日米首脳会談

世界中が恐れるトランプ大統領の懐に飛び込んだ安倍総理。ホワイトハウスで出迎えたトランプ大統領はそんな安倍さんを文字通りハグで迎えた。

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百戦錬磨の安倍さんも大統領のハグは予想していなかったようで、ちょっと戸惑ったような表情を見せた。首脳会談冒頭の囲み取材の際も、トランプ大統領は安倍首相の手を包み込むようにポンポンと愛しそうに叩いた。

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安倍さんはトランプさんが好きな金色のネクタイをしめて会談に臨んだ。周到な準備。しかしトランプさんの一挙手一投足はすべてにおいて普通の首脳とは違う。臨機応変に対応するしかない。そんなリスクを承知で安倍さんはアメリカに乗り込んだのだ。

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それでも時折安倍さんが見せた照れたような表情。トランプさんとつきあうのは大変だ。

会談後に行なわれた合同記者会見では両首脳が成果を強調した。

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トランプさんが安全保障や経済問題での合意を手短に話した後、安倍さんがより詳細に楽観的に成果を語った。

心配された経済問題では、麻生副総理とペンス副大統領による対話の枠組みを新設し、財政政策や金融政策から貿易や投資など広範な分野で包括的に議論することで合意した。貿易赤字など個別の要求を突きつけられる前に、トランプさんを棚上げした実務的な枠組みを作る作戦は成功したように見える。事前準備を入念にした日本側は、とりあえず一安心といったところだろう。

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安倍さんの会見で印象的だったのは対話の重要性を強調したことだ。国内外から強い批判にさらされているトランプ大統領と会うことに対しネガティブな反応が多いことを意識したのだろう。事実、今回の訪米は、7カ国からの入国を禁じる大統領令差し止めをめぐり連邦控訴裁判所の判断が出た直後だった。記者会見でも記者からの質問はまずこの司法判断についてトランプ大統領の見解を問うものだった。問われてはいない安倍さんもこの問題について「内政問題なのでコメントは差し控えたい」と自らコメントした。その質問が出ることを想定して用意していた答を先に言ってしまった方が得だと判断したようだ。

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そして安倍さんはゴルフになぞらえて「私のポリシーは Never up, Never in 。常に狙っていく。「刻む」という言葉は、私の辞書にはありません」と語った。「届かなければ絶対に入らない」という意味だ。ちょっとした流行語になるかもしれない。

記者会見を終えた両首脳は、マリーン1という大統領専用ヘリでホワイトハウスを後にした。日本の首相がこのヘリに乗るのは初めてのことだ。そして夫人たちと合流してエアフォース1でフロリダのトランプ氏の別荘に向かった。今夜は夕食会。明日は自らが所有するゴルフ場で1.5ラウンドのゴルフだという。

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トランプさんとの差しでのゴルフ、本当にご苦労様です。トランプ大統領は年内に来日することになるようだ。ヨーロッパの首脳たちが交代していく中で、安倍さんが国際政治の世界でキープレーヤーになりつつある。かつての日本の首脳がなしえなかった役割をどのようにこなすのか、その手腕に期待したい。

ネックはやはり中国と韓国との関係改善だろう。

将来のために、記者会見の全文を引用させていただく。

 

『トランプ氏「安倍総理大臣、アメリカ国民を代表し、歓迎したいと思います。非常に有名なホワイトハウスにようこそおいでくださいました。お越しいただき、名誉に思っています。海外の首脳が米国を訪問してくださるのは、まだわずか数人です。非常に重要な同盟国である日本がお越しいただいたことをうれしく思います」

「両国の絆、そして友情関係、それが両国の国民の間にあります。これは非常に深い関係です。わが政権はそのようなつながりをさらに密接なものにしていきたいと思っています」

「私たちは日本の安全保障にコミットメントを持っています。そして、日本の領土に対して、私たちは非常に重要な同盟国であるとして重要だと思っています。また、安定と平和が太平洋地域において、日本にとっても、米国にとっても重要であることを確認しました。私たちはこれからこの同盟関係にさらなる投資を行って、両国の防衛能力をさらに深めていきたいと思っています。両国が協力することで、より強くなることができます。そして、時間がたつにつれて、これは犯し難いものとなっていくと思います」

「さまざまな課題がありますが、両国が協力することが非常に重要です。両国はパートナーとしてこれからも共に進んでいくことを確認しました。私たちは共通する利益をたくさん持っています」

「この地域では航行の自由といったものも非常に重要です。そして、北朝鮮のミサイルを防ぎ、核の脅威を防いでいくことが両国にとって重要な国益にあたります。これは非常に重要な優先課題であると考えています」

「経済面では、貿易関係を自由で公平なものにしていきたいと思っています。そして両国が恩恵を受けることができるようなものにしていかないといけないと思っています。私たちが格別に交流を行うことは非常に良いことです」

「日本は誇り高き国で、豊かな歴史と文化を持っています。アメリカ国民は非常に深い尊敬の念を日本に対して持っています。そして日本の伝統に対しても、同じく尊敬の念を持っています。この機会をいただき、総理大臣に感謝をしたいと思います。また日本の国民に感謝したいと思っています。米国軍を受け入れていただき感謝します。両国が協力することによって、より大きな調和と安定と繁栄が太平洋地域にもたらされるでしょう。また、それ以外の各地にも広がり、多くの人々の命をさらに守っていくことができるでしょう。私たちは強いコミットメントを持っています」

「安倍総理大臣、アメリカ合衆国を代表し、私は今日ここにお越しいただいたことに感謝を申しあげます。まもなく、私たちはフロリダ州を訪れます。そこで長く非常に平行するであろう話し合いを行います。そして交渉を行いたいと思っています。非常に実りある週末を過ごしたいと思います。総理大臣、どうぞ」

安倍晋三首相「米国を訪問するのは昨年のハワイ・真珠湾以来、この半年間で4度目となります。米国民の皆さまのいつも変わらない暖かい歓迎に心から感謝申し上げたいと思います。そしてトランプ大統領には就任100日という大変重要な、とても忙しいこのタイミングでホワイトハウスにお招きをいただいたこと、心から感謝申し上げます」

「私の名前は『アベ』ですが、時折、米国では『エーブ』と発音されます。しかし、私はあまり悪い気はしないわけでありまして。あの偉大な大統領の名を、わが国においても知らない人はいないからであります。農民大工の息子が大統領になる。その事実は150年前、将軍の統治の下にあった日本人を驚かせ、民主主義へと開眼させました。米国こそ民主主義のチャンピオンであります」

「大統領は素晴らしいビジネスマンですが、議員や知事など公職の経験はありませんでした。それでも1年以上に渡る厳しい厳しい選挙戦を勝ち抜き、新しい大統領に選出をされた。これこそまさに民主主義のダイナミズムであります。大統領就任を心から祝福したいと思います」

「米国は世界で最もチャンスにあふれた国である。それは今までも現在もこれからも変わることはないと思います。だからこそ、自動車産業を始め、多くの日本企業が全米各地に工場をつくり、現地生産をしてきました。昨年も日本から米国へ新たに1500億ドルをこえる投資が行われました。これらは米国内に大きな雇用を生み出しています。まさに互いに利益をもたらす経済関係を、日米は構築してきました」

「トランプ大統領のリーダーシップによって、今後高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められるでしょう。日本の新幹線を一度でも体験した方がいれば、そのスピード、快適性、安全性はご理解いただけると思います。最新のリニア技術なら、ここDCからトランプタワーのあるニューヨークにたった1時間で結ばれます。日本はこうした高い技術力で、大統領の成長戦略に貢献できる。そして米国に新しい雇用を生み出すことができます」

「こうした日米の経済関係を一層深化させる方策について、今後、麻生太郎副総理とペンス副大統領との間で、分野横断的な対話を行うことで合意いたしました。さらに急速に成長を遂げる、アジア太平洋地域において、自由な貿易や投資を拡大する、これは日米双方にとって大きなチャンスです」

「しかし、もちろんそれはピュアな形で行われなければなりません。国有企業による国家資本を背景とした経済介入はあってはならない。知的財産へのフリーライドは許されてはなりません。アジア太平洋地域に自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップのもとで、作り上げていく、その強い意志を今回私と大統領は確認しました」

「アジア太平洋地域の平和と繁栄の礎、それは強固な日米同盟であります。その絆は揺るぎない物であり、私とトランプ大統領の手でさらなる強化を進めていく、その強い決意を私たちは共有しました」

「安全保障環境が厳しさを増す中にあって、尖閣諸島が安保条約5条の対象であることを確認しました。米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本も積極的平和主義の旗の下より大きな役割を果たしていく考えです。同時に抑止力を維持し、負担軽減を進めるため、在日米軍の再編をこれまで通り進めてまいります。普天間飛行場の全面返還を実現すべく、唯一の解決策である辺野古移設に向け、引き続き日米で協力して取り組んでいきます」

「北朝鮮に対しては、核および弾道ミサイル計画を放棄し、さらなる挑発を行わないよう強く求めます。拉致問題の解決の重要性についても大統領と完全に一致しました」

「そして、東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由をはじめ、法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない。日本と米国は力の行使や威嚇によるいかなる現状変更の試みにも反対するとの強い意思を改めて確認しました」

「私と大統領は2国間や地域の課題だけではなく、世界の平和と繁栄のための貢献についても率直な意見交換を行いました。あらゆる形態のテロリズムを強く非難し、テロとの戦いにおいて、引き続き協力を強化していくことで合意しました。日本は日本の役割をしっかりと果たしていきます」

「さらには、地域紛争、難民、貧困、感染症など、世界は今さまざまな課題に直面しています。これらはいずれも日本にとっても、また米国にとっても、その平和と安定を脅かしかねない深刻な課題です。そして、わが国や米国をはじめ国際社会全体が手を携えて取り組まない限り解決することはできません。当然意見の違いはあります。しかし、その中で共通の目標や利益ではなく、違いばかりがことさらに強調されることで、対話が閉ざされてしまうことを私は恐れます。それは既存の国際秩序に挑戦しようとする者たちが最も望んでいることであるからです」

「対話を閉ざしてしまえば何も生まれない。むしろ意見の違いがあるからこそ対話をすべきです。私はこの4年間、その一貫した信念のもとに、日本ならではの外交を展開してきました。いかに困難な課題があろうとも、私はトランプ大統領と対話を行いながら、相互の理解を深め、そこから共有できる解決策を生み出す。その努力を続けていきたいと考えています」

「さて、ランチの後は大統領と一緒にフロリダの週末です。本当に待ち遠しい気分であります。ゴルフも一緒にプレーする予定です。私の腕前は残念ながら大統領にはかなわないと思いますが、私のポリシーは、ネバーアップ、ネバーイン。常に狙っていく。刻むという言葉は私の辞書にはありません。もちろんこれはゴルフに限ったことであります」

「リラックスした雰囲気の中で、たっぷりと時間をかけて、両国の未来、そして地域の未来、また世界の未来に向けて、私たちが何をすべきか、何ができるかについてじっくりとお話をさせていただきたいと思います。ありがとうございました」

 

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