見たようだが、海外メディアからの評判は芳しくなかった。

それでも、日本国内では安倍さんに異を唱える声は不思議なほど少なく、テレビでもネットでも安倍応援団が盛んに「日本はうまくやっている」という言説を振りまいている。

海外ニュースも見ている人間からすると、国内向けの情報操作という点だけは、日本は中国に似ている気がしている。

安倍総理も、散歩は大丈夫と言っていたので、妻と一緒に夕方井の頭公園を少し歩いた。

春らしい暖かな陽気に誘われて、いつも通りの多くの人の姿がそこにはあった。

犬を飼う人たちはいつものように集まっておしゃべりしている。

まあ公園なので、感染リスクは高くはないだろうが、武漢や欧米の無人の映像を毎日のように見ているので、「こんなんで大丈夫か?」と思ってしまう。

緊急事態宣言が出たらすぐに厳しい行動制限を始めようとしていた小池知事は政府に出鼻をくじかれ、安倍総理に近いコメンテーターたちは「小池さんが先走って混乱させた」と一斉に小池批判を始めた。

何でもかんでも政府が仕切るのが、本当にいいのか?

PCR検査が進まないのも、全ての対策が後手後手なのも、政府が一元管理をしようとしているからだろう。

緊急時には、持ち場持ち場で判断し、現場に権限を与え、地方分権。いい対策を打ち出した自治体のやり方をみんなで真似すればいいと私は思う。

国は自治体の細かなやり方にいちゃもんをつけるのではなく、不足しているマスクや防護服、人工呼吸器の調達とか、オンライン授業の促進とか、コロナで収入を失う多くの人の救済に集中すべきである。

日本式にこだわるならば、世界が競って真似するような先進モデルを編み出してもらいたいものだ。

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