<吉祥寺残日録>50年目のアースデイ #200423

昨日4月22日は、50年目の「アースデイ」だった。

日本のテレビニュースではあまり取り上げられていなかったが、NHKBSでたまたま見たオーストラリアABCテレビがアースデイを取り上げていて、興味を持ってネットで調べてみた。

すると、気象会社「ウェザーニュース」の興味深い記事が見つかった。

「4月22日は地球の日(アースデイ) 新型コロナで地球環境は改善か」という見出しがつけられたこの記事を引用させていただきたい。

米国の上院議員のゲイロード・ネルソンが環境問題についての討論集会を呼びかけ、1970年4月22日に討論集会を開催し、以来4月22日のアースデイ集会は世界各地に広まりました。50年の節目を迎えた今年、新型コロナウイルス感染防止のための外出制限や生産活動の停止などが、地球環境改善に寄与しているかもしれないのです。

新型コロナウィルスが世界中の日常生活を変え、経済活動をストップさせた。

私たちの世代が経験したことのない異常事態だが、だからこそわかることもある。

その代表が、環境問題だ。

私たち人間が行なっている普通の活動が、地球環境にどのような影響を与えているのか?

どうすれば地球環境を改善し、青い空を取り戻すことができるのかを、図らずも実験した形となった。

2020年1月1〜20日(左)と2月10〜25日の二酸化窒素(NO2)濃度の比較(NASA提供)

ウェザーニュースの記事で紹介されていた中国の地図。

左側が1月1日から20日、右側が2月10日から25日の二酸化窒素濃度が示されている。

中国では習近平総書記の鶴の一声によって、湖北省を完全に封鎖するとともに、北京・上海を含む全土ですべての経済活動をストップした。国民には徹底した行動制限をかけ、街から完全に人間の姿が消えた。

それに合わせて、北京周辺に広範囲に広がっていた二酸化窒素濃度の濃いエリアがすっかり消えていることがわかる。北京を取り巻いていた最も色の濃い部分は、河北省の工業地帯だろう。

上海、重慶、広州の大都市圏でも同様だ。工場に加えて、自動車が完全にストップした影響も大きい。

つまり、人間が通常の経済活動を停止するとわずか1カ月足らずで、これほど劇的に環境が改善するという証だ。

記事にもこう書かれている。

中国の武漢から始まった感染拡大で全国的に移動制限や生産活動の制限を行った結果、色が濃い500μmol/m2といった高濃度地域が消えて、大半が100μmol/m2以下に下がったのです。

二酸化窒素は、自動車や航空機の排気ガスや工場の排煙など高温燃焼に伴って発生する有害ガスです。二酸化窒素の濃度が低下したということは、地球温暖化の主因とされる二酸化炭素(CO2)や微小粒子状物質(PM2.5)なども減少したと思われます。つまり、大気がきれいになったのです。

出典:ウェザーニュース

徹底した活動停止によって、中国では感染拡大のコントロールに成功し、3月10日に習近平さんが武漢を訪れたのを合図に、徐々に経済活動を再開し始めている。

ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年1月)
ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年3月)

続いては、ヨーロッパ。

上の衛星画像が今年1月で、下が3月のものだ。

この画像を見て意外に感じたのは、ヨーロッパの中でイタリア北部がもともと最も二酸化窒素濃度が高く、外出禁止措置が取られた後でも依然として排出が続いていることである。

イタリアのコンテ首相が外出禁止を発表したのは3月10日。

その後、フランス、スペイン、ドイツ、イギリスと各国が事実上の外出禁止令を相次いで導入した。

だから、3月の環境改善も道半ばであり4月の画像ではより一層二酸化窒素が減っていることだろう。

ヨーロッパ一の工業国ドイツよりも、イタリアの方が二酸化窒素の量が多いというのは今回初めて知った。フランスやイギリスも少なく、むしろ東欧やロシアに目立つということは環境意識の違い、工場や自動車の環境対策の違いを表しているのだと理解できる。

アメリカはどうか?

アメリカでも、同じような現象がみられます。NASAの人工衛星の測定データによると、車の通行量が減ったことなどにより、アメリカ北東部では窒素酸化物が30%も減少したそうです。

出典:ウェザーニュース

さて、中国や欧米に比べ取り組みが鈍い我が日本はどうだろう?

黄砂やPM2.5などの大気汚染物質の監視や予測を行っている、ウェザーニュース予報センターの解析によると、日本でも3月の大気がきれいになっていることが分かりました。

大気汚染物質の少なさを表す指数(CII:Clear aIr Index〈※〉)をみると、2019年3月の全国平均は0.78だったのに対し、2020年3月は0.81前後と、0.03ポイント高い結果に。中国大陸で大気汚染物質が減少し、越境汚染が低下したことなどが原因として考えられます。

出典:ウェザーニュース

日本でも大気がきれいになっているようだが、日本政府による対策のおかげではなく、中国から飛んでくる大気汚染物質が減少したことが原因らしい。

これはまだ外出自粛が始まる前の3月のデータなので、我々の自粛の効果はよく見えない。5月ごろになって、どのようなデータが出ているのか、興味を持って見守っていくことも重要かもしれない。

外出自粛が始まって、井の頭公園で鳴く鳥の声が以前よりも大きくなったように感じる。

世界各地で野生動物が街中で目撃されることも増えているそうで、人間が少し引っ込めば、失われた自然はすぐに戻ってくることが実感できた。

コロナ後の世界で、人間と自然がもっといい関係になれれば、今回の自粛も無駄にはならないだろう。

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