日本ではあまり報道されていないが、きのう平壌でサッカーの試合が開かれた。
韓国 vs 北朝鮮。
男子サッカーのワールドカップ予選である。
私は密かに、この試合に注目していた。
韓国と北朝鮮は共に2連勝で予選リーグのトップで並んでいた。
最終予選進出にとっては大きな試合である。
結果は、0−0の引き分け。双方一歩も引かない接戦となった。
しかし、この試合を韓国の人たちが見ることはできなかった。
なぜか?
北朝鮮が、韓国の応援団の入国もテレビ中継も認めなかったからだ。
試合前には、スタジアム全体が北朝鮮の応援団に埋め尽くされると思われたが、蓋を開けると北朝鮮応援団さえいない無観客試合となった。
南北融和を最優先に進める文在寅政権としては、面目丸潰れの仕打ちである。
あれだけ北朝鮮に尽くしているのに、金正恩委員長は完全に文在寅大統領のラブコールを無視しているように見える。
文在寅大統領としては、「なぜだ」と言いたいところだろう。
しかし、北朝鮮は完全に文在寅政権の足元も見透かしているように思う。下手に出ると、北朝鮮はどんどん見下してくるというのは、過去に何度も見てきた光景である。
金正恩委員長は物分かりがいい常識的な人物ではないかという見方が一時あったが、どうやら甘い幻想だったようだ。
米朝交渉の行き詰まりを受けて、金正恩委員長は従来の北朝鮮のスタンスに回帰している。
文在寅大統領の夢は、どんどん遠のいている。
文在寅大統領にとって、腹心であり自身の後継者とみなしてきた曺国(チョ・グク)法相の突然の辞任も打撃だっただろう。
家族の不正入試問題などで検察の捜査が進む中で、あえて渦中の曺氏を法相に任命し、検察改革を大義に強行突破を図ったが、わずか35日で辞任に追い込まれた。
今後、文在寅大統領自ら先頭に立って検察改革を進めるのか、それともまた目先を変えて別の旗を掲げるのか、いずれにしてももはや求心力は失われつつある。
北朝鮮もダメ、検察改革もダメ、そして経済も日本との関係も最悪。
私が以前指摘した通り、文在寅大統領は鳩山由紀夫元首相によく似ている。自らの理想に溺れ、現実との乖離を招き、自滅しつつある。
理想を抱くのは決して悪いことではない。
韓国人として朝鮮半島の統一を夢見ることは、ものすごく理解できる。
しかし、理想だけでは現実は変わらない。
これからの時代、ますます理想は実現しにくい世界になっていくようにも見える。
そんな時代に理想を実現するには、これまで以上に現実的な戦略と実行力が求められるということだろう。
残念ながら、文在寅大統領には難しそうだ。