月の裏側

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中国が人類史上初めて月の裏側への無人探査機着陸に成功した。

アメリカがスペースシャトル計画を中止している間に、中国は着々と計画を進めている。

とりあえず、事実関係を記録するために日経新聞の記事を引用しておく。

『 中国が打ち上げた無人探査機が3日、世界で初めて月の裏側へ軟着陸した。着陸後に撮影した画像の地球への送信にも成功し、今後は地質などの調査を行う。宇宙開発は習近平(シー・ジンピン)指導部のハイテク産業育成策「中国製造2025」の重点領域で、2030年に米ロに次ぐ「宇宙強国」となる目標に向けた成果が進んでいる。

中国国営中央テレビが伝えた。無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」を搭載したロケットが昨年12月8日に四川省から打ち上げられて、予定の軌道に入っていた。

中国は月探査を04年に開始。13年に旧ソ連・米国に次ぐ月面着陸に成功した国となった。月の裏側への着陸成功を受けて、今後は月面に研究基地を建設する構想などを進める。核融合発電への使用を想定する希少燃料の開発も視野に入れているとされる。

「中国製造2025」の重点領域である宇宙開発では、昨年12月の中国版全地球測位システム(GPS)の完成に次ぐ成果となる。独自の衛星測位システム「北斗衛星導航系統」を完成させ、世界全域でサービスの提供を始めた。20年をめどに火星探査機を打ち上げ、22年ごろに独自の宇宙ステーションの完成をめざす計画も進んでいる。

中国の宇宙開発は軍事力強化と表裏一体で、米国は警戒を強めている。貿易で火花を散らすなか、宇宙を巡る米中の戦いも激しくなりそうだ。』

BBCは「中国、月の裏側に着陸 何をしようとしているのか」という記事を掲載した。

BBCの科学編集長による記事は、月の裏側の探査には ①月の歴史を知る、②天文学上の空白を埋める、③月面の放射線の研究という3つの目的があるという。

研究者たちにとっては、大変興味深い分野のようだ。かつてならアメリカが率先して推進したことだろう。しかし、アメリカにはその余裕がなくなった。2011年にスペースシャトル計画は正式に終了し、アメリカの宇宙開発は民間に委ねられた。

民間が目指すのはどうしても宇宙旅行や企業による素材研究、または軍事分野など、明確な誰かが資金を提供する分野に限られる。純粋な研究分野には民間の関心は向きにくい。

それに対し中国の場合は、完全な国家プロジェクトだ。

その狙いは国威発揚だったり、軍事目的だったり、宇宙での覇権を握ることだったりするだろう。しかし、いち早く宇宙に乗り出すことは様々なデータの蓄積や高度な技術開発といった意味で中国に利益をもたらす可能性がある。

米中の覇権争いが顕在化する中で、「宇宙」はこれまでとは違った重要な意味を持ちつつあるのだろう。

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