ザ・サークル

映画を観に行った。

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エマ・ワトソンとトム・ハンクスが共演した「ザ・サークル」。

シリコンバレーの巨大IT企業を舞台に情報公開とプライバシーの問題を描いた作品だ。

あまりにもレビューが悪いので期待せずに観たためか、私には非常に面白かった。

犯罪者の追跡やテロ対策、政治家の行動チェックといった公共の利益の理由に超小型カメラが街、企業、個人宅にばらまかれ、すべてを透明化する社会。「繋がることはいいことだ」と疑うこともなく善意に満ちてそうした社会を目指すIT企業のカリスマ経営者や若者たちの姿が描かれる。

観終わった後で点数の低いレビューをいくつか見てみたのだが、「薄っぺらい」「やりすぎ」「よくわからない」などの意見が多いようだ。

映画で描かれるような未来は訪れないと考えるネット信奉者が厳しい評価をしているように見える。私にはむしろ、このレビューに表れた日本人の能天気さの方に驚かされた。

この映画で描かれた世界は、もう目の前に来ているという実感が私にはある。実際にグーグルやフェイスブックなどの巨大企業は、世界中の人たちの膨大なプライバシー情報を握っている。それをもとに新たなサービスを次々に立ち上げているが、中でも急速に進展しているのは映像の活用だ。

すでに、身の回りのありとあやゆる場所にカメラがある。街中の監視カメラ、ドライブレコーダー、そしてスマホのカメラ。そうして撮影された膨大な量の映像がYouTubeにアップされ、ほぼリアルタイムで世界中の人にさらされている。面白い映像はSNSで拡散されるだけでなく、AI機能のついた動画サイトが自動的にセレクトし勝手にリコメンドしてくれる仕組みもすでに存在する。

映画でも登場するが、何気なくアップした映像が悪意あるコメントとともに世界中に拡散し、実態と違うイメージをばらまく時代がすでに到来しているのだ。

この映画の舞台となる巨大IT企業「サークル」はシリコンバレーに巨大なコンパウンドを構えている。私はシリコンバレーに行ったことはないが、グーグルなどの本社がこんな感じだというのをテレビで見たことがある。

そこには様々なレクリエーション施設があり、健康的で友好的でオープンな職場環境がある。昔ながらの日本企業と比べると羨ましい環境だ。

そこでは様々な社内活動が行われ、みんなが友人のように付き合う。パーティーも頻繁に開かれ、社内のコミュニケーション向上に活かされている。SNSの世界のリアル版といったところだろう。実際のところは知らないが、シリコンバレーの企業はこんな感じなのだろう。

しかし、私のようなオヤジにはちょっと抵抗がある。

若い頃ならこんなコミュニティーに憧れたかもしれないが、今はできるだけ余計な付き合いを減らそうとしている。できるだけ「繋がらない」よう人間関係を縮小している。これも老後の準備だ。

映画の中で、会社に入ったばかりの主人公が社内コミュニティーと繋がろうとしていないことを知ったスタッフ(おそらく人事担当?)がとてもフレンドリーに社内活動を進めるシーンがある。主人公の個人情報を知ったうえでのアプローチだ。見た瞬間、ゾッとした。「ほっといてくれ」と言いたくなる。

最終的にはいろいろ事件があり、主人公もこの会社のあり方に疑問を抱き反抗することになる。「人間にはプライバシーが必要だ」という月並みなメッセージではあるが、実際にプライバシーのない社会などまっぴら御免だ。

それでもネットでの言論を見ていて不安になることがある。

ネットの世界では「正義」という言葉が安易に使われている気がする。自らの意見を「正義」として、意見が異なるものを「悪」と断言する。そして集団で攻撃する。

しかし何が「正義」であるかを決めるのは難しい。「テロ」でさえ、視点を変えれば「正義」なのだ。

私が映画を観ながら感じた恐怖は、シリコンバレーの若きエリートたちが、100%の善意を持って世界をよくするという目的のもとで、恐ろしい監視システムを築き上げてしまう可能性だ。すべてがリアルタイムの映像で見られるようになれば、テロを防ぎ、犯罪者を逮捕できる。冤罪もなくすことができる。そうした「正義感」がプライバシー侵害を正当化することになるかもしれない。

技術の進歩に法規制は追いついていない。

Yohoo映画の評価は3.01、私の評価は4.00。

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さて、話はそれるが、今朝の日経新聞にシリコンバレーの興味深い話が載っていた。

「詐欺か革命か ICOに沸くシリコンバレー」という記事だ。冒頭はこうだ。

『 ベンチャー企業が仮想通貨で資金調達をするICO(イニシャル・コイン・オファリング)が活況を帯びている。6月以降に企業に流れた額では従来型のベンチャーキャピタル(VC)を上回る状況が続く。法規制が無くリスクが高いとの指摘も少なくないが、それでもブームは止まらない。待ち受けるのはバブルの崩壊か、それとも新たな金融技術の誕生なのか。』

これだけ読んでも何のことかわからない。IT関連のニュースはあまりにスピードが速くて、新しい用語が次々に出て来て意味がわからないのだ。

「ICO」とは何か?

記事の中に用語の説明が書いてあった。

『 新しいサービスを考えている起業家や開発者が、自分たちが提供しようとしているサービスで使える「トークン」を発行し、それを購入してもらうことで資金を集める。その際、仮想通貨であるビットコインやイーサリアムなどで代金を支払ってもらう。発行者は受け取った仮想通貨を取引所で売却して通貨に交換し資金にあてる。販売後のトークンに価値があると見なされると、そのトークンは取引所に上場され売買が可能になる。サービスが成功しトークンが値上がりすることを見込んで投資家が集まる。』

説明を読んでも正確なことはわからないが、仮想通貨が資金調達の手段になって来たということのようだ。まだ存在しない技術やアイデアに対して、仮想通貨で投資をするという新しい資金調達の仕組みがシリコンバレーでは生まれているのだ。

すべてが仮想である。だがそこに巨額のマネーが動いているので、金が金を呼ぶ恐ろしい世界ができつつある。日本人はすぐに「バブル」という言葉を口にするが、日本人だってバブル崩壊前は怪しい儲け話に群がったものだ。人間痛い目をみないと用心しない。中国をはじめとする新興国では今でも経済は右肩上がり、アメリカもリーマンショックからV字回復し今また史上最高値の強気の相場だ。世界一慎重な日本でもバブルを知らない若者たちが登場して来た。新たな巨大バブルが形成される環境は整って来ている。

せっかくなので、日経の記事をさらに引用させていただく。これはバブルではないのか?

『 ■9月の調達額、8億ドル

10月27日に米サンフランシスコ市内で開かれた仮想通貨のイベント「イーサリアル」。会場内では「どうやって『トークン』を発行するのか」と題したICO準備のための講演を300人超もの聴衆が熱心に聞き入っていた。

トークンはICOで資金を得る見返りに発行する電子の通貨交換券で、新規株式公開(IPO)時に企業が発行する株式のようなもの。ただ、株式のような議決権は存在せず法的な位置付けも定まっていない。それでも登壇者の一人が「古いルールにとらわれず新しい金融のエコシステム(生態系)をつくっていこう」と呼びかけると客席から拍手が起きた。上場準備セミナーというよりも革命前夜の決起集会だ。

新たな資金調達の手段として注目されるICO。関連するイベントはベンチャー企業が集まるシリコンバレーでも日に日に増えている。だが後日、たまたま同じイーサリアルにいあわせたベンチャー投資家が忠告してくれた。「あそこにいた人は8割は詐欺師だと思った方がいい。みんなブルシット(ばかげた大うそつき)だよ」

興味深いデータがある。

米ゴールドマン・サックス証券によると、仮想通貨を使ったICOによるネット関連企業の資金調達額は今年6月以降、現金による調達額を上回る状況が続いている。3月まではせいぜい2000万ドル台に乗せる程度だったICOだが、5月から急騰。9月の調達額は8億ドルにのぼっている。現金による調達額のざっと2.6倍だ。

夏からの活況はエンジェルやシードと呼ばれる初期段階のベンチャーを相手にした投資家に代わりICOが市民権を得だしたことを示す。だが、何事も急すぎるブームは危うさをはらむことは金融界が歴史をもって証明ずみ。実際、イノベーションの名を借りたマネーゲームはすでに始まっている。

■「面倒なVC回りも不要」

9月半ば、サンフランシスコ市内で開かれた「ICO勉強会」と称する有志の集まりに記者はビットコインユーザーを装って潜り込んでみた。大手ネット企業の会議室を借り切って夕方から開かれる会合。出されたピザをほお張りながら、ICO関連ビジネスを手掛けているというベンチャー最高経営責任者(CEO)のプレゼンテーションを聞く仕組みだ。

ビットコインの取引システムを構築したという創業者が強調したのは大手VCの助けを借りないことの利点だ。「面倒なプレゼンテーションをするためにVCのオフィスにわざわざ通う必要などない」。シリコンバレーでは起業家は複数のVCを回りながら資金を調達するが、ICOならグローバルレベルで誰からもすぐにお金を調達できるという説明だ。

では資金を得る見返りに発行する「トークン」はここでは何か。このICOは「ガスや水道と同じ。決して株ではない。我々のエコシステムで使えるユーティリティーだ」と言明した。この会社が成長しサービスが離陸すればその使用料をトークンで支払える。トークンが株でなければICOは法律が規制するIPOではない。そんな理屈だろう。

驚いたのは会の最後にCEOが発した一言だ。「このまま残ってくれればトークンを特別に安く割り当てるよ」。記者はここで引き揚げたが、50人近い聴衆の半分以上がその場に残った。実績も何も無く、そもそも実在しているかも分からないシステムのためにお金を出すには抵抗がある。だが、そんな不安をあざわらうかのようにICOは投資家をひき付けていた。

■IPOなら禁じ手

別の会合で、企業のICO準備を支援している業界関係者に匿名で話を聞くことができた。ICO前にトークンを特定の投資家に安く売りつけるのは常態化しているようで、実際の資金調達時にトークンを売り抜いて差額を稼いでいる人たちがいるという。IPOであれば証券会社がロックアップ条項を設けるため原則禁じ手の措置だが、「現時点ではルールが無いので問題はない」(同関係者)。

トークン発行後、上場企業のように企業業績を3カ月ごとに出すよう求める声も投資家にはあるようだが「まじめにとらえている発行体はほとんどいない」(同)。業績や製品の開発状況はメールやメッセンジャーソフトを通じて開示されることが多いとされるが、あるICO経験者は「相手は株主ではないのでそこまでケアしない」と話していた。

価値の危ういものであってもブームを理由にお金が流れる――。同じ事を世界はすでに2000年代前半にドットコムバブルとして経験している。大手VC、ホーン・キャピタルのマネージング・パートナー、ベロニカ・ウー氏は「今のICOは当時と同じにおいがする」と警鐘を鳴らす。今の熱狂がこのまま続くはずがないというのがシリコンバレーのVC投資家たちの多くが抱く共通認識だ。

もちろん、当局も危うさを認識しており規制の動きが出はじめている。米国では7月に米証券取引委員会(SEC)がICOについての「考え方」を発表。発行体のあげる収益がトークンを通じて還元されたり、現存しないサービスの利用権であったりする場合は法で定める株式にあたるとの見方を示した。

詐欺まがいのICOには当局の刑罰が及ぶとの脅しをかけた形で、日本でも利用者保護に向けた議論が金融庁で進む。

ではこの先のICO市場に何が待っているのだろうか。バブルがはじけICOは露と消えると考えるのは早計だろう。ICOや仮想通貨の土台となるブロックチェーンの分野では今後に向けて技術の進化が期待されているからだ。

■ブロックチェーンが完成すれば

取引履歴を複数のコンピューターが記録するブロックチェーンは仮想通貨にとどまらず実態通貨や株式の取引、個人データをやりとりする不動産やヘルスケアへの応用、さらには企業のサプライチェーン管理にも役立つとされる。ゴールドマン・サックスやソフトバンク、米グーグルなど潜在力に注目して関連技術の研究に乗り出す企業が出てきている。

とはいえ技術がまだ発展段階にあることも確か。主にブロックチェーンを投資先としているサンフランシスコのファンド、マンデーキャピタルのパートナー、カテリーナ・ストロポニアティ氏は「今のブロックチェーン技術は黎明(れいめい)期のブラウザすら無いインターネットと同じ」と話す。

例えばブロックチェーンは規模が大きくなるほどに関わるコンピューター数が増え、処理速度が遅くなる。迅速な取引ができなければ通貨や株式のやりとりには使いにくい。複数あるブロックチェーン同士がつながっていないという問題もある。異なる仮想通貨同士の交換に手間がかかるのはそのためだ。

ICOの成否もブロックチェーン次第だ。ブロックチェーンを使った外貨取引などでインフラ構築を手掛ける米ベンチャー、OTCXNのドリュー・ラスムッセン最高技術責任者(CTO)も「今はエンジン(ブロックチェーン)が不完全なまま、最新の車(ICO)ができたと騒いでいるようなもの」と言う。投資家保護やトークンの流通技術が整えば企業育成のひとつの仕組みとしてICOが力を発揮する。

ドットコムバブルをめぐってシリコンバレーの投資家らに語り継がれているのが米アマゾン・ドット・コムだ。ネット書店として1994年に創業した同社もバブルの崩壊に直面したがデータ分析などネットを超えた技術で生き残り今の巨大流通企業の地位を築いた。次のアマゾンはどこか。ICO狂騒曲の先に、そろそろ目をこらす時期が近づいている。』

世界中からシリコンバレーに集まる若者たちにとっては、一攫千金の刺激的な夢だろう。夢に投資することは、若者の特権である。その意味で、シリコンバレーではゴールドラッシュが続いていくのだろう。そして、中国も自前のシリコンバレーを政府主導で整え対抗しようとしている。

そして現金が消える時代がきっと来るのだろう。

それまでの過程では、仮想と現実の間で、泣く人・笑う人が必ず生まれる。多くの人が財産を失い、一部の人が巨万の富を築く。かつて様々な時代に繰り返された人間の営みは、21世紀になっても変わることはないのだろう。

オヤジとしては、そんな欲望が戦争に繋がらないように、ただただ平和な暮らしが続くことを願うのみだ。

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