今朝の日経新聞に驚くべき数字が載っていた。
1350兆円。
これは世界の企業が保有する現預金の総額なのだという。有望な投資先がないため過去10年間で8割も増えたらしい。
トップはアップルだ。一社で28兆円の手元資金を持っている。時価総額19兆円のトヨタを買収できるほどの金額だ。
これが日経新聞が掲載した現預金ランキングだ。トヨタとソニーも10兆円以上の手元資金を持っている。日経新聞は世界的なこの傾向を「日本化」と表現している。
『 地域別では米国が2兆8千億ドル、欧州が2兆1千億ドル、日本が1兆9千億ドル、中国が1兆7千億ドル。余剰資金をひたすら積み上げる経営姿勢は日本企業の専売特許だったが、ここにきて世界企業の「日本化」が進んでいるのだ。
企業に現金が積み上がるのは、産業構造の変化の影響も大きい。インターネットやスマートフォンの技術革新で成長するIT企業は大型設備を必要とせず、使い道が研究開発やM&A(合併・買収)、自社株買いなどに限られる。』
『 手元資金が増えると財務は安定するが、経営の効率性が低下する。このためアップルは12年以降2千億ドルを超える株主還元を実施し、5月にはティム・クック最高経営責任者が「19年までに(還元額を)3千億ドルに引き上げる」と発表した。人工知能(AI)関連など50社近くを買収して有利子負債を985億ドルに増やしたが、資金の膨張は止まらず実質無借金のままだ。』
なるほど。
巨額の利益を上げている米IT企業は、従来型の企業のような設備投資が必要ない。実際に製品を作るのは台湾や中国の企業だったりする。だから、稼いだ資金は研究開発や企業買収に向けられる。アップルやグーグルなどは年間数兆円単位の研究開発予算を投入し、日本企業はとても太刀打ちできないという話を聞いたばかりだ。
彼らが今最も力を入れているのが人工知能の分野だろう。
そして去年、世界の巨人たちが集まり人工知能に関して提携することを発表した。
「Pertnership on AI」という名前の組織を立ち上げたのだ。
昨年9月の発表時のオリジナルメンバーは、Facebook、Amazon、Alphabet(Google)、IBM、Microsoftの5社だった。
今年1月には、アップルも中核メンバーとして加わった。
さらに今年5月、ebay や intel と一緒に日本企業として初めてソニーがこの団体に加入した。ソニーは、1997年にはロボカップを開催、1999年にはaiboという犬型ロボットを開発し、人工知能やロボットの研究で世界をリードする企業だった。
しかし会社の業績悪化でaiboの開発も中止され、人工知能の研究でもアメリカ企業に優位を許した。資金量の違いは大きな要因だっただろう。
アメリカの巨大IT企業が手を結び巨額の予算を投入して人工知能研究を加速させる。中国企業の躍進に危機感を持っているのかもしれない。
過去30年の研究でも、まだ人工知能の実用化にはほど遠いのが現状のようだが、研究のペースは今後飛躍的に早まると予想される。
ソニー以外の日本企業は今のところ参加していないのは、ちょっと気になるところだ。
次世代のテクノロジーの中核をなすとみられる人工知能の分野で日本のポジションがどうなるのか。ここ数年が正念場となるかもしれない。