今年も残すところ2日。
このところすっかりブログの更新スピードが落ちて、旅行の記録でさえまだ最後まで書き終わらないうちに年を越すことになりそうだ。
しかし、お金をもらって仕事として書いているわけではないため別に焦ることはない。
まずは恒例のものから、今日は3ヶ月に1回のドラマについて書いていこう。

視聴率的に好調だったのは、テレビ朝日のシリーズもの。
お年寄りが好む医療もの『ザ・トラベルナース』と刑事もの『相棒23』の2作品だ。
特に岡田将生・中井貴一主演の『トラベルナース』の第2シリーズは平均世帯視聴率が11.2%を記録し、今年放送された連ドラの第2位に輝いたという。
しかし連続ドラマをリアルタイム視聴する視聴者は年配者ばかりとなり、かつてテレビ制作者たちが目の色を変えて争ったこの世帯視聴率という尺度自体がもはや何の意味もなくなっていることを今年のランキングを見て強く感じる。
テレビ局自体、世帯視聴率から個人視聴率へ、リアルタイム視聴率からタイムシフト視聴を含めた総合視聴率へと完全に移行していて、私自身ドラマは録画して後で見ることが一般的だ。
ということで、テレ朝の2作品は私の好みではなく、初回の途中まで見たところで視聴をやめてしまった。

一方で、今年の秋ドラマで一番の注目を集めたのがTBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』である。
『アンナチュラル』など数々の人気ドラマを手がけてきた3人の女性、脚本家の野木亜紀子、TBSを代表する演出家に成長した塚原あゆ子、そしてプロデューサーの新井順子による作品だけに、私も大いに期待してこのドラマだけは毎週リアルタイムで視聴した。
3人の作品といえばこれまでサスペンスの要素が強かったけれど、今回のドラマはその予想を覆すような正統派の人間ドラマだった。
今は廃墟となった長崎県の端島、通称「軍艦島」を舞台に、高度成長期の活気と時代の流れに翻弄された人々の姿が丁寧に描かれる。
綿密な取材と最新のCG技術を駆使してリアルに再現される在りし日の軍艦島。
日曜劇場が得意とする大仰な演出やサスペンス仕立ての展開をあえて拝し、私たち日本人が懸命に歩んできた戦後の歴史をしっかりと見据えた今時のドラマには珍しい真面目な意欲作だと感じた。

とてもいい作品ではあったが、ぐいぐい引き込まれるようなストーリーではないため、残念ながら視聴率的には苦戦した。
昭和と令和、2つの時代を行き来する脚本が本来ターゲットとなるべき高齢者には理解しづらく話についていけなかったのかもしれない。
シナリオのあちらこちらに仕掛けられていた謎が最終回まで解けず、せっかちな若者たちにはまどろっこしく感じたのかもしれない。
今の視聴者は、地味で複雑な物語やセリフの機微をじっくりと味わいながら、次の展開をじっと待っていてはくれないのだ。
それでも、自分の役割を懸命に果たし島のために頑張る人々の姿は今の私たちに大切なものを思い出させてくれる。
神木隆之介演じる主人公の哲平が杉咲花演じる幼馴染の朝子にプロポーズするシーンと、運命の悪戯で結局結ばれることがなかった2人が幻の中で再び出会うシーンは本当に美しい。
視聴者に迎合することなく、テレビの多様性を広げてくれるようなこうした良質なドラマが、もっと制作されることを願う。

TBSがこの秋用意したもう一本の意欲作が金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』である。
些細な変化でもパニックに陥る自閉スペクトラム症の弟を気遣いながら変化のない静かな暮らしを続ける公務員の兄。
そんな二人の家に突如「ライオン」と名乗る男の子が現れ、平穏な暮らしが崩れていく。
初回を見てちょっと重そうだと感じ一旦見るのをやめた。
しかしネットの評判が良かったため再び見始めると、物語は単なるホームドラマではなく得体の知れぬ恐怖が漂うサスペンス色を強めていく。
しかし最終回まで見終わると、ドメスティックバイオレンスやヤングケアラーといった今日的な重い社会問題をベースにしながらも、自分たちらしい生き方を求めて弱き者たちが奮闘する物語に清々しさと強い共感を覚える。

自閉スペクトラム症の弟を演じた坂東龍汰の演技が話題になったが、個人的には不器用で無口だけれど真面目で責任感の強い兄を演じた柳楽優弥の静かな演技がとても心に残った。
そしてライオン役の佐藤大空くんが何とも愛らしく、暗くなりがちなドラマに救いを与えた。
今クール放送されたTBSの2作品はどちらも視聴率の匂いがしない企画で、正直よく編成の会議を通ったなと感じる。
1話完結の同じようなドラマがもてはやされる中で、ドラマの可能性を信じ様々な企画にチャレンジしようというテレビマンたちの気概をTBSの作品からは感じられ頼もしく思った。

秋ドラマの秀作をもう1本あげるとすると、NHKのドラマ10『宙わたる教室』をあげたい。
年齢も境遇も様々な生徒たちが集う定時制高校を舞台に、新たに科学部を立ち上げ、手作りの装置で火星のクレーターを再現し、学会発表という大きな目標に挑んだ教師と生徒たちの物語。
これまた実に地味なストーリーだが、これがなかなか面白い。
学習障害のある不良少年、不登校の少女、レストランを営む働き者の外国人、若い頃には通えなかった高校で学び直しをする集団就職組の町工場社長。
私は定時制高校には通ったことはないけれど、アメリカで数ヶ月通ったアダルトスクールは、人種も年齢も多様な似たような学校だった。

このドラマの原作である伊与原新さんの小説は、大阪に実在する定時制高校の科学部が「日本地球惑星科学連合大会・高校生の部」で優秀賞を受賞し、その実験装置が評価されてあの「はやぶさ2」の基礎実験にも参加したという実話をもとに書かれたという。
人間には何か夢中になれることや具体的な目標が必要で、それさえあればどんな人でも目の色が変わり信じられない成果を上げることができる、そんなことをこのドラマは改めて教えてくれる。
自分も楽しく頑張ろうと元気づけてくれる素敵な作品だった。

このほか、最終話まで見た作品といえば、関西テレビの『モンスター』。
いわゆる弁護士もので物語に特別目新しさはないものの、趣里が演じる変わり者の凄腕弁護士がなかなかチャーミングで、彼女の口から発せられる言葉が気持ちいい。
綾瀬はるかの恋人と伝えられるSixTONESのジェジーをこのドラマで初めて認識できたのも個人的には成果だった。

ネットでは大変評判の悪かった日本テレビ『若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-』も気がつけば最後まで見てしまった。
そのタイトルからも分かる通り4姉妹の物語なのだが、堀田真由演じる主人公の次女が恋愛にも結婚にも興味のない女性として描かれ、主人公の恋愛と結婚というドラマのパターンを頑ななまでに拒否する物語に個人的には興味を持った。
ただ、世の中の女性たちからは期待したほどの支持は得られなかったようだ。

深夜ドラマでは、意表をつく面白さがあったテレビ朝日『無能の鷹』が群をぬく。
漫画原作ではあるが、できるキャリアウーマンというイメージの強い菜々緒を主役に据えたことで、そのイメージを逆手に取ったオリジナルドラマのような味わいになった。
颯爽とした役柄が多くてこれまでどちらかというとあまり好きではなかった菜々緒だが、こんな使い方があるのかとものすごく感心した。

それ以外には私に刺さる深夜ドラマはなく、同じくテレ朝で放送された他愛のない社内恋愛ドラマ『私たちが恋する理由』を見た程度。
久間田琳加ら若手キャストが可愛らしかったこのドラマも漫画が原作で、「みんなの推し恋愛マンガ大賞」で大人の恋愛部門大賞を受賞したというから、今の若者たちの恋愛観はかなり幼いという印象を受ける。

今日と明日の2日、TBSでは今年最大の話題作で流行語大賞にも輝いた『不適切にもほどがある!』が一挙再放送されている。
いずれにせよ、テレビが「オールドメディア」と揶揄される時代。
若きテレビマンたちにはネット世論に振り回されることなく、先輩たちが長年積み上げてきたテレビドラマの力と可能性を信じて、誰も見たことのない意欲的な作品にチャレンジしてほしいと思う。