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<吉祥寺残日録>9人が乱立した前代未聞の自民党総裁選!告示初日の演説会を聞いて私が感じたこと #240913

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安部派による裏金問題に端を発し、岸田総理の退陣表明にまで追い込まれた自民党。

きのう告示された岸田さんの後継を決める総裁選挙には、9人の候補者が立候補した。

届け出順に、高市早苗経済安全保障相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長。

もちろん9人の候補者が乱立する総裁選は、自民党始まって以来初めての珍事である。

こうした異例の選挙を実現させた功労者は、誰でもない岸田総理だった。

政治とカネの問題を乗り切るために、岸田派が先陣を切って派閥の解散という賭けに打って出たことにより、麻生派を除くすべての派閥が解散、派閥の締め付けのない総裁選が実現した。

岸田さん自身は総裁再選を目指して動いてきたが、肝心の内閣支持率は下がり続け、自民党内には「岸田さんでは選挙を戦えない」との声が広がっていった。

このまま総裁選に出ても再選は難しいと判断した岸田さんは、8月の段階で総裁選不出馬を表明、岸田内閣を支える閣僚たちにも遠慮なく立候補するよう促したのだ。

こうして永田町は一気に選挙モードになり、メディアの関心も裏金問題から誰が20人の推薦人を集めて立候補できるのかに移っていった。

とぼけた顔をしていても、岸田さんはやはりすごい策士、名プロデューサーである。

告示日の今日、9人の候補者が揃って演説会が催された。

ちょうど大谷翔平が出場するメジャーリーグ中継の最中に始まったため、テレビでは野球を見ながら、iPadで演説会のライブを聞いていた。

所詮私には投票権はないので、強い関心をもって聞いていたわけではないが、政治家の見本市を見ているようでなかなか面白かった。

同じ政党とはいえ、それぞれの政策、力点の置き方にはかなりのばらつきがあり、他国であれば複数の党に分かれているであろう政治家たちが自民党の旗のもとに集まり、権力の頂に登り詰めるという共通の目標を目指して競っていることがよく分かる演説会だった。

欧米の先進国に根づいた二大政党制がいつまで経っても日本に定着しない理由も、「自民党」という世界でも類を見ないこの正体不明な政党の存在に由来しているのだと思う。

戦後の日本人が民主主義政治の手本として真似しようとしたアメリカの二大政党制は、今や嘲笑の対象となっている。

10日に行われたアメリカ大統領選のテレビ討論会。

民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領による初の直接対決として全米だけでなく世界が注目したが、中身は予想通り非難の応酬に終始した。

トランプさんの登場以来、どんな嘘も公然と語られ、まったく有権者にとって有益な議論は聞かれなくなってしまった。

今回の討論でも、トランプさんは「不法移民がほかの住民のペットの犬や猫を食べている」と主張し、司会者から「根拠がない」と否定される場面もあった。

世界一の超大国のリーダーを決めるための討論としては異常なほどに低レベルだが、それでもトランプ支持者たちは「ハリスは嘘ばかりついてる」と意の解さない。

社会が完全に二分され、有権者が自分とは異なる意見を一切聴こうとしないアメリカでは、二大政党制がむしろ社会の分断を加速しているように見える。

私は若い頃からずっと反自民で、二大政党制に憧れを持っていたが、最近自民党がずっと政権を維持する日本の政治体制はひょっとすると相対的にマシな方なんじゃないかと考えるようになった。

中国のような一党独裁ではなく、批判する野党は存在する。

しかし政党支持率では常に自民党が野党を大きく引き離していて、政権交代が極めて起こりにくいのだ。

それは、自民党という政党には明確な政治理念がなく、その代わり、国民が望むことをなんでも飲み込んで自らの政策にしてしまう節操のなさがあるためだと思う。

多様な考え方を持つ政治家がいて、誰かがしくじると別の誰かがトップに立って、あたかも別の党に生まれ変わったかのように国民を幻惑するのだ。

こうして1955年の結党以来、ほぼ一貫して政権与党として権力を握り続け、権力を手放さないことによって総理大臣を目指す政治家たちが自民党に集まってくるのである。

戦後、特に安保闘争後の日本が比較的平穏で、総理大臣がコロコロ変わっても社会的な混乱は最小限にとどまり、プーチンのような独裁者が現れなかったのも、日本独自のこのヌエのような政治体制のおかげかもしれない。

今回、裏金問題で国民の激しい怒りをかうと、すかさずトップが交代し、これまで非主流派として冷飯を食っていた新たな顔で擬似政権交代を演出しようというのは、まさに世界でも類を見ない自民党政治の真骨頂である。

では、誰が次の総理総裁に選ばれるのか?

メディアの下馬評が高いのは最年少の小泉進次郎さんだ。

菅元総理に近く、岸田内閣では冷飯を食ってきた進次郎氏が掲げるのは「圧倒的なスピードで懸案に決着をつける」ことだ。

これは菅政権が行った政治スタイルの継承だろう。

そして私が今日の演説を聞いて特に印象に残ったのがこの言葉。

「国民の皆さんが一人一人の多様な人生に選択肢を広げる政治家として生きていく。そして、寛容で、包容力ある保守政党、自民党を皆さんとつくりたい」

こういう言葉は他の候補者からは出てこなかった。

小泉氏はあえて自らの複雑な家庭環境に触れ、去年43年間会っていなかった実の母親に会いにいったことも明かした。

そのうえで、自民党内で反対が根強い夫婦別姓を認める立場をはっきりと示し、「人生に選択肢を広げる」政治家を目指すと宣言したのだ。

「寛容で、包容力がある」という言葉も含めて、いいな、と思った。

しかし安倍元総理と距離を置く進次郎氏は、ネット上では常にバッシングの対象だ。

果たして父親の小泉元総理のように国民の絶大な人気をバックに党内の反対派を押さえ込むことができるのか、彼の動向を注目して見ていきたい。

小泉進次郎氏の対抗馬と目されているのが今回が5回目の総裁選出馬となる石破茂さん。

私もお会いしたことがあるが、気さくで親しみやすい人だ。

だから国民からの人気は高く、地方の自民党員にもとても人気がある。

しかし国会議員仲間からの評判は芳しくなく、安倍・麻生ラインからは敵と見做され冷飯を食わされてきた非主流派の筆頭格である。

今日の演説で石破さんが強調したのは、防衛と防災。

安全保障の専門家として東アジアにおける集団安全保障の仕組みを作ることを訴え、被災者に体育館での雑魚寝を強いる日本の災害対応の遅れを指摘した。

どちらも常日頃私が考えていたことであり、石破氏の問題意識の的確さを改めて感じた。

問題は石破氏が総理になった時に、どのように実現していくのか具体的なイメージがわかなかったことだ。

今回の総裁選を「最後の挑戦」と位置付ける石破さん。

自民党を本当に生まれ変わらせるのであれば、個人的には今回は安倍さんから最も遠い石破さんに託してみたいとも感じた。

上位2人による決選投票になると見られる今回の総裁選。

小泉、石破に次いで、決選投票に残る可能性があると考えられているのが初の女性総理を目指す高市早苗さんだ。

安倍さんの岩盤支持層を引き継ぐ保守派の代表だけに、自民党内でも最も右寄りな議員たちが推薦人に名を連ね、それを見るだけでも私は気分が悪くなってしまう。

推薦人集めに苦労したと伝えられる高市氏、20人の推薦人のうち13人は旧安倍派で13人がいわゆる「裏金議員」、その数は他の候補者に比べて圧倒的に多い。

昨日の演説では媚びたような笑みを浮かべてマイルドに想いを語ってはいたが、私的にはほとんど共感する部分はなかった。

「目指すのは、わが国の伝統、文化、歴史に真っすぐな思いを持って、憲法の論議をリードできる自民だ。」

高市さん個人が好きになれないのもあるが、それ以上に高市さんを支持するネット右翼的な人たちが我が世の春とばかりに再び跋扈するのを見たくないのだ。

それでも、非主流派だった小泉さんと石破さんの決選投票を望まない人たちが裏で画策して、議員票を高市さんに集める可能性は大いにある。

もしそうなれば、自民党は自浄のチャンスを自ら放棄したと解釈し、私は間違いなく次の選挙で野党に票を投じることになるだろう。

自民党本部の外壁に掲げられた総裁選の大きなポスター。

歴代いろんなタイプの総裁が選ばれてきたが、今でも安倍さんがその中心にいる。

戦後最長の安倍政権の時代に、自民党の多様性は失われてしまった気がしてならない。

昔の自民党を美化する気などもう党内が、進次郎さんがいう通り、自民党には「寛容で、包容力がある」節操のない政党であり続けてもらいたい。

国民の怒りをかったらすぐに表紙を変えて豹変する政党。

格好は良くないが、中国やロシアのような独裁体制やアメリカや韓国のような分断社会よりはまだ多少マシな気がしている昨今である。

<吉祥寺残日録>暑さと五輪にかまけてブログの更新をサボっている間に、岸田総理が退陣を表明した #240815

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