オバマ氏のディープフェイク
技術はどんどん恐ろしいものを生み出す。
このオバマ前大統領の映像をご存知だろうか?
オバマ氏の映像の口の部分だけを別の映像に差し替え合成する。しかも実物と区別がつかない精巧さだ。
AIを使ったこの最新技術を、「ディープフェイク」と呼ぶ。
この技術を使うと、オバマ氏がとんでもない暴言を吐いている動画を作り出し、ネットで拡散することができる。
私はこれまでディープフェイクという言葉さえ知らなかったが、これは身の毛がよだつような恐ろしいニュースだと思う。
ポルノや死者にも
ポルノ業界ではすでに2年ほど前からこのディープフェイクの技術が物議を醸していたらしい。
有名アイドルの顔をポルノ映像と合成させて、あたかもアイドル本人がポルノ動画に出演しているように見える極めてクオリティーの高い動画を仕上げる技術をディープフェイクと呼んでいたらしい。
こうした「ディープフェイク」の技術がポルノから飛び出し、様々な動画に使われるようになった。特にAI技術を活用することで、フェイクの動画と実際の動画が区別つかなくなりつつあるというのだ。
たとえば、ホロコーストの犠牲者と会話するといった歴史の保存にもこの技術は活用されている。たとえば、こんな感じだ。
写真と証言や情報を組み合わせて、AIがすでに亡くなった人間の言葉を編み出してくれる。博物館などのコンテンツとしては有効だろう。
ザッカーバーグ氏も
ただこの技術は悪用される可能性が極めて高い。人類は本当に恐ろしい技術を生み出してしまったものだ。
トランプさんが自分の意に沿わない情報を「フェイクニュース」と呼んで大統領に当選したのは、まだ3年ほど前の話だ。
次回の大統領選挙では、このディープフェイク動画がネット上に乱れ飛んで、どの動画が本物でどれがフェイクかわからない事態が予想されるのだ。
実際に、先ほどのオバマ前大統領や民主党のペロシ院内総務の動画を使ったディープフェイク動画が登場した。喋ってもいないことが拡散される恐れがあるのだ。
フェイスブックのザッカーバーグ氏のディープフェイク動画も、彼が経営するインスタグラムにアップされた。BBCによると・・・
ザッカーバーグ氏のディープフェイク動画は、インスタグラムに8日にアップロードされた。「大量の個人データを手に入れた者が未来も手に入れると『スペクター』に教えてもらった」などと話している。長さ16秒で自動的に繰り返される。
出典:BBC
非常に精巧にできていて、普通に動画を目にした人はザッカーバーグ氏の発言と思ってしまう。
誰でも作れるディープフェイク
さらに恐ろしいのが、一部の特殊な技術を持った特殊な人だけがディープフェイクを作れるわけではないということだ。
ディープフェイク動画を誰でも簡単に作れるサイトというのが、すでに存在するようなのだ。
こんなYouTube動画を見つけた。
トランプ大統領とニコラス・ケイジの動画をアップするだけで、2人の顔が合成される。その動きはとてもスムーズだ。2人とも有名人だからすぐに合成だとわかるが、無名の人の映像をいくつも掛け合わせれば、まったく存在しない人の顔も簡単に作れる。
悪い人間がこの技術を使えば、いろんな悪事に利用できそうだ。考えるだけで、おぞましい。
メディアの終焉
テレビ報道の世界で生きてきた私のような人間から見ると、ディープフェイクのニュースはまさに世も末と思える最悪のニュースだった。
確かに、インターネットの誕生とともにマスコミが「マスゴミ」と呼ばれるようになってすでに久しい。それでもメディアで働く人間は、埋もれた情報を掘り起こし正確な情報を伝えることを使命だと思って仕事をしてきたことは間違いないと私は思っている。
メディアの情報を信じる人は昔に比べて減ったかもしれないが、ネット上に散乱する情報源のはっきりしない得体の知れない情報に比べれば、はるかに信用できる。
しかしそうしたメディアの発信した動画を加工したディープフェイク映像をSNSを使って拡散する輩が必ず出てくる時代を迎えるのだ。
もはや何を信用すればいいのか、まったくわからない。
情報化社会が一周回って、噂頼りの近代メディア誕生前の時代に逆戻りしてしまう危険性があるように思える。
アメリカでは、ディープフェイクを巡る公聴会が開かれた。果たしてディープフェイクを見破りネット上から排除するソフトは開発できるのか?
人類の未来に大きく影響するニュースだと思う。
今後の推移を注意深く見守っていきたい。
怖いですね。
なんでもありなんでしょうね。
(=^ェ^=)