大谷翔平選手の専属通訳・水原一平氏のスポーツ賭博の衝撃はしばらく収まりそうにない。
スポーツ賭博はアメリカの40近くの州では合法だが、ドジャーズやエンゼルスの本拠地があるカリフォルニア州では今も違法とされ、水原通訳は違法賭博を行う胴元ボイヤー氏を通じてスポーツ賭博に手を出したとされる。
ドジャーズを解雇された水原氏は20日ソウルで行われた開幕戦の試合後、ドジャーズの選手たちに対し今回の騒動を謝罪し自らをギャンブル依存症だと説明したという。
気になるのは、水原通訳がアメリカメディアとのインタビューで語ったとされる大谷選手の関与だ。
ギャンブルで多額の借金があることを相談すると、大谷選手は今後一切ギャンブルをしないことを条件に自らの口座から胴元に送金を行い肩代わりしてくれたと説明したというのだ。
しかし翌日にはその説明を完全否定し「大谷は何も知らなかった」と説明を変え、大谷の顧問弁護士は「水原が大谷の資産を盗んだ」と告発する事態となった。
普通に解釈すれば、大谷をスキャンダルから完全に切り離すために弁護士が水原通訳の口を封じたと考えるのが妥当だろう。
AP通信は、日本の国税庁にあたるアメリカのIRS=内国歳入庁の報道官が21日、違法賭博の疑いで水原氏と賭け屋に対する捜査を始めていることを認めたと伝えた。
今回の水原氏によるスポーツ賭博は単なる通訳による不祥事にとどまらず、野球界を揺るがす大スキャンダルに発展する可能性さえ出てきたと言えるだろう。
当面の焦点となるのは、大谷のプレイへの影響である。
衝撃の報道の翌日、ドジャーズ対パドレスの第2戦がソウルで行われたが、ものすごい乱打戦となった。
両チームで33本のヒットが飛び出し、パドレスが15−11でドジャーズに雪辱したのだが、水原通訳のスキャンダルがドジャーズの選手たちに少なからぬ影響を与えていたように私には見えた。
心配された大谷翔平はこの日も2番DHでフル出場し、1安打1打点のほかあわやホームランかという大きな外野フライを3発も放ち、メンタルの強さを示した。
しかし試合後の取材には一切応じないままソウルを離れ、チームメイトと共にロサンゼルスに飛び立った。
私が気になったのは、ベンチでの大谷の様子だった。
いつもなら水原通訳を相手にタブレットを使って相手投手の分析などに余念がないのだが、突然相棒を失いポツンと一人でいるシーンが目についた。
ドジャーズに移籍したばかりで、エンゼルス時代のように気楽に冗談を言える雰囲気にはまだない。
まさにこれから人間関係を築きチームに溶け込もうというタイミングで長年の相棒を失ったのだ。
水原スキャンダルは、この日メジャーデビューとなった山本由伸にも間違いなく影響を与えただろう。
日本で3年連続「投手4冠」というとんでもない実績をひっさげてアメリカに乗り込んだ山本。
メジャーでの実績が全くないにも関わらず、12年総額460億円というとんでもない契約でドジャーズ入りを果たした。
当然開幕から先発ローテーション入りし投手陣の柱となることが求められる。
ただでさえプレッシャーがかかる初先発の日に、誰も予想しない水原通訳のスキャンダルが炸裂したのだ。
1回表、日本中の期待を背負ってマウンドに上がった山本だったが、初球を打たれて初ヒットを許すと、続く打者にはデッドボール、3番バッターにはタイムリーを許し1つのアウトも取れないままに2点を先制されてしまう。
日本でほとんど経験したことがない状況に頭が真っ白になってしまったのか、その後完全に制球を乱し得意のコントロールが全く定まらない。
山本由伸といえばコントロールが命。
それが全くストライクが取れずにカウントを悪くしては打たれる悪循環に陥った。
結局1回を4安打5失点で終えると、ベンチで監督から交代を告げられ、最悪のメジャーデビュー戦となってしまった。
私自身、去年のWBCなどを見て、山本のようなピッチャーがどこまでメジャーで通用するのか懐疑的だったのだが、ここまで酷いデビュー戦は想像もしていなくて正直見ているのが苦しくなってしまった。
まさに水原通訳の呪いがこの日のドジャーズを覆っているように見えた。
山本が1回で降板したことにより、ドジャーズは小刻みな継投を余儀なくされたのだが、出る投手出る投手、面白いように打たれ、味方打線がいくら頑張っても最後まで点差が縮まらなかったのだ。
今回の失敗で、今後山本がちゃんと先発ローテーションを任せてもらえるのか不安になる。
山本由伸は岡山ではまさに「郷土の星」なので、なんとか本領を発揮してしっかりとドジャーズに居場所を作ってもらいたいのだが・・・。
俄然注目を集めた大谷翔平の開幕以外にも、今週は注目のスポーツイベントが目白押しだ。
ドジャーズが乱打戦を繰り広げていたその裏では、五輪出場権をかけたサッカー男子の2次予選が行われていた。
日本代表がホームに北朝鮮チームを迎えて行われたこの試合。
後で録画してあったのを見たのだが、こちらもなかなか厳しい試合だった。
立ち上がり久しぶりに先発出場した田中碧が試合開始直後に見事なゴールを決めて先制したのは良かったのだが、その後なかなか追加点が奪えず、後半には北朝鮮に試合を支配される苦しい展開が続いた。
北朝鮮の選手たちはいつもながらに命がけの表情で、ラフプレーも辞さない果敢な攻めで日本選手を苦しめた。
一時ヨーロッパの強豪チームとも互角の戦いをして大いに期待された森保ジャパンだったが、どうも準々決勝で敗退したアジアカップ以来、どうも調子が思わしくない。
今週はパリオリンピック代表を決める競泳の代表選考会が行われている。
注目の池江璃花子は100Mバタフライでオリンピック出場内定を決めたものの、順位は2位、世界と戦えるレベルには復活できていない。
東京オリンピックの金メダリスト大橋悠依は代表を逃し、瀬戸大也や入江陵介も五輪出場が厳しい状況だ。
一時強かった日本の水泳界もここにきて世代交代の時期を迎えていて、新たなスター誕生が望まれている。
そんな重苦しい空気を一掃してくれているのが大相撲だ。
今週末で千秋楽を迎える大相撲夏場所は「荒れる大阪場所」のジンクス通り、序盤戦から横綱大関が次々に平幕に敗れ大波乱の場所となっている。
そんな中で一気にスターダムに駆け上がってきたのが新入幕の24歳、尊富士だ。
先場所十両優勝を果たして1場所で十両を通過、平幕17枚目で幕内力士となった尊富士は初日から勝ち星を重ね、小結阿炎や新大関琴ノ若を次々に撃破、気がつけば大鵬に並ぶ新入幕11連勝の記録に並んだ。
12日目に大関豊昇龍に敗れ連勝記録はストップしたものの、今日は関脇若元春を圧倒し、大正時代の1914年以来実に110年ぶりとなる新入幕優勝が見えてきた。
尊富士と同じ歳の大の里も大関貴景勝や関脇若元春を圧倒して優勝争いに加わっていて、2人の新星が相撲界に新たな時代の到来を告げた場所となった。
長くモンゴル力士に圧倒されて横綱に昇進する日本人がなかなか出てこなかったが、尊富士と大の里、さらには琴ノ若や熱海富士など、横綱を狙える日本人の若手力士が出現したことでますます土俵から目が離せなくなってきた。
やっぱりスポーツは面白い。
若い選手たちが思う存分力を発揮できるように、周囲の大人は彼らがスポーツに集中する環境を作ってあげることが重要だ。
間違っても、賭博スキャンダルなどで彼らの可能性を奪うようなことがないよう希望する。
<吉祥寺残日録>好事魔多し!ドジャーズ大谷翔平2安打1打点1盗塁の開幕戦勝利よりも衝撃的だった水原通訳の“裏切り” #240321

