サイトアイコン 吉祥寺@ブログ since 2016

<吉祥寺残日録>シニアのテレビ📺 全体的に不作だった2025年夏ドラマの中で、キラリと光った人気女性脚本家たち #250926

広告

この半年間、我が家の朝の生活習慣となっていたNHKの朝ドラ『あんぱん』が今朝最終回を迎えた。

アニメ『それゆけ!アンパンマン』の原作者として知られる漫画家のやなせたかしさんと彼を支え続けた奥さんを中心に、長年子供たちに愛されるアンパンマンに秘められた反戦の願いを描いたドラマだった。

小学生の時、母親に連れられて高知に転向してきた気弱なたかしを元気な気丈なノブが守るところから2人の関係が始まる。

やがて成長した二人は別々の道を歩む。

たかしは東京の美術学校に進学し自由に目覚め、ノブは厳しい女子師範学校で愛国教師になっていった。

そして戦争。

たかしは中国の戦地に送られ餓死寸前の極限状況を経験、生徒たちを戦場に駆り立てたノブは空襲と敗戦により自らの信じた道が誤りであったことに気づく。

2人の強烈な戦争体験は、「ひっくり返らない正義とは何か」という生涯変わることのない共通のテーマとなり、やがてその想いがアンパンマンに結実するのだ。

主役を演じるのは、今最も勢いのある今田美桜と北村匠海。

さらにTBSの『不適切にもほどがある』でコミカルな親子喧嘩を演じた阿部サダヲと河合優実をはじめ、妻夫木聡、松嶋菜々子、竹野内豊、江口のりこら主演級のキャストが脇を固め、見応えのあるドラマに仕上がっていた。

しかし、このドラマの成功は一にも二にも人気脚本家・中園ミホさんによるところが大だ。

中園さんといえば『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』シリーズなど多彩な作品で知られる超売れっ子だけれど、どうやら彼女自身が若い頃、やなせたかしさんの詩を愛読し一時文通したほどに思い入れがあったのだそうだ。

つまり、この作品はNHK側からのオファーではなく、中園さん側から提案され採用されたものと考えられる。

だから、私など単なる子供向けアニメとしか思っていなかったアンパンマンを題材に素晴らしい反戦ドラマが紡ぎ出されたのだろう。

このドラマにはさまざまなキャラクターが登場するが、中でも私の目を一番引いた女優さんが原菜乃華だった。

ノブの妹、三姉妹の末っ子メイコを演じた彼女は、とても無邪気で純真な少女を演じ、今をときめく今田美桜・河合優実を上回るほどの存在感を放っていた。

彼女はこの夏日テレで放送された『ちはやふる〜めぐり〜』にも準主役として出演、主役の當真あみを食うほどの魅力を発揮していた。

「間違いなくこの子は売れる!」

私は勝手のそう確信したこの夏一番の「推し」である。

一方、夜のドラマは全体的に冴えなかった。

そんな中、この夏一番注目して見始めたテレビ朝日の木曜ドラマ『しあわせな結婚』はまあまあ期待通りの作品だった。

脚本はラブストーリーの名手と言われ、大河ドラマ『光る君へ』や朝ドラ『ふたりっ子』『オードリー』など多くの作品を仕上げてきた大石静さん。

主演の阿部サダヲと松たか子のコミカルな演技や会話はとても愉快で、このままラブコメディでまとめてくれたらもっと私好みのドラマになっただろうが、テレ朝の客層を意識してか、残念ながら殺人事件を核にした謎解きミステリーになっていて、しかもミステリーとしてのオチもイマイチだった。

とはいえ、シニア狙いだったテレ朝が『相棒』路線のワンパターンから脱却しようとしていることは個人的には大いに歓迎である。

そしてこの夏、私が一番ハマったドラマが全くノーマークだったフジテレビの『愛の、がっこう。』であった。

お堅い女性教師がホストとの禁断の恋に落ちるというストーリーに最初は何の興味も持たずに見始めたのだが、回を追うごとに2人のその後が気になり始め、結局最後まで見てしまった。

何と言っても、キャストがどハマりである。

堅物の女性教師を演じる木村文乃は見事に女性的な魅力を封印し、親の言いなりに生きてきた真面目な箱入り娘そのもの、対するSnow Manのラウールもどこから見ても歌舞伎町にいそうな派手で元気なホストそのものながらどこか独特の哀愁を漂わせる。

2人の存在感がドラマに妙な説得力を与えているのだ。

そして脚本を担当したのが、『昼顔』や朝ドラ『ひまわり』などで知られる実力派、井上由美子さん。

生徒の問題から偶然接点を持った二人だが、ホストが自分の名前さえ書くことができないことを知った教師がビルの屋上で個人的に読み書きを教え始めるという、ちょっと現実離れした物語をそれなりの説得力を持って描いていく。

教師とホストのラブストーリーといえば相当ベタな印象だけれど、古くは吉原を舞台にした武士と女郎の悲恋物語など、禁断の恋を描いた作品は古今東西枚挙にいとまがない。

そのせいか、このドラマには令和というよりもどこか昭和の香りを感じた。

主人公を取り巻く個性的な人物たちもドラマの魅力だった。

女性教師の父親は一流企業の重役で自信家、普段冴えない男の役が多い酒向芳だが今回はパワハラ系の専制的な男を見事に演じている。

この父親は家庭内でも妻子を自分の思い通りに支配しようとし、主人公はそんな父親が勝手に決めた相手との結婚に悩んでいた。

一方ホストの母親も、勉強が苦手だった息子を捨てた挙句、再婚相手から要求されるままに息子にお金の無心に来る情けない親である。

特に印象に残ったのは、中島歩演じる女性教師の婚約者。

中島は、同時期に放送していた『あんぱん』にも出演し、主人公ノブの最初の夫となる誠実な船乗りを演じてお茶の間に人気を博したが、このドラマでは一転つかみどころのない不誠実なエリートサラリーマンを演じてみせた。

親に勧められるまま主人公との結婚を受け入れながら愛人との関係はダラダラ続け、片や婚約者となった女性教師の行動を尾行してホストとの関係を執拗に詮索し、最後にはホストに嫉妬して闇討ちするような身勝手な男なのだ。

主人公の親友であるテレビプロデューサーを演じた田中みな実のやさぐれた演技もなかなか良かった。

そのほかは一段評価が落ちるが、その中で妙に心に残ったのが朝日放送制作のドラマ『こんばんは、朝山家です。』である。

朝ドラ『ブギウギ』も担当した脚本家の足立紳さんが、自らの日記をベースにキレる妻と残念な夫の日常をダラダラ描いた赤裸々なホームドラマで、小澤征悦演じるダメな脚本家が中村アン演じるしっかり者の妻に支えられながら自分の家庭の日常を描いた映画を撮影するというストーリー。

暇さえあればエゴサーチする夫にイライラする妻はいつも怒っていて、反抗期の娘もいつも家族に批判的、そして自閉スペクトラム症の息子は不登校が常習化している。

毎日騒々しい混乱続きのこの朝山家だが、みんなが言いたいことを言い合える家族の温かみのようなものも感じて知らず知らずのうちに応援したくなるから不思議だ。

自閉スペクトラム症の息子役を演じる嶋田鉄太くんは、同じ足立紳さん脚本の『それでも俺は、妻としたい』同様、見事にその役になりきっていて将来が楽しみな子役だと感じた。

関西テレビ制作の『僕達はまだその星の校則を知らない』も地味ながら良質なドラマだった。

磯村勇斗演じる学校が苦手なスクールロイヤーを通して、生徒や教師が抱える様々な問題を丁寧に描いていく。

脚本は朝ドラ『あさが来た』などで知られる大森美香さん。

宮沢賢治の言葉を全編に散りばめながら、生きづらさが社会を覆う現代の学校を垣間見た印象を受けた。

大森美香さんはこの夏、もう一本の作品も手がけている。

綾瀬はるか3年ぶりの主演作となるNHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』である。

今流行りの「終活」をコミカルに描いた漫画原作の作品だったが、期待したほどには面白くなく、綾瀬はるかがなぜこの作品を選んだのか少し違和感を感じた。

同じNHKで言えば、『舟を編む〜私、辞書つくります〜』は予想以上の良作であった。

原作は三浦しおんさんの小説で、2013年に松田龍平・宮崎あおい主演で映画化もされ数々の賞を受賞した作品だが、今回のドラマ化に当たっては池田エライザとロックバンド「RADWIMPS」のヴォーカル野田洋次郎というチャレンジングなキャスティングで臨んだ。

去年BSプレミアムで放送されて好評だったことを受けて、この夏地上波での再放送となった。

それにしても、ミュージシャンである野田の演技には不思議な魅力と存在感がある。

こうして圧倒的な作品がなかった今年の夏ドラマだが、その理由の一つだったのがTBSだったかもしれない。

看板枠である日曜劇場で放送された松本潤主演の『19番目のカルテ』は、専門化が進む医療界で注目され始めた総合診療医を主役に「病気ではなく人を診る」医療の大切さを訴えた良心的な作品だった。

ただ医療ドラマが好きではない私には、いまひとつ響かなかった。

松潤はやはり真面目なキャラクターよりも「99.9」のような変人の方が似合っている。

秋ドラマではぜひ、TBSドラマの奮起を期待したいものである。

モバイルバージョンを終了