吉祥寺に雪が降り始めたのは、昨日の午後2時ごろだった。
南岸低気圧の通過により首都圏でも雪が降る可能性は報じられていたが、こんなに降るとは専門家たちも予想していなかったようだ。
雪は日暮れまで降り続き、都心でも10cmの積雪が観測された。
東京23区に大雪警報が出されたのは4年ぶり、最高気温が3度に達しなかったのは実に19年ぶりだったそうだ。
午後4時ごろには、井の頭公園は美しい雪景色となり、葉が落ちて寂しくなっていた公園が真っ白に染まった。
冬には一度は見たい絶景である。
しかし、予想外の大雪は首都圏の交通網を混乱させた。
私たち夫婦の心配事は、翌日予定していた岡山の帰省が大丈夫かどうかということだった。
首都高の至る所で立ち往生が発生し、鉄道も混乱、私が予約している空の便にも欠航が出始めたからだ。
とにかくいつもより早めに家を出て、羽田を目指すことにした。
そして今朝。
いつもより30分早く、午前5時前に家を出た。
荷物は全部リュックにまとめ、滑らないようにゆっくり歩く。
氷点下の予報だったので、ダウンを二枚重ねにして寒さに備えた。
今シーズン一番の寒さで歩道の雪はカチコチに凍っている。
人影もまばらな吉祥寺の街、夜明け前に見る雪景色はちょっと幻想的だ。
そうしていつもより時間をかけてリムジンバスの乗り場にたどり着くと、スタッフの人が待っていて、「高速道路の通行止めが解除されるまで羽田行きのバスは運休です」と伝えられた。
仕方がない、電車で羽田に向かうしかない。
ある程度予想していたこととはいえ、電車を使うとリムジンに比べ30分ほど余計に時間がかかる。
神田で山手線に乗り換える頃にはもう通勤ラッシュが始まっていた。
やはり空港に行くのはリムジンが楽だ。
浜松町でモノレールに乗り換えて、あえて各駅停車で羽田を目指す。
空港に到着する頃、ようやく東の空が明るくなってきた。
街に雪は残っているが、雪景色というほどではない。
出発時間の50分前に羽田空港に到着した。
待ち時間をラウンジで過ごしている間に朝日が昇ってきた。
冬の早朝便に乗ると、晴れていればこんな素敵な瞬間に出会える。
雪の影響で機体の準備に手間取ったようで、私が乗る便は定刻より20分ほど遅れて羽田空港を飛び立った。
年末にハスラーを購入したため、今回初めてレンタカーではなく岡山ではマイカーが待っている。
別に急ぐ必要もない。
こうして気持ちにゆとりが生まれるのも、車を購入したメリットと言えなくもない。
これまではレンタカー代がもったいなくてなるべく岡山での滞在を短くしていたが、これからは必要なだけ滞在を延長することができるのだ。
羽田を飛び立った全日空機は東京湾を横切り木更津上空でUターンをする。
千葉方面でもかなり雪が降ったと伝えられていたが、上空から見る限りではそれほどでもない。
東京は全体に白っぽく見える。
羽田の滑走路が黒く目立つということは、それ以外の場所に雪が積もっているということだ。
積雪が最もはっきりとわかるのが多摩川の河川敷だった。
今日の首都圏は快晴。
普段とは違う東京の景色をカメラにおさめてSNSで発信している人が多いに違いない。
眼下に八ヶ岳が見えてきた。
日本海側は年末から大雪が続いているが、山梨方面は平地に雪は積もっていないようだ。
南アルプスも山頂が白くなっていた。
遠くに北アルプスも見える。
高校時代、山岳部で槍ヶ岳や穂高に登ったことを思い出す。
岡山空港に到着すると、遅れて新幹線で岡山入りする妻から、朝日を浴びる井の頭公園の雪景色の写真が送られてきていた。
雪国の人には申し訳ないが、やはりたまに見る雪は本当に美しいものだ。
岡山空港からはいつものレンタカーではなくリムジンを利用して岡山駅まで出た。
岡山駅から路線バスに乗り換えて東岡山を目指す。
伯母の家に最寄りのバス停まで初めてバスで行ってみることにしたのだ。
30分ほどバスに乗り、最寄りのバス停までは270円。
リムジンと合わせておおよそ1000円かかった。
バス停からは田舎道を歩いて約15分。
日差しもあるので寒さは感じず、のどかなお散歩といった感じだ。
新車のハスラーは無事だった。
早速エンジンをかけてみる。
バッテリー上がりが心配だったが、先月最後に乗ってからまだ2週間あまりしか経っていないのですぐにエンジンはかかってくれた。
家の中も特に異常はない。
ただ、車の重みで庭の芝生に凹みができてしまった。
まあ仕方がない。
自然の治癒力を信じて、芝生に頑張ってもらおう。
まずは畑を一回り。
雑草も完全に枯れてすっかり冬の装いに変わった。
今年、近所の人にお願いする予定のブドウ畑。
周囲の畑はすでにきれいに整えられていて、我が家の畑だけ立ち枯れた雑草が目立っていた。
さすがに下草ぐらいはきれいにしてからお願いするのがマナーだろう。
1月に行うブドウの剪定作業についても教えてもらう約束になっていて、そうした作業が今回のメインとなる。
政府は今日、広島・山口・沖縄の3県に9日から「まん延防止重点措置」の適用を決定した。
岸田政権に代わって初めての緊急事態に総理のテンションも上がっているように見える。
今回の第6波は、オミクロン株の感染爆発が起きている米軍基地から染み出し市中に広がった可能性が高いと見られている。
しかしもはや感染は全国に広がり、岡山での感染拡大も時間の問題だ。
来月以降、東京と岡山の往復がまたしばらく難しくなるだろう。
だから、今回の帰省でやるべきことをできるだけ片付けておきたい。
恐るべきスピードで迫り来るオミクロン株に追われながら、私は今そんなことを考えている。