オリンピックの延期が決まったら、予想通り、小池都知事と安倍総理の動きが活発化してきた。
都内で新たに41人の感染者が確認されたのを受けて、昨夜緊急会見を行った小池知事は、現状を「感染爆発の重大局面」であるとして、今週末の外出自粛と平日昼間の在宅勤務、平日夜の外出自粛を要請した。
すべて「不要不急」という但し書きがあり、強制力を伴うものではないが、緩み始めた首都圏の空気を引き締めるには一定の効果は期待できるものだった。
さらに一夜明けて、小池知事は神奈川・埼玉・千葉・山梨の各知事とテレビ会談を行い、都内への不要不急の移動をしないよう呼びかける動きは一気に首都圏全体に広がった。
さらに夜には官邸に乗り込み、安倍総理に対し直接国の支援を依頼した。
首都圏の機能停止が一気に現実味を帯び始めた形だが、これは市民生活にかなりのインパクトがあるだろう。

小池さんの発するメッセージは、政府からのものよりはっきりしているので、もっと早くからタイミングごとにこうした攻めの姿勢があればよかったと思う。
それだけ、彼女も東京五輪への影響を恐れていたのだろう。
小池さんの特技は、オヤジ政治家たちとは違う柔軟な発想力と発信力だ。
感染症との戦いという未知の分野では、他の政治家よりも個人的には期待するところが強い。
私個人として小池さんに頑張ってもらいたいのは、病床や人工呼吸器、医師用のマスクや防護服の確保や検査体制の拡充である。
2ヶ月前から発熱外来や軽症者を隔離する施設やホテルの確保などが指摘されていたにも関わらず、未だに具体的な動きが見られないというのは世界的に見ても異様である。
感染爆発が起きてから動き出してももう手遅れであることも、2ヶ月前から指摘されている通りだ。
小池さんには、パフォーマンスだけでなく、実際に必要とされる対策を迅速に動かしていただきたい。

一方の安倍総理もそろそろ動き出しそうな気配だ。
先日成立した特措法に基づいて「政府対策本部」を立ち上げ、いつでも緊急事態宣言を出す準備に入った。
各地の感染者数をにらみながら、前例のない行動規制に踏み出すタイミングを見はからうことになる。
その時、安倍総理はどんな言葉を発するのか?
安倍さんは、どんな時も同じような言葉を使うので、過去についてきた嘘の数々が災いして、どうしても心の底から信用できなくなってしまっている。
こういう時こそ、政府の思惑を言葉にするのでなく、国民の心に届くような真実を語ってもらいたい。
誠実さを全く感じないまやかしの言葉は、もうたくさんだ。

小池さんが要請する在宅勤務をすでに始めている私だが、果たして街の自粛ぶりはどうなのか、食料の買い出しのついでに井の頭公園をぐるりと回ってきた。
平日ながらポカポカ陽気。
多くの人たちが公園を歩いていた。

ボート乗り場には長蛇の列。
海外では常識となっている他人と2m離れて並ぶというルールが日本人の間では全く意識されていないのは、どうしてだろう?
テレビを見ていても、「小池知事がもっと具体的に言ってくれないとどこまでいいのかわからない」とバカな話をしている出演者が多くて、テレビマンとしては怒鳴りたくなる。
これだけ世界中に参考になる事例があり、何を避けるべきかがわかっているのに、リーダーたちにいちいち指示されないと自分の行動を決められないというのはどうしようもないバカだ。
日本人はいつからそんなバカな民族に成り下がってしまったのか。

満開の桜の下では、シートを敷いて花見を楽しむ人たちもいた。
それなりに人とは距離を置き、酒を飲んで酔っ払っている人の姿はない。
一応みんななんとなく自粛しているのだろうが、強制力がない要請では、やはり人の行動を完全にコントロールすることはできない。
テレビでは若い人たちの無自覚を嘆くが、若者だけではない。結構な数の年寄りが桜の下で楽しんでいた。
無自覚な年寄りは若者の何倍も迷惑な存在だ。
こうした年寄りが真っ先に病院のベッドを埋め、人工呼吸器を足りなくしてしまうのだ。

日本はこの2ヶ月間、時間を無駄に使ってきた。
五輪の重圧から逃れた今、失われた時間を取り戻すスピード感が重要だ。
私も、全ての旅行をキャンセルし、全ての宴会をキャンセルして、出来るだけ自宅に閉じこもる生活を始めてもう2ヶ月近くが経った。
でも本番はいよいよこれから。
この状態は、あと数ヶ月で終わるのか?
それとも半年、一年は続くのだろうか?