穏やかな新年。
家族との集まりをこなしている間に、もう松の内が終わろうとしている。

今日は南岸低気圧が通過して、九州や四国、さらに関東でも雪が降る可能性があるという。
実際に空はどんよりして、外を歩くと手がかじかんでくる。
まだ初詣に行っていなかったことを思い出し、ダウンを着込んで毎年恒例、井の頭公園内にある「井の頭弁財天」に向かう。
今年はなぜか年末年始に屋根の葺き替え工事を行なっていて、三が日は初詣を受け付けていなかった。

工事はだいぶ進んでいて、屋根には真新しい銅板が敷かれている。
それにしても、なぜあえて年末年始に合わせて工事を入れたのだろう?

工事用のシートに囲まれるように、古いお札を回収する箱が置かれていた。
やっぱりブルーシートで覆われた場所での初詣は、どうも気分が出ない。

私にとって毎年ここの弁天様にお参りする目的は、本堂裏にある「銭洗い弁天」でお札を洗うことであり、わざわざ寒いのに初詣に来ようと思ったのも、お札を洗っておかないとお金の災いがありそうで気持ちが悪かったからだ。
ところが、本堂裏に通じる通路は工事のために閉鎖されていた。
1月10日まで通れないという。
新年早々、ちょっと縁起が悪い感じ。
明日から岡山に帰省し、古民家の改修工事などを始めるのだが、思わぬ出費があるかもしれない。

いつものように、おみくじを引いてみると、「吉」だった。
『ふしん、家うつりその外よろこび事よろずよし』と書いてあるので、少しホッとする。
岡山から戻ってお札を洗う日まで、せいぜいお金には気をつけようと思う。
お金といえば、年明けにこんなニュースが流れた。
オミクロン株の感染拡大により、アメリカでは1日100万人の新規感染者が出ているにも関わらず、GAFAの巨大化は止まるところを知らず、年明けのマーケットではアップルの時価総額がついに3兆ドルを突破したという。
3兆ドルといえば日本の国家予算のほぼ3倍、とんでもない巨額のマネーが世界中から特定の企業に流れ込んでいることを示している。
そんな途方もないニュースを横目に、我が家では年明け早々極めて瑣末な問題が持ち上がっていた。
年明けに孫たちの写真を撮っていた妻が、50ギガの「icloud」ストレージを使い切ってしまい、これ以上スマホで写真が取れなくなったと訴えたのだ。
私は定期的に外付けHDDに写真を移して保存しているので、妻の写真も同じように外付けHDDに移そうとしたのだがなぜかうまくいかない。
お正月に遊びに来たウェブデザイナーの長男に相談してみたが、すぐには解決策が見つからなかった。
翌日、我が家を訪れた三男夫婦にも相談すると、2人が利用している「グーグルフォト」をバックアップに使えばいいとアドバイスしてくれた。
私もかつて利用していた「グーグルフォト」のことはすぐに思いついて調べてみたが、無料無制限だったこのサービスは去年の5月から容量に応じた有料課金になっていることを知った。
三男夫婦も有料化のことはよく知らないまま使っていたらしい。
現在の「グーグルフォト」は、去年5月までにアップロードした写真については無料で、その後に預けた写真も15ギガまでは無料だが、それを超えると最低月額250円が課金されるという。
これでは、アップルの「icloud」とほとんど変わらず、バックアップとしては使えそうにない。
確かにちょっと考えてみれば、世界中の個人から記念写真を預かっていては、どれだけデータセンターを増やしてもキリがない。
とても無料では賄い切れないだろう。
最初から無料サービスなど続けられるはずがないのだ。
まずはライバルたちを蹴落としてから有料化する。
クラウド業界でもまず最初に採算度外視の囲い込み作戦が行われ、ある程度勝敗が決したところで有料化・・・予想通りの展開になったというだけのことである。
グーグルはこうして世界中から集めた膨大な写真を自社のAI開発に利用していたとも伝えられる。
データセンターの増設費用とAI開発でのメリットを天秤にかけて、有料化のタイミングを決めたのかもしれない。

そこで、次に私が試したのが「アマゾンフォト」。
私はアマゾンプライム会員なのでかつては無料無制限で写真を保存することができた。
果たして今はどうなっているだろうと調べてみると、アマゾンプライム会員なら今も無料で従来通り容量無制限の写真を保存することができると書いてある。
「これだ!」と思った。
アマゾンはいち早くクラウド事業に力を入れ、「AWS(アマゾンウェブサービス)」が今もクラウドサービスで世界トップのシェアを誇り、マイクロソフト、グーグル、アリババがこれを追う構図だ。
しかも、アマゾンプライム会員からは会費を取っているので、グーグルのような純粋な無料サービスではない。
すぐに妻のスマホに「アマゾンフォト」の無料アプリをダウンロードする。
しかしここで問題が発生した。
アマゾンプライムの会員は私であり、妻ではない。
つまり無料で写真を預けられるのは私であって、妻ではないのではないかと妻に指摘されたのだ。
確かに、アップルのサービスの場合、私のicloudには私の「写真」が自動的にアップロードされる仕組みである。
私のIDで利用するフォトストレージに妻のicloudの写真をアップロードすることはできるのだろうか?
いろいろ調べてみたがよくわからない。
とりあえずやってみるしかないと覚悟を決めていじっていると、どうやらうまくいったらしい。
妻の写真がアマゾンフォトに入っていく。
ただ、しばしばアップロードが中断してしまい、ものすごく時間はかかった。
ほぼ丸一日かかってようやく全ての写真のアップロードが完了し、続いて恐る恐るicloudの写真を削除していく。
私もこうしたアプリの仕組みはよく理解できていないので、写真を削除すると、アマゾンフォトに移した写真も一緒に削除されるのではないかと心配しながら、最初は慎重に少量ずつ削除して様子をうかがった。
こうして何とか写真のバックアップができ、課題だったicloud上の写真を一定数削除することができた。
これで妻の課題はひとまず解決だ。
それにしてもつくづく思うのは、日本人の一人の主婦の課題解決のために頼るのが、アップルであり、グーグルであり、アマゾンだという事実である。
もしこれが中国人であれば、頼りにするのはアリババであり、テンセントという自国企業なのに、日本人には頼るべき自国企業が存在しない。
日本人は本当にデジタルに向いていないのではないだろうか?
単にデジタル化に出遅れたというだけでは説明できない、日本人特有の脳の構造や社会の仕組みといった別の問題が潜んでいるのではないか?
妻の写真を保存するストレージを探す過程で、日本の将来が不安になった。