<きちシネ>#06「万引き家族」(2018年/日本映画)

おじさん御用達のガード下とおばさま御用達の宝塚劇場が同居する日比谷エリア。この歴史ある街にできた話題のスポットに初めて行ってきた。

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飲食店が並ぶ飲食街の向こう側に真新しい超高層ビルがそびえている。

「東京ミッドタウン日比谷」だ。

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ビルの前でゴジラが吠える。

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東京ミッドタウン日比谷1階のイベントスペースでは、NHKによる8Kライブビューイングが行われていた。私が通りがかった時には先日の「日本×コロンビア」戦の録画が流されていて、それなりの人たちが足を止めて、大きな画面で試合を見ていた。

やはり大画面だと8Kの威力が発揮される。通常のハイビジョンではボケボケになってしまう。ただ大画面という意味ではみんな映画を見慣れているので、8Kだからと言って驚きはまったく感じない。ここが、放送事業者からすれば、難しいところだ。

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このビルの4階に「TOHOシネマズ日比谷」がオープンした。

広々としてちょっと高級感のある映画館。場所柄か、やはりマダムたちの姿が目につく。

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この映画館の凄いところは、大きく開いた窓から日比谷公園の緑と丸の内のビル群を目にできることだ。映画を観なくてもこの絶景ロビーには誰でも立入れる。ちょっとした穴場スポットだ。

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この映画館に来たのは、是枝裕和監督の「万引き家族」を観るためだ。

是枝監督は私が最も好きな日本人監督の一人だ。「テレビマンユニオン」という老舗の制作会社でテレビのドキュメンタリー番組からスタートした是枝監督。

彼のシナリオにはいつも等身大の人間がいて、過剰さのない丁寧な演出は観終わった後に深い感動を残す。

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今年のカンヌ国際映画祭でこの映画がパルム・ドールを受賞したのも、そうした彼の作風が世界で評価されている証明だろう。

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「万引き家族」が上映される5番スクリーンには「TCX」の文字が・・・。

「TCX」とは、「実物大のマッコウクジラが入るTOHOシネマズ独自の超巨大スクリーン」だそうだ。家庭用テレビの大型化を受けて、映画館ならでは映像体験をできるように開発されたという。

ただ、ハリウッドのアクション映画ではないので小さな映画館でも是枝映画は十分に楽しめるはずだ。

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新しいTOHOシネマズ日比谷は、座席の高低差が大きく取られていて前のお客さんが気になることはない。快適だ。会社の空き時間に映画を観る際は今後この映画館が増えそうだ。

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さて、映画「万引き家族」のお話だ。

期待通り、素晴らしい作品だった。やはり観終わった後、深い感動に包まれた。

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公式サイトでは、このように作品を紹介している。

『  日本アカデミー賞最優秀賞最多6冠という快挙を成し遂げた「三度目の殺人」。その興奮も冷めやらぬうちに、是枝裕和監督はすでに次へと歩を進めていた。「10年くらい自分なりに考えて来たことを全部この作品に込めようと、そんな覚悟で臨みました」と自ら語る、入魂の最新作を完成させた。丹念に積み重ねられてきたフィルモグラフィーの、さらにひとつ重要な位置を占める一本の登場だ。

今度の主役は、犯罪でしかつながれなかった家族。高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、柴田治と信代の夫婦、息子の翔太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込む。彼らの目当ては、この家の持ち主である祖母の初枝の年金だ。足りない生活品は、万引きで賄っていた。社会という海の底をひっそりと漂うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。そんな冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼いゆりを見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく。』

そこで描かれるのは日本の家族の物語。聞き覚えのある事件の数々が脳裏をよぎる。

中でも、親に虐待される幼い子供の事件は一向になくなることはない。どうして子供を虐待するのか。私は決して感情的な人間ではないが、この手のニュースをテレビで見るたびになぜか泣きそうになる。親から虐待された子供の気持ちを考えて、いたたまれない気持ちになる。

ドキュメンタリストの是枝さんも同じような気持ちを抱いているのだろう。

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映画の中で、信代が女の子を後ろから抱きしめるシーンがある。

産んだから親になるのではなく、愛情を持って育てることで初めて親になるのだ。そんなメッセージが画面から溢れ出す。

それは、やはりカンヌで審査員賞を受賞した「そして父になる」にも共通するテーマだ。

女の子と一緒にお風呂に入るシーン。女の子は信代の腕に自分と同じアイロンで焼かれた傷跡があることに気づく。不思議な連帯感。信代にも親に虐待された過去があったことをさりげなく描く。静かだが、印象深いシーンだ。

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そして今回も子役が素晴らしい。

祥太役の城桧吏くんはまるで「誰も知らない」の柳楽優弥を彷彿とさせた。その瑞々しさ、冷めた視線。

そして虐待されていた女の子ゆり役の佐々木みゆちゃんの悲しそうで純粋な視線。

本当に子供を撮らせたら是枝監督の右に出るものはいない。

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この映画がパルム・ドールを受賞した後、何にでも乗っかろうとする安倍総理が是枝監督を祝福しなかったことを巡って、ネット上で論争が巻き起こった。

どうでもいい話だ。

安倍さんや安倍さんに近い考えの人たちからすれば、日本の恥部をわざわざ世界に知らせるような映画には賛同できないのだろう。しかし、これも今の日本で起きている「現実」なのは間違いない。

現代社会が抱えている問題を描くのも古くから映画の使命のひとつである。私たちは「言論の自由」や「表現の自由」が認められる社会に暮らしている。少なくとも、そうした社会に暮らしたいと思っている。

安倍さんが是枝さんを祝福しなくても、それはそれで構わない。

私を含めた多くの日本人がこの映画を評価している事実も、今の日本社会の現実である。

Yahoo!映画の評価3.85、私の評価は4.30。

 

 

 

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