アンデス文明

雨にもかかわらず上野公園は多くの人で賑わっていた。

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この上野公園にある国立科学博物館で今、「古代アンデス文明展」が開かれている。

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日本人には縁遠い南アメリカ。ただ私にとって南米は、学生時代バックパッカーとして4ヶ月半旅した思い出の地だ。

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古代アンデスでは様々な文明が起きた。この土器は「チャビン文化」(紀元前1300年頃〜前500年頃)に作られたものだ。

「自身の首を切る人物の象形鎧型土器」という怖ろしい名前がつけられている。

『アンデス文明において「切断後の人体」の表現は見られるが、進行中の殺傷行為を描いた事例は、この作品を含め現在までに2例しかない。耳飾りや全身の刺青から見るに宗教的指導者であろう。』

「切断された首」と言えば、日本でも座間で9人を殺し首を切断された男が逮捕された。

時代を超え地域を超えて、首を切る行為はかなり本能的なものなのかと感じさせる。家畜の首を切る行為は日々の調理でも行われていたし、狩りで捕らえた獲物も首を部屋に飾ったりする。やはり首というものは、生き物の象徴なのだろう。

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こちらは「テノンヘッド」。ペルー北部チャビン・デ・ワンタル神殿の壁面を飾っていた。

『神殿で儀礼に参加した人間は幻覚剤を摂取し、自身がジャガーなどのネコ科動物に変容する感覚を体験したとする説がある。ここでは、通常の人間だが幻覚剤の摂取で筋肉が収斂してシワのよった顔、さらに幻覚剤の作用でヨダレを垂らし牙の生え始めた顔など変容の過程を示している。』

私が南米を旅行した時にも、マリファナやマジックマッシュルームなど麻薬の売人をよく見かけた。現代でも麻薬を求めて南米を訪れる外国人もいたのだ。

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黄金の副葬品が多数出土するのもアンデス文明の魅力だ。

「ネコ科動物の毛皮を模した儀式用“ケープ”」という名前がつけられている。紀元200年〜800年ごろペルー北部で栄えた「モチェ文化」時代の作品だ。

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このケープはモチェの月の神殿の内部で発見された。モチェの人たちにとってネコ科動物は冥界や死者とのつながりを象徴すると考えられており、儀式の際このケープを背中に羽織るようにして身につけた。

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「同じ人物の人生の3つの時期の顔を表現した肖像土器」。これもモチェ文化、紀元450-550年の作品だ。

同じエリート男性の顔の変化が写し取られた3つの土器、左が最も若く右に行くに従って年をとって行く。何かアニメのキャラクターのような親しみのわく表情だ。

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これもインパクトがあるが、よく見るとレプリカと書いてあった。

「擬人化したネコ科動物」というタイトルがつけられた神像。金メッキを施した銅でできており、貝やトルコ石が象嵌されている。古シパン王の墓で発見された。

ドラゴンボールにでも登場しそうな素敵なキャラクターだ。

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そして時代は進んで「シカン文化」。10世紀のペルー北部海岸で急速に頭角を現し、最も勢力の強い集団となった。

そして展示されていたのが「金の胸飾り」。全体が高純度の金の薄板で作られている。

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こちらもシカン。

「打ち出し技法でシカン神を描写した金の飲料容器」。

『1枚の金合金の板を丁寧に叩いて作り出した容器。目尻がつり上がった特徴的な目玉を持つシカン神が描かれている。この容器は儀式で乾杯をする時に使われたとみられる。』

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一転して落ち着いた作品も見られる。渋い色彩だ。

これらは「チャンカイ文化」に属する。チャンカイは1100−1460年頃にペルー中部海岸で栄えた。

『チャンカイ文化は高度な技術の織物と精巧な手ごね土器で知られ、特に頭部に顔がついた壺や裸の人間の像が有名である。』

右の土器は、『重要な儀礼に参加して乾杯または献酒を知れいる人物を表現しているように見える。大きな頭飾りと胸飾りと耳飾りは、彼が高位者であることを示している。』

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さらに時代が進んで「チムー王国」。チムーは1375ー1400年頃にシカンを征服し、インカの強力なライバルとなった。

「木製の葬送行列のミニチュア模型」。

綺麗に飾られた卵型のものは死者を美しい織物でくるんだ「葬送包み」を表している。

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こちらもチムーの「木製柱状人物像」。

『チムー帝国の歴代の王はそれぞれ、家族の住居や行政担当部門や価値の高い貢物の倉庫や埋葬用墓壇を含む複合建造物を建造した。その建造物への立ち入りや建物内での移動は厳しく制限され、木製の“戦士”の像が入り口を守っていた。』

ただこの2体の木像は戦士でも宗教的偶像でもないというが、はっきりとしたことはわかっていないようだ。

ただ、アンデス文明が残した作品の数々はどれもとても魅力的だ。

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そして展示最後の大型シアターでは、TBSテレビ「世界遺産」が撮り溜めた珠玉の映像が見られる。

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大画面に映し出される圧倒的な映像美はテレビとはまったく違う迫力で、文字通り一見の価値がある。

若き日、ペルー北部のチクラーヨからアマゾン流域のイキトスまでバスやトラックを乗り継いでアンデス山脈を越え、ボリビアのチチカカ湖やペルーのマチュピチュを巡った自らの記憶が蘇る。

乾燥しきったペルーの海岸線から高度を上げるたびに気温が下がり、半袖からダウンジャケットへと着替える凄まじい旅だった。目がくらむような断崖絶壁の道路、極彩色の植物や天然のインコ。忘れ得ぬ一人旅だった。

アンデスを象徴する「ミイラ」も展示されている。いつ見ても、強烈だ。

 

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